2024年9月28日のトリトン晴れた海のオーケストラ(晴れオケ)公演に、ソリストとして出演するピアニスト小山実稚恵さんにお話を伺いました。
小山さんと晴れオケとの共演は3回目。2021年6月にベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番を、そして2023年1月にピアノ協奏曲第3番を演奏しており、いよいよ第5番「皇帝」に取り組むことになります。
晴れオケのコンサートマスター矢部達哉さんは、第一生命ホールの「小山実稚恵の室内楽」シリーズなど、小山さんとは室内楽での共演も多く、お互いの信頼が厚い演奏家どうしです。晴れオケが2021年11月に演奏したベートーヴェンの「第九」はNHKなどにも取り上げられて全国的な話題になりましたが、「第九」の成功はその半年前に小山さんと共演したピアノ協奏曲第4番の経験があったからこそ、と矢部さんは何度も口にされています。「小山さんとの心の通い合うような協奏曲の共演があったからこそ、指揮者なしの『第九』もあのような演奏になった」と。小山さんにとっても「晴れオケ」との共演は同じ印象だったようです。
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晴れオケは、一言で表すと音楽的にとても高度だと感じています。ひとつの音楽に向かって皆がいっしょに呼吸をしていますね。指揮者がいないのだけれど指揮者がいる以上に"合う"瞬間があるといいますか、それこそ音楽で通じ合っている感覚があります。
例えば、前回共演したピアノ協奏曲第3番では、第2楽章の最初はピアノのソロなのですが、晴れオケは全員が音楽家なので、自分たちが演奏していなくてもオーケストラ全体がピアノを、まるで自分たちも弾いているかのように感じ取ってずっと聴いてくれているのが伝わってきました。私も晴れオケが演奏している時は自分も弾いているように音楽を感じますけれど、お互いが同じように感じて、音を出していない時もずっと音楽している。それが伝わってくるのがいいんですよね。
コンサートマスターの矢部さんは、指揮をしない指揮者、そしてすばらしい室内楽奏者、コンチェルトでは3つの顔を持っています。本当にさすがだと感心します。
ピアノ協奏曲第3番の第1楽章の私のカデンツァ(即興的な独奏部分)の後にオーケストラがそっと入ってくるところなど、リハーサルでもう音楽的にすばらしくて、私などは呼吸が合っているので雰囲気が美しければいいかなと思ったりするのですが、矢部さんの「絶対に合わせる」という気迫がすごいのです。本番前最後のゲネプロで、「大丈夫、もう絶対合うと思う。......でももう1回。」という、その感覚。音楽的にアインザッツ(合図)は出したくないという箇所なんですね。それをリハーサルの段階で、このタイミングだと周知しておく。ここまでするのだなと。それで本番は、これ以上ないくらい合ったのです。少しずれてもそれはそれで音楽的にはいいのですが、ここまで合うとこれほど気持ちよいことはないなと思いました。絶対に妥協しない。矢部さんは、その最後の詰めが鋭いですね。
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ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」でも、オーケストラのメンバーひとりひとりが小山さんと舞台上で交流しているかのような、他では聴けない親密な協奏曲をお楽しみいただけることと思います。どうぞ楽しみに。
関連インタビュー
・2021年6月5日公演(ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番)前の、小山実稚恵さんのインタビューはこちら
・2023年1月21日(土)(ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番)前の、晴れオケ矢部達哉さん&三原久遠さんのインタビュー(インタビュー中で矢部さんが小山さんとの共演について言及)はこちら
■■■晴れオケ公演情報■■■
<トリトン晴れた海のオーケストラ 第15回演奏会 ベートーヴェン・ツィクルスIII>
日時:2024年9月28日(土) 14:00開演
会場:第一生命ホール
出演:トリトン晴れた海のオーケストラ
【コンサートマスター】矢部達哉
ソリスト:小山実稚恵(ピアノ)
曲目:ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 Op.73「皇帝」 ピアノ:小山実稚恵
ベートーヴェン:交響曲 第4番 変ロ長調 Op.60
※チケットのお申込み、詳しい公演情報はこちら
<トリトン晴れた海のオーケストラ 松本公演>
日時:2024年9月29日(日) 14:00開演
会場:キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館)
出演:トリトン晴れた海のオーケストラ
【コンサートマスター】矢部達哉
ソリスト:小山実稚恵(ピアノ)
曲目:ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 Op.73「皇帝」 ピアノ:小山実稚恵
ベートーヴェン:交響曲 第4番 変ロ長調 Op.60
※チケットのお申込み、詳しい公演情報はこちら