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石坂団十郎(チェロ)インタビュー その4
小菅優(ピアノ)とのベートーヴェン詣

2018年5月30日

ベートーヴェンと同じ故郷ボン出身で、日本人の父とドイツ人の母を持つチェリスト石坂団十郎さんが、ピアニスト小菅優さんとともにベートーヴェンのチェロ・ソナタ全曲演奏会を行います。

団十郎さんに伺ったお話を、これまで3回にわけて掲載してきましたが、いよいよ最終回です!

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ベートーヴェンの生まれ故郷ボン

――そうでしたか。団十郎さんは、ベートーヴェン・ハウスのあるボン生まれですね。

そう、ベートーヴェンの街。それが関係あるかもしれませんね。

――ボンの人にとってベートーヴェンはやはり大きな存在でしょうね。

大きな存在ですね。神様みたいな。すごく大きな誇りです。ベートーヴェンといえば......全然違う話になりますが、ドイッチェ・バーン(ドイツ鉄道)が新しい車両1つ1つに有名人の名前をつけようとしていた時、ボンは、必ず1つはベートーヴェンの名前をつけてくださいと提案したんです。色々あって人の名前をつけるのはやめることにしたのですが、それでもボンはベートーヴェンの名前はつけるべきだと主張しています。結局まだ決まってはいないのですが。でもボンにとって、だけではないですね。1970年代に、打ち上げられた無人惑星探索機ボイジャーの金のレコードにも、ベートーヴェンの曲が収められているくらいですから。世界中の人々にとって重要な人物ですよね。

愛器ストラディヴァリウス「フォイアマン」

――楽器は、前回2009年の時とは違うのですね。

今は「フォイアマン」。エマニュエル・フォイアマンが使っていたストラド(ストラディヴァリウス)です。

――以前使っていたストラドの「ロード・アイレスフォード」とは違いますか。

全く違います。キャラクターや音色や、形、モデルが全然違う。「アイレスフォード」は、ストラドの初期の時代の作品で、もともとバセットストラドといって大きかったので、小さく削られたのです。「フォイアマン」はストラドが最後に造ったチェロで、製作年代は34年くらい離れています。「アイレスフォード」は大きくて、低いバスが強かったのですが、「フォイアマン」はテノールのようで、ヴァイオリンみたいです。

――団十郎さんの手になじんできましたか。

ストラドは、なじむということがない楽器ですね。人のようです。今日は機嫌が悪いという日もあります。旅行をすると疲れてしまったりね。湿気や温度もありますが。今日はやる気がないみたいだな、という時は「はい分かりました」と(笑)。優しくしないとだめなんです。使い始めてもう5年目ですね。スティーヴン・イッサーリスが長い間使っていまして、日本音楽財団に返したので、僕が使えることになりました。

――フォイアマンが使って、その後、イッサーリスが使っていたのですか! チェロの方も、いい音楽を奏でる準備がいつでもできている感じでしょうね。

僕にとって、楽器の中には、これまで使っていたチェリストのオーラや情報が入っているように感じます。演奏していた人の影響は絶対にあると思いますね。

第一生命ホールではフォイアマンを演奏する予定です。ストラドは、音が明るいところが好きですね。もともと現代のような大きなホール用には作っていないとは思うので、ストラドが作られた時代にはどんな音がしていたのか興味がありますね。当時は、材料となる樹も違っていたと思うんですよね。50年間くらい夏も寒くて樹も成長が遅かったようで、年輪が狭くて目が詰まっているんです。他に、モダン楽器も持っています。中国やイスラエルなどストラドを持ち込めない国もありますし、特殊奏法で叩いたりできないので、現代曲もストラドで演奏しない方がいいですね。

教育普及活動について

――今チェロを教えていらっしゃいますね。

ベルリンのUdK(ベルリン芸術大学)で教えているのと、この秋からバーゼルでも、モニゲッティの後任として教えます。教えると、これまで考えたことのないことを考えたり、色々なアイディアを得られたりしますね。学生と音楽について話すことは勉強になります。教えるのはとても好きですね。大事だと思います。例えば色々な音楽の演奏法がありますね、バロックとか古典とか、そういう違いを教えるのも大事ですよね。バッハとベートーヴェンを比べても、ヴィブラートやアーティキュレーションが結構違う。ベートーヴェンはピアノが重要ですから、それは結構考えるべきですね。特に強弱。ピアノがff(フォルティッシモ)で、チェロがf(フォルテ)、と書いてあったらなぜか、とかね。

――我々の団体は、ホールの外へ音楽をお届けするアウトリーチも実施していますが、ドイツでもアウトリーチなどの活動はされていますか。

やっています。ラプソディー・イン・スクール[Rhapsody in school]というプロジェクトがありまして、たくさんのアーティストが参加しています。どこかの街で演奏会をやる時に、ラプソディーのスタッフから「ここでアウトリーチやりませんか」と連絡がくるので、受けられるときはやっています。ひとりで楽器や音楽について説明して、質問コーナーも設けます。色々な子どもがいますね。興味がなさそうな時もあるし、たくさん手が挙がって質問がくるときもあります。

――ドイツの子どもたちにとっては、クラシック音楽は国の伝統音楽ですよね。

でも意識はしていないと思います。今はドイツでも、「ベートーヴェンが誰か知っていますか」と聞いても分からない子もいます。今は色々な音楽のジャンルがありますから、興味も色々な方向にいっています。ベートーヴェンの後期の弦楽四重奏曲などの世界を味わうためには、やはり勉強することが必要だと思います。楽器をやっているなら初見で弾いてみたりして、曲自体を自分で勉強するのが一番だと思うのですが、交響曲や、ソナタや、色々な音楽を聴くことも勉強になると思います。勉強しないと難しいのは、特に現代曲ですね。本能的に伝わることもあるかもしれませんが、たいていは勉強が必要です。

――勉強する甲斐があるということですよね。今回の演奏会もたくさんの人に楽しんでいただけるといいなと思います。

はい、皆さんと気持ちをシェアするのを楽しみにしています。

小菅 優&石坂団十郎
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ全曲演奏会(全2回)

■出演:小菅 優(ピアノ) 石坂団十郎(チェロ)

■日時: 2018年6月15日(金) 19:00開演
■演奏プログラム
【オール・ベートーヴェン・プログラム】
《マカベウスのユダ》の主題による12の変奏曲 ト長調 WoO45
チェロ・ソナタ第2番 ト短調 Op.5-2
チェロ・ソナタ第1番 ヘ長調 Op.5-1
《魔笛》から「娘か女房か」の主題による12の変奏曲 ヘ長調 Op.66
チェロ・ソナタ第4番 ハ長調 Op.102-1

公演情報はこちら

■日時: 2018年12月15日(土) 14:00開演
■演奏プログラム
【オール・ベートーヴェン・プログラム】
《魔笛》から「恋を知る男たちは」の主題による7つの変奏曲 変ホ長調 WoO46
ホルンとピアノのためのソナタ ヘ長調 Op.17
チェロ・ソナタ第5番 ニ長調 Op.102-2
チェロ・ソナタ第3番 イ長調 Op.69から 第1楽章(初稿版)
チェロ・ソナタ第3番 イ長調 Op.69

公演情報はこちら

■各回S席¥5,000 A席¥4,500 B席¥3,500 ヤング¥1,500(小学生以上、25歳以下)2公演セット券S¥9,000

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