第一生命ホール 5周年の記念日コンサート
報告:2FC1-13 佐々木久枝(中央区勤務)
投稿日:2006.11.26
前半はプレアデスとエクセルシオの2クァルテットの合同演奏によるメンデルスゾーンの弦楽八重奏曲が演奏されました。
冒頭奏者の珍しい配置にまず驚きました。湧き上がるような第1主題のヴァイオリンとチェロにそれの間を泳ぐような他パートの活発なアンサンブルが繰り広げられ、ピチカートと流すようなコントラストが変ホ→ト→変ホと展開されていきました。リピート2度目のヴァイオリンはすっかり彼らの世界に入っていましたが、部分部分でモーツァルトの2台ピアノの協奏曲を思わせ、展開部から再現部に向けての盛り上がりはメンデルスゾーンらしい半音刻みのクレッシェンドの盛り上がりを見せていて、ちょうど彼のピアノソナタ第1番を思い起こさせました。第2楽章アンダンテではハ短調の憂うような3連符風伴奏に乗って第1ヴァイオリンのソロ旋律部分が特に印象的でした。途中チェロも加わり長調でメロディ展開していく部分は回想部分を思わせるような演奏でした。第3楽章アレグロは全体的に軽やかな曲想で、ト長調に転調して更に舞うようなアンサンブルでした。
アタッカ気味に入った第4楽章プレストでは2グループのかけ合いが活発で、ピアノソナタ第1番のフィナーレを思わせました。全体的に華やかなフィナーレで、第1ヴァイオリンのカデンツァ風パッセージも聴き入りました。
後半ではピアノに長岡純子さんを迎えてシューマンのピアノ五重奏曲が演奏されました。長岡さんはオープニングコンサートでベートーヴェンのピアノ協奏曲を聴いたのですが、躍動感溢れるタッチと歌い回しで、生まれ立てのホールに瑞々しさを注ぎ込んでいました。5年の年月を経て再び弾かれたピアノは一層躍動に満ちて、響きが熟してきたホールを祝福するかのように優しくかつ朗々と響き渡りました。第1楽章アレグロではカーンとした響きと後拍を意識したアンサンブルが聴き手を引き込みましたし、再現部でのチェロとの絡み合いも見事でした。第2楽章での緩やかな葬送行進曲風は重々しさを保ちながらも沈み過ぎないバランスを保っていました。途中最初のトリオではややためらいがちに長調で回想場面を思わせるような歌い口でしたし、続く別のトリオでもド音から下がって特徴のあるリズムを刻みながら進み、第1ヴァイオリンの歯切れ良さはあたかもショパンのピアノ協奏曲第2番中間楽章を思わせ、ビオラの主旋律とピアノが受けていくところも聴きどころでした。更に第1ヴァイオリンのメロディアスな場面はシューマンのピアノ協奏曲中間楽章を思わせました。続く第3楽章スケルツォは急速な上下音スケールでややもすると無味乾燥な練習曲に聴こえかねないのに、長岡さんのカーンとした打鍵と弦との小気味良いかけ合いでグイグイ引き込まれていき、アンコールで再度奏された時も興奮が収まりませんでした(笑)。第4楽章アレグロではピアノと弦との対話が特徴的で、独特のタタターンというリズムに乗って展開していくコーダ部分でも力強いピアノのフーガと弦パートが右から左へと旋律リレーしていく部分で視覚的にも楽しめました。
本番後のささやかなレセプションでも話題に出たのですが、第一生命ホールはお客様・演奏家・スタッフ、そしてサポーターに支えられてこの5年を迎えられたとの話。私達ブランティアスタッフがサポーターと呼ばれるのも、"支える"という面に焦点を当てているからなのでしょう。それぞれ担う役割はさまざまですが、皆何らかの形で一つの演奏会、一つの事業を成すべく取り組んでいるという事を改めて思った次第です。1サポーターとしての原点に還った夜でした。
―また、新たな5年、10年に向かって―
公演に関する情報
第一生命ホール5周年記念コンサート
〈特別コンサート〉
5周年の記念日コンサート
日時: 2006年11月15日(水)19:15開演
出演者:長岡純子(ピアノ)
プレアデス・ストリング・クァルテット(弦楽四重奏)
クァルテット・エクセルシオ(弦楽四重奏)
演奏曲:
メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲 変ホ長調作品20
シューマン:ピアノ五重奏曲 変ホ長調作品44