ベートーヴェンが愛した甥(おい) カール
ベートーヴェンは、16さいでお母さんを亡くし、それから病気のお父さんのかわりにいっしょうけんめい音楽の仕事をして、ふたりの弟のお世話をしました。弟たちのことを愛して心配するあまり、けんかしたり、結婚に反対したりしています。
下の弟ヨハンには子どもがいませんでしたが、上の弟カスパル・カールには、一人息子のカールがいました。ベートーヴェンにとって甥(おい)ですね。ところがカスパル・カールは、ベートーヴェンが44さいの時、9さいのむすこを残して亡くなってしまいます。自分自身は結婚せず子どもがいなかったベートーヴェンは、カールのお母さんとどちらがめんどうをみるか、けんかをして、カールの父親がわりになりました。カールはベートーヴェンのむかしの弟子ツェルニーにピアノを習ったり、ベートーヴェンの仕事の手伝いをしたりしています。カールにとっては、おじさんとお母さんがあらそうのは悲しいことだったでしょう。学校でうまくいかなかったり家出をしたり色々なことがあって、カールは19さいの時にピストル自殺をはかってしまいます。さいわい、いのちは助かって、病院を出た後は、ベートーヴェンといっしょに、もうひとりのおじさんヨハンの家でしばらくすごしています。
(カールは、のちに結婚して5人の子どもを持ちしあわせにくらしました。そのうちの一人息子がベートーヴェンの苗字を受け継ぎますが、そのまた息子(カールの孫)が1917年に亡くなると、ベートーヴェンの苗字はとだえてしまいます。)
さて、カールの退院後、2か月ほどヨハンの家ですごしたベートーヴェンですが、とても寒い日にカールといっしょにあわててウィーンに戻って以来、ベッドから起き上がれなくなってしまいます。次回、「ベートーヴェンってどんな人?」最終回です。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
1770年ドイツのボン生まれ。小さいころに父からピアノを習い始めます。オーストリアのウィーンに住み、9曲の交響曲をはじめ、32曲のピアノ・ソナタ、16曲の弦楽四重奏曲など、数多くの優れた曲を残しています。
交響曲、弦楽四重奏曲など、
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トリトンアーツ通信vol.209(2022年5月号)の記事を再掲しました