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「晴れオケ」ベートーヴェン交響曲全曲演奏会 インタビューその1
コンサートマスター・矢部達哉、オーボエ首席・広田智之、クラリネット首席・三界秀実

2019年4月15日

コンサートマスター矢部達哉のもとに集ったメンバーで、指揮者を置かず、室内楽の延長のような、自発的で研ぎ澄まされたアンサンブルを特徴とする『トリトン晴れた海のオーケストラ(晴れオケ)』。

ベートーヴェン生誕250年にあたる2020年に向け、昨年から3年に渡ってベートーヴェン交響曲全曲演奏会(全5回)を開催中。

コンサートマスター・矢部達哉さん、オーボエ首席・広田智之さん、クラリネット首席・三界秀実さんのインタビューを、2回にわたって掲載していきます! 

(聞き手:片桐 卓也)

集合写真クレジット入り(C)大窪道治_0K74442s.jpg

ベートーヴェン・チクルス、1年目を終えて

――矢部★矢部さん_0KU9192(C)大窪道治cut2.jpg

 モーツァルトを中心にやって来ましたが、2016年に横山幸雄さんとベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲演奏会をご一緒に演奏した時に、この晴れオケはベートーヴェンが良いなと思いました。そしてベートーヴェンのシンフォニーが出来ることになった。実際に音を出してみると、想像以上の手応えがありました。打ち上げ花火みたいにベートーヴェンの交響曲全曲をやります、ということではなく、この時期にこのオケのメンバーと一緒に演奏する意義を感じました。ただ、お客様にも喜んで頂いているし、自分たちも楽しんで演奏しているのですが、自分の中ではまだまだ出来ることがたくさんあると分かったので、この1年間で4曲を演奏して満足ということではなく、もっと先に行きたいなという気持が大きくなっているのが正直なところです。

 みんながよく聴き合って、それで合わせています、というような所を目指していた訳ではなく、ベートーヴェンを演奏する上で、オケのメンバーひとりひとりの個性というかキャラクターを出した上でまとまるという方向性を目指していたのです。普通のオーケストラの場合、はみ出してしまうことを恐れて、小さくまとまってしまうものですが、このオケではそれを無くして、ひとりひとりが100%実力を出した上で合わせるということまで踏み込んだと思うのですが、その時に、より一段高い調和を目指す。みんなが全力を出して合っているので、それは良いことなのですが、次にピアニシモの響きの質とかにもこだわっていきたいと思っています。

 自分の実力を発揮することと、室内楽的に聴き合って演奏することを両立させるのは難しいのですが、例えば、ここは広田さんを聴いて、ここは三界さんを聴いて、ここはホルンを聴いて、という時に、自分がどんな音を出しているのか分からなくなる時がある。そういう点で、自分の演奏をさらに高めないとステップを一歩上がれないと思った1年でした。

指揮者なしのオーケストラの魅力

――広田 

★広田さん_0K74254(C)大窪道治cut.jpg

 演奏者側から見ると、いつもの客席の感じと変わらないです。でも、指揮者がいないことで視界が開けているから、よりお客様の存在を感じて演奏することになる。お客様の集中力を我々も感じて演奏するということになりますね。

――三界 

 普段のオーケストラで演奏している時と、視覚的な違いは感じませんが、晴れオケはやはり弦楽器の人数が少ないので、アンサンブルがしやすい。結果的に客席に伝わるものが違うのかなという気がします。

――矢部 

 普通のオーケストラのコンサートの時、お客様は指揮者を見ている時間が多いと思うのです。この晴れオケを始めた当初、聴衆はどこを見るのだろうと思ったのですが、このオケの場合、ひとりひとりの奏者からエネルギーが出ていて、目のやり場に困らないだろうなと思います。どこを見ても楽しい。客席との一体感がある。客席を含めて一緒に音楽を作っている感覚が良いなと思うのです。客席の集中度というか、いま良いなと思ってくれていることも、舞台の上から感じることが出来る。そういう相乗効果があるので、第一生命ホールで演奏することはいつも楽しいです。

――広田

 指揮者が居る場合、お客様は指揮者を見ていると思うのですが、その指揮者のアクション、p(ピアノ)を要求したり、アクセントを要求したり、そういう動きを見ますね。それを受けてお客様も音を受け止めるから、体感する度合いが強くなっていると思います。晴れオケの場合は指揮者がいないから、音だけを受けることになる。もちろん奏者同士の目配せや矢部さんの合図を見ることもあるだろうけど、指揮者のように見ている訳ではない。極端に言えば、音だけでやらなければいけない。それが我々の使命でもあるし、責任でもあると思う。その部分をお客様にも楽しんで頂けるのではないでしょうか。

――矢部

 もっともっと先へ行きます。いまある形は崩さずに、何かを変えるのではなく、何かを加えることで。ベートーヴェンに関して言えば「結果」が出ることはないのですね。これで出来たという日は来ないから、試行錯誤を続けながら毎回やって行く。この1年で4曲を演奏して、ベートーヴェンの破格の偉大さを思い知ることになりました。ブルックナーやマーラーに較べて、楽譜にフォルテとかピアノの指示が少ない訳ですが、それだけに奥行きが凄まじい。ベートーヴェン自身、正解を求めていなかったと思うし、その正解のないところに無限の可能性がある。それをみんなで探って行くことが楽しいのです。自分たちが納得してやらないと説得力がないので、その時点での確信を持って演奏できたら良いなということは思います。リハーサルの時間も限られている訳だから、そこで最大限の密度を出すためには、自分を信じ切ってやるしかないです。

 もちろん自分で考えて来たことが、初日のリハーサルでダメになることもあります。それで落ち込むこともあるのですが、そういうことも含めて、指揮者のいないリハーサルです。

晴れオケインタビュー時IMG_8193.JPG

ーインタビューその2へつづく

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トリトン晴れた海のオーケストラ 第6回演奏会
ベートーヴェン・チクルスⅢ

■日時:2019年6月29日(土) 14:00開演
■出演: トリトン晴れた海のオーケストラ
【コンサートマスター】矢部達哉
【ヴァイオリン】双紙正哉 会田莉凡 景澤恵子 小関郁
 塩田脩 直江智沙子 福崎雄也 松浦奈々
 三原久遠 渡邉ゆづき 
【ヴィオラ】篠﨑友美 瀧本麻衣子 福田道子 村田恵子
【チェロ】山本裕康 清水詩織 森山涼介
【コントラバス】池松宏 佐野央子
【フルート】小池郁江 斎藤光晴 
【オーボエ】広田智之 池田昭子
【クラリネット】三界秀実 糸井裕美子
【ファゴット】岡本正之 岩佐雅美
【ホルン】西條貴人 和田博史 濵地宗
【トランペット】高橋敦 中山隆崇
【ティンパニ】岡田全弘

■ベートーヴェン:
交響曲 第4番 変ロ長調 Op.60
交響曲 第7番 イ長調 Op.92
■S席¥6,000 A席¥5,500 B席¥3,500 U25¥1,500(25歳以下)
2公演セット券 S¥11,000( *11/30 第7回演奏会 ベートーヴェン・チクルスⅣ

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