ピアノが得意だったベートーヴェンは、若いころからとしをとるまで、生涯にわたってピアノ・ソナタを作曲しました。番号がついたソナタは全部で32曲あり、その中には「悲愴」「月光」「熱情」という名前の、有名な作品もあります。「ワルトシュタイン」という名前のピアノ・ソナタは、8さい年上の、ボン時代からの大事な友だち、ヴァルトシュタイン伯爵にささげられた曲です。
当時のピアノは、現在コンサートホールで使われるグランドピアノより小さく、鍵盤の数も少ないものでした。ベートーヴェンの生きている間にピアノの改良が進み、鍵盤の数も増え、より力強い音が出るなど進化していったのです。「このピアノなら、こんな音楽もできるな」と、ピアノの進化につれて、ベートーヴェンもいろいろ試しています。ピアノづくりの名人だった友だちのシュトライヒャー夫妻には「ここを変えてみたら」とアドバイスしたり、「もっとこんな音を出したい」などとお願いしたりしています。
第29番「ハンマークラヴィーア」を作曲しているとちゅうに、イギリスから最新式のピアノがおくられて大喜びしたベートーヴェンは、新しい機能をフルに使って曲を完成させ、その後、50さいのころに最後の3曲、第30番、第31番、第32番を作っています。たくさんのピアノ・ソナタを作曲した後にベートーヴェンがたどりついたこれらの曲には、まるで天国にあと一歩のところまでのぼって、激動の生涯をおだやかに振り返っているような、何とも言えないすばらしい世界が広がっています。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
1770年ドイツのボン生まれ。小さいころに父からピアノを習い始めます。オーストリアのウィーンに住み、9曲の交響曲をはじめ、32曲のピアノ・ソナタ、16曲の弦楽四重奏曲など、数多くの優れた曲を残しました。
交響曲、弦楽四重奏曲など、
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トリトンアーツ通信vol.171(2018年6月号)の記事を再掲しました
第五回 親子でチャレンジ!ベートーヴェンクイズ♪
ベートーヴェンの時代に大きな進化をとげた楽器はなんでしょう?
1.ピアノ 2.リコーダー 3.ヴァイオリン
答え:1.ピアノ 2020年6月12日 twitterより出題