日本音楽集団第185回定期演奏会 和楽劇「呑気布袋・ドンキホーテ」
報告:山白真代(2階C3列11番)
投稿日:2006.11.29
公演当日...。開演前の会場には和服姿の方も多く、まだ誰も試みていない作品に期待を寄せるいつもとはひと味違った心地よい賑やかさを感じた。また、客席に入るといつものコンサートのステージとは様子が違い、舞台後ろには黒幕とスライドがあり、真ん中には小さなステージと舞台小道具。それを囲むように和楽器が並べられ、華やかで美しいステージがセットされていた。視覚からもこれから始まる舞台にワクワクする気持ちが膨らむ。
今回の作品は、呑気な山の住職「呑気布袋」役に狂言師の善竹十郎、呑気の旅のお供をする「山椒半左」役にテノール歌手の森一夫、そして美しい姫「華の精」役は元宝塚スターの上原まり、といった豪華なメンバーが出演し、それぞれの個性でストーリーを盛り上げていった。全く違った世界で活躍する3人。声の質、動き、得意とするジャンルも違う3人がどのように混ざり合うかに興味があったが、これが絶妙なバランスで折り合い、3人の違いが逆にうまく生かされる舞台が創られているように思った。さすが、舞台に生きるプロの力だろう。また、合唱で出演の東芝フィルハーモニー合唱団の活躍が、この舞台を更に盛り上げる大きなポイントになっていた。
約80名のメンバーによる歌声は、会場全体まで澄み渡り、「呑気布袋」の世界へと誘ってくれた。また、合唱の歌詞がうまく物語を進める役割となり、スムーズにストーリー展開をしていたように思う。さらに舞台では、この人数の動きをうまく工夫し、演出効果に有効に取り入れられて、とても楽しめた。
もちろん、日本音楽集団の音楽があった上で成り立つ舞台。秋祭りのお囃子のようなメロディーや、体を動かしたくなるような太鼓のリズム、どこかで聴き馴染みのある華やかで明るい曲が、全体を通して多かったように思う。音楽集団のメンバーも芝居に参加する場面等もあり、楽しい雰囲気をつくっていた。面白い仕掛けや客席からの笑い、芝居や音楽での見せどころもあり、終始楽しいステージにお客様も大満足の様子だった。
お話、演出、音楽とすべてがオリジナル。すべてが初の試みという事で裏も表も大変な努力があったように思われるが、ステージは、楽しさで満ちていたのがよく伝わってきた。新しい事に挑戦するエネルギーが良い形で本番に繋がり、舞台で表現されていたような気がした。
音楽と個性豊かな出演者の台詞のバランスも難しかったかと思う。欲を言うならば、「山椒半左」の歌声をもう少し聴いてみたかった。
「呑気布袋」。タイトル通り、最初から最後まで愉快なステージを楽しむ事が出来た。初演、大成功だと思う。次の作品に期待し、待ち望んで帰るお客さんがきっと多かったはずだろう。(私を含め...)
公演に関する情報
第一生命ホール5周年記念コンサート
〈TAN's Amici Concert〉
日本音楽集団第185回定期演奏会 和楽劇「呑気布袋・ドンキホーテ」
日時: 2006年11月18日(土)18:00開演
出演者:善竹十郎(狂言/呑気布袋)、上原まり(琵琶唄/華の精)、森一夫(テノール/
山椒半左)、東芝フィルハーモニー合唱団(合唱)、
田村拓男(指揮)、日本音楽集団(演奏)
演奏曲:
ミゲル・デ・セルバンテス(原作)、荘奈美(脚本・演出)、西川浩平(企画・構成)
和楽劇 呑気布袋(作曲:秋岸寛久、川崎絵都夫、福嶋頼秀)