「不滅の恋人」
みなさんは今、「好きな人」はいますか? 好きな人に気持ちを伝えたいと思いますか?
ベートーヴェンは一度も結婚はしませんでしたが、好きになった人、結婚したいと思った人が何人かいたことが、残された手紙から分かっています。手紙のひとつは、出せないままベートーヴェンが大事に持っていて、死んだあとに発見されました。
「愛している」「いっしょに暮せたら」「朝からきみのことを考えている」と書かれているこの熱烈なラブレターには、不思議なことに相手の名前が書いてありません。手紙の中で「わたしの不滅の恋人よ」と呼びかけているので、「不滅の恋人」とはいったい誰だろうと、たくさんの人が推理をしてきました。
手がかりになったのは、ベートーヴェンが手紙を書いた場所、その時に相手がいた場所(Kというイニシャル)、そして手紙の日付と曜日、天気などから割り出された年などです。その数か月後に書いたと思われるベートーヴェンの日記で「Aとのことはすべて終わってしまった」とあることから、相手の名前のイニシャルはAで始まると思われます。
ベートーヴェンがおつきあいをした色々な女性が「不滅の恋人」の候補とされましたが、今ではこの相手は、アントーニエ・ブレンターノだとされています。名前が書けなかったのは、アントーニエが、他の人と結婚していたからなのです。
手紙を読むと、ふたりはとても愛し合っていて、結婚できなくても、心と心はしっかりつながっていたようです。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
1770年ドイツのボン生まれ。小さいころに父からピアノを習い始めます。オーストリアのウィーンに住み、9曲の交響曲をはじめ、32曲のピアノ・ソナタ、16曲の弦楽四重奏曲など、数多くの優れた曲を残しています。
交響曲、弦楽四重奏曲など、
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トリトンアーツ通信vol.205(2021年12月号)の記事を再掲しました