Triton Arts Network 10周年記念 スタッフBLOG

2019年4月

コンサートマスター矢部達哉のもとに集ったメンバーで、指揮者を置かず、室内楽の延長のような、自発的で研ぎ澄まされたアンサンブルを特徴とする『トリトン晴れた海のオーケストラ(晴れオケ)』。

ベートーヴェン生誕250年にあたる2020年に向け、昨年から3年に渡ってベートーヴェン交響曲全曲演奏会(全5回)を開催中。

コンサートマスター・矢部達哉さん、オーボエ首席・広田智之さん、クラリネット首席・三界秀実さんのインタビュー、その2です。(その1はこちら

(聞き手:片桐 卓也)

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オーケストラの音作り

――矢部 

 ベートーヴェンの場合、指揮者によっては意外に木管の響きにこだわらないことがあります。でも、この晴れオケの場合は木管がメインと思ってやっています。ヴァイオリンにもメロディはあるけれど、ソロではない。みんなと調和しなくてはいけない。だから木管の人たちを引き出すことは注意しているつもりです。弦楽器がフルで弾いている時は、木管の人たちは自分ももっと音を出さなければいけないと思っているかもしれませんが、一番良い状態で木管が演奏していて、それを弦楽器が支えるのがひとつのテクニックです。

――広田

 だから、この晴れオケの木管は幸せですね。

――三界

 大きなオーケストラでもそういうことが起きているのだろうけれど、聴き取りづらい。それがこの晴れオケではバランス的にすごくやりやすくて、見通しが良い。

――広田

 支えられている感覚がありますよね。

――矢部 

 ほとんどのメンバーの方を若い頃から知っていますが、その後いろいろなところで経験を積まれて、それがいま結集しているという感じがありますね。それぞれの経験が生きて、その相乗効果があるというのが素晴らしい、ひとりひとりの個性を殺すこと無く。だから、この個性的なメンバーの皆さんをどう調和させて行くかを、皆さんと一緒に模索して行きたい。いま、調和はしていると思うのだけれど、さらに一段高い調和はあると思う。特にピアニシモの時に、いまも出ていると思うけれども、さらにマジックのような、魔法のような瞬間が生まれることは絶対にあると思う。それを目指したい。第一生命ホールのキャパシティを考えると、我々はちょっとリミッターを外しすぎと感じることもあるのだけれど、そこにさらにある種の質を加えて行きたいと思うのです。

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チクルス第2年目の作品について

――矢部 

 第3回の公演ではベートーヴェンの第4番と第7番を取り上げます。ベートーヴェンの中で第4番が一番好きという方が意外に多いですが、僕もそうです。第4楽章には弦楽器に超絶技巧を要するところがありますが、16分音符が音楽的に演奏出来るように目指したい。それと、この交響曲の調性が好きです、変ロ長調の中で一番印象的ですね。第2楽章がとても綺麗です。クラリネットのソロとか信じられないくらい。

――三界 

 とても室内楽的なイメージがありますね。クラリネットにはすごく良い旋律を与えて下さって、やりがいもあるし、怖さもあるというところです。

――矢部

 第4番に関してはリハーサルをたっぷり取らないとダメだと思っています。第7番に関しては、古今東西の交響曲の中でも最も有名なもののひとつと思っていますが、いまの晴れオケにぴったり合った作品だと思います。何の心配もないというか、奇を衒わずに新しいことをやりたいと思います。あたかもこれが自分たちの十八番であったかのような演奏が出来ると思います。

 第4回目の演奏会では有名な第6番「田園」と第8番を取り上げます。「田園」は一番難しいかもしれないと思っています。響きとか音色に調和の感覚が一番活かされる作品だと思うので、そこは万全の準備で臨みたいと思います。絶叫するところが無い作品というか、中庸の美を求められる時間の多い作品です。「田園」の最終楽章は素晴らしいと思います。ベートーヴェンの後期の弦楽四重奏曲に通じるような部分がある。田園は自然なのだけれど、その中に神が溢れてくる、神様とつながっている部分が出てくる。神とつながっている自然、それが現れてくる作品だと思います。

――三界★三界さん_0KU9130(C)大窪道治.JPG

 「田園」のクラリネットはオーケストラのオーディションで必ず指定されるぐらい、クラリネットにとって重要な作品です。ベートーヴェンの音符は実はシンプルなのですが、それによって、その演奏者がどういう人かが音に出てしまう、その人がどういうことが出来て、どういうことが出来ないかが分かる。基本的な部分が出てしまう作品なので、難しさは常に感じています。

――矢部

 そういう意味で「田園」は一番のサンプルになりそうですね。どこまで新しいことを付け加えられるか。晴れオケのメンバーはみんな音楽的な感性に優れています。ひとつのことを言うと、それが別のことにも反映されてくる。「田園」を演奏する時に、何か新しい自分たちを見せることが出来たら良いなと思います。そこまで高めて行きたいという期待がいまは大きいです。

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トリトン晴れた海のオーケストラ 第6回演奏会
ベートーヴェン・チクルスⅢ

■日時:2019年6月29日(土) 14:00開演
■出演: トリトン晴れた海のオーケストラ
【コンサートマスター】矢部達哉
【ヴァイオリン】双紙正哉 会田莉凡 景澤恵子 小関郁
 塩田脩 直江智沙子 福崎雄也 松浦奈々
 三原久遠 渡邉ゆづき 
【ヴィオラ】篠﨑友美 瀧本麻衣子 福田道子 村田恵子
【チェロ】山本裕康 清水詩織 森山涼介
【コントラバス】池松宏 佐野央子
【フルート】小池郁江 斎藤光晴 
【オーボエ】広田智之 池田昭子
【クラリネット】三界秀実 糸井裕美子
【ファゴット】岡本正之 岩佐雅美
【ホルン】西條貴人 和田博史 濵地宗
【トランペット】高橋敦 中山隆崇
【ティンパニ】岡田全弘

■ベートーヴェン:
交響曲 第4番 変ロ長調 Op.60
交響曲 第7番 イ長調 Op.92
■S席¥6,000 A席¥5,500 B席¥3,500 U25¥1,500(25歳以下)
2公演セット券 S¥11,000( *11/30 第7回演奏会 ベートーヴェン・チクルスⅣ

公演情報はこちら

コンサートマスター矢部達哉のもとに集ったメンバーで、指揮者を置かず、室内楽の延長のような、自発的で研ぎ澄まされたアンサンブルを特徴とする『トリトン晴れた海のオーケストラ(晴れオケ)』。

ベートーヴェン生誕250年にあたる2020年に向け、昨年から3年に渡ってベートーヴェン交響曲全曲演奏会(全5回)を開催中。

コンサートマスター・矢部達哉さん、オーボエ首席・広田智之さん、クラリネット首席・三界秀実さんのインタビューを、2回にわたって掲載していきます! 

(聞き手:片桐 卓也)

集合写真クレジット入り(C)大窪道治_0K74442s.jpg

ベートーヴェン・チクルス、1年目を終えて

――矢部★矢部さん_0KU9192(C)大窪道治cut2.jpg

 モーツァルトを中心にやって来ましたが、2016年に横山幸雄さんとベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲演奏会をご一緒に演奏した時に、この晴れオケはベートーヴェンが良いなと思いました。そしてベートーヴェンのシンフォニーが出来ることになった。実際に音を出してみると、想像以上の手応えがありました。打ち上げ花火みたいにベートーヴェンの交響曲全曲をやります、ということではなく、この時期にこのオケのメンバーと一緒に演奏する意義を感じました。ただ、お客様にも喜んで頂いているし、自分たちも楽しんで演奏しているのですが、自分の中ではまだまだ出来ることがたくさんあると分かったので、この1年間で4曲を演奏して満足ということではなく、もっと先に行きたいなという気持が大きくなっているのが正直なところです。

 みんながよく聴き合って、それで合わせています、というような所を目指していた訳ではなく、ベートーヴェンを演奏する上で、オケのメンバーひとりひとりの個性というかキャラクターを出した上でまとまるという方向性を目指していたのです。普通のオーケストラの場合、はみ出してしまうことを恐れて、小さくまとまってしまうものですが、このオケではそれを無くして、ひとりひとりが100%実力を出した上で合わせるということまで踏み込んだと思うのですが、その時に、より一段高い調和を目指す。みんなが全力を出して合っているので、それは良いことなのですが、次にピアニシモの響きの質とかにもこだわっていきたいと思っています。

 自分の実力を発揮することと、室内楽的に聴き合って演奏することを両立させるのは難しいのですが、例えば、ここは広田さんを聴いて、ここは三界さんを聴いて、ここはホルンを聴いて、という時に、自分がどんな音を出しているのか分からなくなる時がある。そういう点で、自分の演奏をさらに高めないとステップを一歩上がれないと思った1年でした。

指揮者なしのオーケストラの魅力

――広田 

★広田さん_0K74254(C)大窪道治cut.jpg

 演奏者側から見ると、いつもの客席の感じと変わらないです。でも、指揮者がいないことで視界が開けているから、よりお客様の存在を感じて演奏することになる。お客様の集中力を我々も感じて演奏するということになりますね。

――三界 

 普段のオーケストラで演奏している時と、視覚的な違いは感じませんが、晴れオケはやはり弦楽器の人数が少ないので、アンサンブルがしやすい。結果的に客席に伝わるものが違うのかなという気がします。

――矢部 

 普通のオーケストラのコンサートの時、お客様は指揮者を見ている時間が多いと思うのです。この晴れオケを始めた当初、聴衆はどこを見るのだろうと思ったのですが、このオケの場合、ひとりひとりの奏者からエネルギーが出ていて、目のやり場に困らないだろうなと思います。どこを見ても楽しい。客席との一体感がある。客席を含めて一緒に音楽を作っている感覚が良いなと思うのです。客席の集中度というか、いま良いなと思ってくれていることも、舞台の上から感じることが出来る。そういう相乗効果があるので、第一生命ホールで演奏することはいつも楽しいです。

――広田

 指揮者が居る場合、お客様は指揮者を見ていると思うのですが、その指揮者のアクション、p(ピアノ)を要求したり、アクセントを要求したり、そういう動きを見ますね。それを受けてお客様も音を受け止めるから、体感する度合いが強くなっていると思います。晴れオケの場合は指揮者がいないから、音だけを受けることになる。もちろん奏者同士の目配せや矢部さんの合図を見ることもあるだろうけど、指揮者のように見ている訳ではない。極端に言えば、音だけでやらなければいけない。それが我々の使命でもあるし、責任でもあると思う。その部分をお客様にも楽しんで頂けるのではないでしょうか。

――矢部

 もっともっと先へ行きます。いまある形は崩さずに、何かを変えるのではなく、何かを加えることで。ベートーヴェンに関して言えば「結果」が出ることはないのですね。これで出来たという日は来ないから、試行錯誤を続けながら毎回やって行く。この1年で4曲を演奏して、ベートーヴェンの破格の偉大さを思い知ることになりました。ブルックナーやマーラーに較べて、楽譜にフォルテとかピアノの指示が少ない訳ですが、それだけに奥行きが凄まじい。ベートーヴェン自身、正解を求めていなかったと思うし、その正解のないところに無限の可能性がある。それをみんなで探って行くことが楽しいのです。自分たちが納得してやらないと説得力がないので、その時点での確信を持って演奏できたら良いなということは思います。リハーサルの時間も限られている訳だから、そこで最大限の密度を出すためには、自分を信じ切ってやるしかないです。

 もちろん自分で考えて来たことが、初日のリハーサルでダメになることもあります。それで落ち込むこともあるのですが、そういうことも含めて、指揮者のいないリハーサルです。

晴れオケインタビュー時IMG_8193.JPG

ーインタビューその2へつづく

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トリトン晴れた海のオーケストラ 第6回演奏会
ベートーヴェン・チクルスⅢ

■日時:2019年6月29日(土) 14:00開演
■出演: トリトン晴れた海のオーケストラ
【コンサートマスター】矢部達哉
【ヴァイオリン】双紙正哉 会田莉凡 景澤恵子 小関郁
 塩田脩 直江智沙子 福崎雄也 松浦奈々
 三原久遠 渡邉ゆづき 
【ヴィオラ】篠﨑友美 瀧本麻衣子 福田道子 村田恵子
【チェロ】山本裕康 清水詩織 森山涼介
【コントラバス】池松宏 佐野央子
【フルート】小池郁江 斎藤光晴 
【オーボエ】広田智之 池田昭子
【クラリネット】三界秀実 糸井裕美子
【ファゴット】岡本正之 岩佐雅美
【ホルン】西條貴人 和田博史 濵地宗
【トランペット】高橋敦 中山隆崇
【ティンパニ】岡田全弘

■ベートーヴェン:
交響曲 第4番 変ロ長調 Op.60
交響曲 第7番 イ長調 Op.92
■S席¥6,000 A席¥5,500 B席¥3,500 U25¥1,500(25歳以下)
2公演セット券 S¥11,000( *11/30 第7回演奏会 ベートーヴェン・チクルスⅣ

公演情報はこちら

6月3日(月)に第一生命ホールへ初登場される上野由恵さん。
上野さんの公式You Tubeチャンネルに素敵な動画がたくさんあるので、少しだけご紹介します!

フルート曲の定番、ボルヌ作曲「カルメン幻想曲」。

ハバネラのリズムに乗ってゆるやかに始まり、徐々に加速してゆく超絶技巧。
やわらかくも芯の強さを感じさせるカルメン。
ドン・ホセでなくてもうっとりしてしまいますね。
華やかで美しい!

続いて、細川俊夫作曲「線 I 」。
細川俊夫さんは、日本を代表する作曲家のお一人。
日本古来の文化に造詣が深く、能を題材にしたオペラなど、未来に語り継がれるマスターピースを数多く作曲され、世界中に熱心なファンを持つ、もの凄い人です!
この「線 I」は、上野さん曰く・・・

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という作品で、音楽にあまり詳しくなくても、日本に生まれ育った方は「あ、この感覚、知っている!」と感じていただけるはず。
(動画にも欧文で、Line of Japanese calligraphyと書いてありますね)
現代音楽はちょっと難しそう・・・という方にこそ、ぜひ聴いていただきたい曲です。

研ぎ澄まされた集中力、間合い、音の肌理。
上野さん、まるで武士のようです。
あのカルメンを演奏していた人と同一人物とは思えない・・・(驚愕で震えます)
表現力の幅が凄い!
この「線 I 」、動画は抜粋ですが、6月3日(月)の公演では、全曲とおして!(もちろん生演奏で!)お聴きいただけます!!

いかがでしたか?
クラシックの定番曲から現代音楽まで、自由自在な表現力をもつフルーティスト、上野由恵さん。
6月3日(月)の第一生命ホール公演では、バッハ(父バッハと息子バッハ)から細川俊夫まで、多彩な上野さんの演奏をお楽しみいただけます。
共演は、チェンバロ界を牽引する、あの曽根麻矢子さん!
どうぞご期待ください!

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雄大と行く 昼の音楽さんぽ 第17回
上野由恵&曽根麻矢子
フルート&チェンバロ・デュオ

日時 2019年6月3日(月)11:15 開演
(10:45開場/11:00~山野雄大のプレトーク/12:15終演予定)
出演 上野由恵(フルート) 曽根麻矢子(チェンバロ) 山野雄大(プレトーク)
会場 第一生命ホール

C.P.E.バッハ:フルート・ソナタ ト長調 Wq.133, H564「ハンブルガー・ソナタ」
ロワイエ:スキタイ人の行進(チェンバロ・ソロ)
作曲者不詳:グリーンスリーブス変奏曲
細川俊夫:線 Ⅰ(フルート・ソロ)
J.S.バッハ:フルートとチェンバロのためのソナタ イ長調 BWV1032

公演の詳細はこちら(リンク)

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