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石坂団十郎(チェロ)インタビュー その1
小菅優(ピアノ)とのベートーヴェン詣

2018年5月15日

これぞ聴いてみたかった組み合わせ!

ベートーヴェンと同じ故郷ボン出身で、日本人の父とドイツ人の母を持つチェリスト石坂団十郎さんが、ピアニスト小菅優さんとともにベートーヴェンのチェロ・ソナタ全曲演奏会を行います。

団十郎さんは、2009年にもピアニストのマルクス・シルマー氏と第一生命ホールでオール・ベートーヴェン・プログラムを演奏していますが、今回は6月と12月の2回にわたり、チェロとピアノのための作品全曲を演奏します。

4月とある日、わずか3日間という日本滞在の合間をぬってお時間をいただき、団十郎さんに伺ったお話を、4回にわけて掲載します。

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――第一生命ホールの印象は?

すばらしいホールだと思います。初めて第一生命ホールで演奏したのは、2004年、NHK交響楽団とのチャイコフスキーの「ロココ風の主題による変奏曲」でしたが、「ああ本当にいいな」と。サイズもちょうどいいと思いました。3,000席くらいの大きなホールだと、普通より無理をして音を出さないといけませんが、第一生命ホール(767席)は無理をせず、自然に弾けます。お世辞ではなく(笑)。楽しみにしています。

舞台正面ピアノS.jpg

小菅優と初のデュオ共演

――小菅優さんとデュオの演奏会は初めてですか。

初めてです。新ダヴィッド同盟[水戸芸術館の専属楽団で、小菅さん、石坂さんはメンバー]では色々な室内楽を演奏しましたが、ふたりとも、いつかデュオもやってみたいという気持ちがありました。ちょうど彼女が「ベートーヴェン詣」のプロジェクト(ベートーヴェンのピアノつき室内楽作品を全曲演奏する企画)をやっていて、僕に「ベートーヴェンをやりませんか」と話があって「ぜひ」と。一度いっしょに弾いてみたら、すごくいい感じでした。

ベートーヴェンのチェロ・ソナタは、実はもともと「ピアノとチェロのためのソナタ」なのですが、チェリストにとって、とても大事なレパートリーです。

小菅優 2012 5 withcredit(c) Marco Borggreve.jpg――小菅さん[10歳の頃からザルツブルクに住みドイツ語圏での生活が長い]との会話は日本語ですか、ドイツ語ですか。

両方かな。新ダヴィッド同盟の時は、メンバー全員が日本人なので、僕も日本語でがんばって話しています(笑)。昔は、全然日本語をしゃべれませんでした。子どもの頃、(日本人の)父は日本語で話してくれなかったのです。でも今日は、日本語でインタビューに答えることに挑戦します(笑)。

子ども心にも演奏したいと思った

ベートーヴェンのソナタ

――子どもの時に、ベートーヴェンのチェロ・ソナタ第2番を演奏したいと思ったけれど、習っていた先生には反対されたそうですね。

ボンには色々な演奏家が来るので、小さいころから色々なコンサートを聴くことができました。7歳か8歳のころでしたか、ミッシャ・マイスキー(チェリスト)の演奏を聴いて大変感動しました。ピアノはマルタ・アルゲリッチでしたね。ベートーヴェンのチェロ・ソナタとシューベルトのアルペジオーネ・ソナタを弾いてくれて、大好きになりました。実家には、すごいレコードコレクションがあり、ロストロポーヴィチ、カザルス、デュプレといった有名なチェリストの録音もよく聴いていました。ですから、初めて聴いたわけではなかったのですが、やはり生で聴いたのは大きかったです。それで、ベートーヴェンのチェロ・ソナタを演奏したくなったのですが、先生がいうには、20代になってから勉強すべき曲だと。でも我慢できなくて、絶対に弾きたいと思って自分で練習していました。僕は、子どもがやりたいと思う曲は、やった方がいいと思いますけどね。「弾いてみたら?」と言ってくれたらよかったのですが、そういう方針だったようです。

――ベートーヴェンのチェロ・ソナタの中でも、なぜ第2番を弾きたいと思ったのですか。

そのころの僕には、第4番や第5番は、さわろうとしても手が届かない感じだったかな。エベレストに登りたいと思っても登れないのと同じで。第2番には手が届きそうだったのかもしれません。

――ベートーヴェンの何にそんなに惹かれたのでしょうか。

それぞれの作曲家は自分の音楽的な言葉を持っていますが、それがベートーヴェンは強いと思うのです。ベートーヴェンの表現は、強い。ピュアな音楽だと感じます。

――第2番が特にピュアだと思われたのですか。

いや、それは第2番だけではありません。第2番は、その当時の僕にとって一番理解しやすいソナタだったというだけで。今は、一番好きなのは第4番かもしれません。すごく濃い、凝縮された、強い音楽だと思います。メロディーが不思議ですね。美しいのと、不思議なのと、いろいろなニュアンスがまざっているので、おもしろいというかユニークというか。やはり後期のベートーヴェンだなと思うのです。

――第4番と第5番はOp.102ですから、ベートーヴェン後期の作品ですね。

後期のベートーヴェンは、チェロ・ソナタ以外も大好きです。例えば、弦楽四重奏曲。Op.132などは大好きです。実はむかしは、自分でもクァルテットをやりたいという夢がありました。でも、うちは、姉がピアノ、兄がヴァイオリンで、3人兄弟でトリオをやっていたので、クァルテットをやる自由はなくて、残念だと思っていました。ベートーヴェンは、ヴァイオリン・ソナタも好きですね。[ヴァイオリン・ソナタ]第5番「春」や第9番「クロイツェル」も。先日講習会をやった時、学生が初めて「春」をチェロで弾きましたが、すごくいい曲なので、自分でも弾いてみたいと思っています。「クロイツェル」はよくチェロでも弾かれます。ロシア人のチェリスト、イヴァン・モニゲッティによる録音 [C.ツェルニーによるチェロとピアノ編]もあります。

――ヴァイオリン・ソナタは、第9番「クロイツェル」もOp.47で、比較的早い時代に書かれており、第10番Op.96だけが少し後に作曲されていますが、チェロ・ソナタは、第1番、第2番がOp.5で初期、第3番Op.69が中期の傑作、第4番、第5番はOp.102で後期ですね。

そうですね、ベートーヴェンのチェロ・ソナタは5曲しかありませんが、バランスよく色々な時代に書かれています。もちろんチェロ・ソナタ第5番も好きです。

ピアノ・ソナタも大変すばらしいと思います。昔、ピアノをやっていたころ、例えばピアノ・ソナタ第7番ニ長調、ソナタ第3番ハ長調などに挑戦したことがあるのですが、あまり才能がなくて(笑)。4歳の時にチェロをはじめて、何週間かですぐに分かったのです。もし音楽家になるとしたらチェリストになる、ということが、はっきりと。最初からチェロには縁がありましたね。前世の影響かもしれませんね(笑)。

その2に続く

小菅 優&石坂団十郎
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ全曲演奏会(全2回)

■出演:小菅 優(ピアノ) 石坂団十郎(チェロ)

■日時: 2018年6月15日(金) 19:00開演
■演奏プログラム
【オール・ベートーヴェン・プログラム】
《マカベウスのユダ》の主題による12の変奏曲 ト長調 WoO45
チェロ・ソナタ第2番 ト短調 Op.5-2
チェロ・ソナタ第1番 ヘ長調 Op.5-1
《魔笛》から「娘か女房か」の主題による12の変奏曲 ヘ長調 Op.66
チェロ・ソナタ第4番 ハ長調 Op.102-1

公演情報はこちら

■日時: 2018年12月15日(土) 14:00開演
■演奏プログラム
【オール・ベートーヴェン・プログラム】
《魔笛》から「恋を知る男たちは」の主題による7つの変奏曲 変ホ長調 WoO46
ホルンとピアノのためのソナタ ヘ長調 Op.17
チェロ・ソナタ第5番 ニ長調 Op.102-2
チェロ・ソナタ第3番 イ長調 Op.69から 第1楽章(初稿版)
チェロ・ソナタ第3番 イ長調 Op.69

公演情報はこちら

■各回S席¥5,000 A席¥4,500 B席¥3,500 ヤング¥1,500(小学生以上、25歳以下)2公演セット券S¥9,000

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