育児支援コンサート
~子どもを連れて、クラシックコンサート
生演奏をバックに絵本の朗読を聴くなど、子どもにとってこれほど贅沢な読み聞かせがあるだろうか
私がこのコンサートで何より素晴らしいと思ったのは、「子どものための音楽スタジオ」だ。ホンモノのチェロを間近に見て、プロの演奏家と触れ合える機会など大人でも滅多にない。私はホールでコンサートを聴いていたので、音楽スタジオの様子は見られなかったが、このような体験ができる子どもを羨ましく感じる。
第1部「大人のためのコンサート」は、よく練られたプログラム構成である。私にとってチェロ・リサイタルは初めてで興味深く、丸山泰雄さんの多彩な音色や奏法を堪能した。
1曲目は多くの人に親しまれている名曲、バッハの『無伴奏チェロ組曲第1番よりプレリュード』。正統派古典の美しい旋律のあと、2曲目は一転して現代曲の黛敏郎である。『無伴奏チェロによる「文楽」』は、チェロで三味線の音を模した面白い曲。黛敏郎には、ヴァイオリンで笙や篳篥のような音を奏でる曲があるが、三味線の響きもまた新鮮だった。コダーイ『無伴奏チェロ・ソナタop.8』の超絶技巧には目を見張った。
強烈な印象が残ったのは最後の曲、ソッリマ『ラメンタツィオ』。私はクラシックコンサートにオペラグラスを持参することはないが、チェリストの激しく動く両手に、この日ばかりは持ってくればよかったと後悔した。また、チェロとチェリストの歌でアンサンブルを作るとは全く予想もしなかったことで、不思議な音色に聴き入った。
第2部「チェロアンサンブルを聴こう」では、スーパー・チェロ・アンサンブル・トウキョウの8本のチェロが舞台に並んだ。壮大な眺めである。息の合ったアンサンブルの妙、そして特に渡邉辰紀さんの奏でるメロディーが美しかった。
『音楽と絵本「銀河鉄道の夜」』は一番楽しみにしていた企画。大スクリーンに映し出される清川あさみさんの幻想的な絵を見ながら、生演奏をバックに絵本の朗読を聴くなど、子どもにとってこれほど贅沢な読み聞かせがあるだろうか。ひとつ残念に感じたのは、音楽が盛り上がると朗読の声が演奏に埋もれがちになることだろうか。私は所々、朗読を聴き取りにくいと思ったが、客席の場所によって違ったかもしれない。
絵本の内容は子どもには難しすぎるのではないかと危惧していたが、総じて大人しかった。
正直にいえば開演前、行儀悪く遊んでいる子どもを見かけ、コンサートの雰囲気を想像して少し気が滅入っていたのである。
子どもの集中力を持続させる企画の考案は大変なことだと察するが、これからもこのような試みは続けてほしい。きっと子どもたちは音楽や楽器を面白い、楽しいと感じたのではないだろうか。小さなクラシック・ファンが増えることを、音楽を愛する大人の一人として歓迎したい。
第9回ビバホールチェロコンクール第1位受賞記念
西方正輝チェロ・リサイタル
西方正輝の今後には強い味方がついているというように思われ、今後が楽しみな演奏家といえましょう。
第一生命ホールですでに5回目と恒例になっている「ビバホール チェロコンクール第一位受賞記念コンサート」とはその名の通り、プロの演奏家を目指す才能あふれたチェリストたちの登竜門とも言うべきコンクールで見事に第一位を射止めたチェリストだけが出演出来るコンサートのことです。
今回が9回目となるこの二年に一度開かれるコンクールの第一位受賞者の中には菊池知也、趙 静、宮田大など錚々たるチェリストを輩出しているのを見ても、如何にレベルの高いものかが分かります。
しかし、このコンクールのホームページによると「企画・運営等をはじめスタッフは約100名の地域ボランティアの皆さんのご協力により開催されます。出場者は各ボランティアの家にホームステイしコンクールに備えます。」というようにアットホームな雰囲気で行われるようで、この日の第一生命ホールでの記念コンサートにも、養父市長の挨拶が後半の冒頭にあったり、実行委員会の方々の努力に加え、演奏者も多くのチケットを販売したお陰で600人近い聴衆が温かく奏者を見守る雰囲気が醸し出されていました。他のコンクールのチェロ部門で一位になっても、必ずしもこんな素晴らしいホールで受賞記念コンサートが開かれるわけではありませんから、ビバホールチェロコンクールの方が良い、と考えるチェリストがいてもおかしくないでしょう。
前半の最初はミヨー:チェロ協奏曲第1番 作品136。
聴いてみての感想は「思ったほどの違和感がない」ということで、「いきなりミヨーか」と驚きましたが聴いてみるとこの曲を冒頭に持ってきた理由が分かりました。それというのも以前聴いた他の曲からは想像できないほどのストーリーのある音楽だったからです。第1楽章の最初の強烈なフレーズを弾き始めてすぐ、この音楽家の技術はゆるぎないものがあると分かりましたが、詩的な雰囲気に移り変わっても十分な技術的裏付けに支えられた中堅奏者のような落ちつきのある演奏でした。
次いでシューマンのアダージョとアレグロ 変イ長調 作品70。
ドイツロマン派を代表する名曲を演奏するその情熱的なこと、恐れ入りました。特に曲想のコントラストが良く弾き分けられていました。
その次の二曲がドビュッシー、最初は「月の光」そしてチェロソナタ。
ここで課題が浮かび上がります。それはこのクリスタルな「月の光」をハイポジションで演奏する際に、聴きたい音は透明感のある澄んだ音色であるべきところが、惜しむらくは、ややくすんでいるのです。これは技術の問題ではなく楽器の問題かもしれません。
ただ、チェロソナタではアンサンブル・ピアノ奏者の高橋ドレミとの呼吸もぴったりで、特に2楽章のピチカートはよく合っていました。
後半の最初はポッパーでしたが、その妙技を見せつけられるようで、超絶技巧には恐れ入りました。またショパンの「序奏と華麗なポロネーズ」でもその壮麗な音楽をいかんなく表現していましたし、グラズノフの「吟遊詩人の歌」では叙情的な旋律を十分に歌わせていました。
最後がラフマニノフのチェロソナタ ト短調作品19。
これはピアノパートが優勢なので、時としてチェロの音楽が聴こえなくなる危険性のある曲なのですが、西方正輝は最初からピアノの蓋は半開でチェロの位置も客席から見てピアニストよりも左側に位置していて、バランスをよく考えた演奏になっていました。
音楽家というのは単に演奏が上手なら成功するか、と言うとそうではありません。「この音楽家は応援してあげよう」というものが何かあると会場の雰囲気も暖かいものが感じられます。今日のコンサートはまさに手作り感のあるものでしたから、西方正輝の今後には強い味方がついているというように思われ、今後が楽しみな演奏家といえましょう。
子どものためのクリスマス・オーケストラ・コンサート
音の厚みや迫力、また様々な楽器があることも、子供たちにとってはよい興味の対象になると思います。
平成23年12月24日 第一生命ホールで行われた、「子どものための クリスマス・オーケストラ・コンサート」を鑑賞に行きました。
クリスマス・イブの土曜ということもあり、チケットを渡す入り口やクロークは混んでいましたが、対応がスムーズであまり待った感がありませんでした。
私たちの席は二階席でしたが、他のお子さんが通路を走ったり、手摺りに身を乗り出していると、「危ないので、やめてくださいね。」と速やかに係員の方が声をかけていました。以前からこの様な声かけはありましたが、プログラムに掲載された具体的な注意事項も含め、より配慮が増しているような印象を受けました。
今回はオーケストラなので、それまでの室内楽にくらべ楽譜を置く台が多く並んでおり、娘が「今日はたくさんあるね。いつもより楽器がたくさんあるのかな?」と言っていました。そしてステージ上に奏者が出てきて、チューニングを始めると「今から始まるから、練習しているんだね。」と、少しわくわくした顔になりました。
プログラムに沿って、演目の様子や感想を述べていきます。各曲でメインとなる楽器があり、その演目内で各楽器の解説をしていく、というものでした。
1.ヘンデル:「水上の音楽」より「アラ・ホーンパイプ」 (金管楽器)
ステージ上にトランペット、そして二階席ステージ横にトランペットとホルンが現れました。 二階席なので、すぐ近くに楽器の音色やキラキラ光る様子を感じました。
ステージ上の伴奏が進む間に、トランペットとホルンが一階のステージに降りてきて次の旋律へ繋いでいく、というパフォーマンスも良かったです。始まりにぴったりの明るく、セレモニー感のある曲でした。娘は手摺りをピアノの鍵盤のようにして、リズムを取っていました。この曲の最初のメロディはとても有名で、どこかで聞いたことのある曲、といえます。しかしその後の旋律は知らなかったので、こんな展開の曲なのだな、という発見がありました。
演奏後は、奏者から「ラッパはどのようにしたら音が出るか?」という三択クイズが出されました。子供たちは皆元気に答えていて、とても活気がありました。娘は「学校で見た!」とトランペットを指差し、音楽の授業で見たと喜んでいました。唇を震わせて音を出す、とは知らず(私もですが)二人でへぇ~となりました。「ピッコロ・トランペットはトランペットより1オクターブ音が上がる」、「馬に乗ったまま吹くときに、馬がびっくりしないよう、ホルンの先は曲がっている」等々、へぇ~、なるほど~の連続でした。
2.バッハ:「2つのヴァイオリンのための協奏曲より第1楽章」 (弦楽器)
いかにもバッハ、というメロディの掛け合いが美しい曲でした。二人のソリストの演奏は素晴らしかったです。
ヴァイオリンの他にチェロ・ヴィオラ・コントラバスがステージ上に。
ヴァイオリンの弦は羊の腸をよったもの、とは知りませんでした。現在はナイロンに金属を巻いたものが主となっているようです。
毎回ですが、コントラバスの大きさ、低く太い音に娘が驚いており、目の前で実際に聴かせる良さを感じます。
3.チャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形」より「行進曲」「アラビアの踊り」「トレパック」(木管楽器)
この「行進曲」もよく耳にしたことのある曲で、娘も知っていたようです。曲が始まると、両手で手摺りをトントンとし、自分も演奏しているようでした。
「アラビアの踊り」は木管楽器の優しい音色が生かされた、幻想的で素敵な曲でした。
「トレパック」もまた、皆よく知っている曲の様でした。娘も含め、子供たちの顔があっ!となっていたのが印象的でした。
クラリネットとオーボエはよく似ていますが、リードの長さが違い、音色も異なることを教えていただきました。また、ファゴットにはあまり馴染みがありませんでしたが、優しい音色で素敵だなと思いました。
4.アンダーソン:そりすべり/クリスマス・フェスティバル(打楽器)
この演目では、事前に申し込んだ子供たちが、ステージ上で演奏が聴けるという設定になっていました。
「そりすべり」が始まると、シャンシャン...という鈴の音に「キラキラ星でやった!」と娘が喜んだ顔をしました。
プログラムに「打楽器奏者は大忙し」とあるように、鈴を鳴らし、スネアドラムを叩き、鐘を打ち...と大活躍!「楽しい、わくわくするよ!」と娘も大喜び。
木の板を2つ合わせたような楽器は何に使うでしょう?と、演奏前に司会者からクイズが出されました。これは馬を叩くときのムチの音がする楽器でした。「ここでつかうんだね!」と娘もいつ使うのか気になっていたようです。
それだけ、打楽器奏者が次から次へ色んな音を出していて、次は何だろう?と子供たちをわくわくさせて、集中させていたんだろうなぁと思います。
「ジングルベル」になると、ステージ上だけでなく、座席の子供たちも盛り上がり、皆、笑顔で手拍子をしていました。
5.ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」より第1楽章
このコンサートで演奏しているアルクスは、指揮者のいない室内オーケストラ、ということです。
指揮者がいない中で、合奏するのは難しさもあるようですが、演奏は素晴らしく、この迫力はオーケストラならではだなぁと嬉しく感じました。
最初の旋律で「聞いたことある!」と娘も音楽の授業で知っているようでした。大きい音に驚き、耳を押さえるところもありましたが、これも生のオーケストラならでは。弦の弾く音も聴こえ、臨場感がありました。
プログラムには「運命」というタイトルは後で付けられたもので、日本以外ではあまり呼ばれていません。 とあり、クラシック好きの人には常識であっても、そこまで知らない人にとっては初めて知るような、この様な知識が掲載されていると、役立ちますし 子供たちにも自然に浸透するのかなと思いました。
6.グルーバー:きよしこの夜
オーケストラの演奏に合わせて、皆で歌いました。
クリスマス・イブにぴったりの、素敵なフィナーレでした。
娘が小学生になり、音楽の授業があるようになったためか、知っている楽器や曲、音色が以前よりも増えており本人が聴きながら、飽きずに楽しんでいるのが印象的でした。知識としてとっかかりがある分、自然と興味を持てたのかも知れません。
それまではソロや室内楽が多かったので、オーケストラで聴くことの良さも改めて感じました。音の厚みや迫力、また様々な楽器があることも、子供たちにとってはよい興味の対象になると思います。
機会がありましたら、是非また生演奏を聴きに伺いたいと思います。
今回は素敵なコンサートをありがとうございました。
音楽のある週末 第9回
ジャック・ズーン&今井信子&吉野直子
フルート&ヴィオラ&ハープ・トリオ
3つの楽器のソロとアンサンブルが楽しめたとても楽しいコンサートだった
第一生命ホール10周年の10daysの最後を飾るのは、フルート&ヴィオラ&ハープ・トリオコンサートである。ヴィオラの今井信子さんと吉野直子さんを聞かせていただくの久しぶりであり、フルートのズーンさんを聞かせていただくのは初めてだった。お客様は350人前後であろうか。第1曲ヘンデル「トリオ・ソナタ」。ズーンさんの暖かくて美しいフルートが印象的で、音楽が自然に流れ出てくるのが何とも心地いい。
続いてヘンデルの「私を泣かせてください」(細川俊夫編によるヴィオラヴァージョン)。これは確かヘンデルが作曲したオペラアリアでなかっただろうか。最初はソナタ風に始まり、歌はやさしく語りかける丁寧に心をこめて演奏されているように感じる。ヴィオラの深い音色がとても魅力的。
吉野さんによるリスト「愛の夢」(ルニエ編)。これは私の勝手な推測だけれど吉野さんはこの曲が好きなのではないだろうか。彼女のコンサートの曲目によく登場する曲である。私の個人的に言えば、ピアノで聞くよりもハープ編曲版の方が好きである。この曲を聞いていて、何か前に聞いた感じと違う気がした。音楽がというのではない。間違っているかもしれないが、だいぶ前に聞いた時(ティーンエイジャーコンサートの頃)と今回で使われているハープが違うのかなぁ、なんか今回のハープはちょっと鳴りにくそうな感じを受けた。断るまでもないけれど演奏は素晴らしい。フォーレ「幻想曲」は明るく楽しい曲。フランセ「5つの小二重奏曲」も今まで知らなかったがとてもきれいな曲をいい演奏で聞けてわくわくする。武満さんの「そしてそれが風であることを知った」は、それまで何回か聞いていたがそれほど気に留めていなかったけど、その良さを感じられる演奏だった。
フルート独奏の「エア」は、ニコレさんのために作られた曲のようですが、ズーンさんのフルートの音色にもとてもぴったりで素敵な演奏でした。ドビュッシーの「夢」今井さんの弾くヴィオラの高音域の音がとてもきれいで印象的でした。
最後の「フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ」もとてもいい曲でしたが、それよりもやはり演奏が素晴らしい。それぞれに音が輝いていてとてもよかったです。
アンコールは、「亡き王女のためのパヴァーヌ」。この編成だとどんなだろうと思いましたが素朴な感じが演奏から伝わってきてとても感動しました。3つの楽器のソロとアンサンブルが楽しめたとても楽しいコンサートだったと思います。
第一生命ホール10周年記念ガラ・コンサート
~モーツァルトに寄せて~
豪華な出演者によってそれぞれに違った演奏を聞くことができ、楽しかった。
このコンサートは、いろいろな形で第一生命ホールに協力、出演してくださったアーティストによるモーツァルトプログラムによるガラ・コンサートである。演奏者が有名で比較的よく知られた曲が多いためか、このコンサートは早くから完売であったようである。
当日は、前日まで日比谷の第一生命本社ビルで行なわれていたモーツァルト展(ミニコンサートも行なわれていた)の資料も展示され、それをお客さまに見て頂くのに開場時間を1時間早くしただけでなく、休憩時間や終演後も見られるように配慮がされていた。
コンサートのトップバッターを務めたのは、仲道郁代さん。仲道さんは、このホールができたとき2台のピアノのうちの1台を選んで下さった方で、仲道さんにとってこのホールのピアノはマイピアノみたいなものだろう。弾かれた曲は「きらきら星変奏曲」。透きとおった音で変化をはっきり付けた演奏であった。選んだ時と10年後ピアノはどんな風に変化しているんだろう。
2曲目は、「フルート四重奏曲」曲が始まってまもなく背筋に電気が走った。工藤さんの黄金のような音色に堀米さん、川崎さん、山崎さんの弦楽器の暖かな音によく溶け合う。音を合わせるとかいう意識が働いているとは思えない。4人ともとても自由に音楽をしているのだけれど自然に合ってしまうそんな感じのすごい演奏。聞いている間とても幸福であった。
3曲目は清水和音さん。曲は「ピアノのソナタK331トルコ行進曲付き」。1音1音丁寧にしっとりとしたピアノ。清水和音さんのピアノは永らく聞いていなかったのでこんな感じに変わったのかなあと思った。意外な場所での即興性も楽しかった。
4曲目は、佐藤美枝子さん。名前は存じ上げていたが、なかなか聞くチャンスがなかった人でした。オペラ「後宮からの誘拐」からのアリア。のびやかできれいな声。そして表情が豊かな演奏でよかった。
5曲目は、「ヴァイオリンとピアノのためのソナタK.304」。
矢部さんのヴァイオリン、横山さんのピアノ。音がきれいでさらっとした演奏。よく歌っている。もしかしたら、出演者の中では一番渋い演奏だったかも。
6曲目は「幻想曲ニ短調」、演奏は児玉桃さん。よかったです!硬質だけど透明感があり、幻想曲にぴったりっていう感じです。曲の冒頭のアルペジョは、ちょっとドビッシー風のように聞こえましたが全体としては、音楽が新鮮に聞こえました。
7曲目は、児玉さん、堀米さんのduo「ヴァイオリンとピアノのためのソナタK.378」。
ヴァイオリンとピアノの息がぴったり。2人ともとってもよく歌っていて体が熱くなる。
とりを務めるのは、「ピアノ三重奏曲K.542」仲道さんのピアノ、川久保さんのヴァイオリン、長谷川さんのチェロ。豪華な顔合わせだ。3人とも音がきれい。川久保さんはとても素直な感じの音が聞こえたように思う。集中力の高い演奏だった。今回豪華な出演者によってそれぞれに違った演奏を聞くことができ、楽しかった。そして、できるなら、アンサンブルしか演奏をしなかった演奏家の方のソロも聞いてみたかった。
海老澤敏 モーツァルト・レクチャー・コンサート
~モーツァルトの愛したヴァイオリン&ヴィオラと共に~
全体を通して、古楽奏法のためか、楽器によるものかは私にはわかりませんが、音色が暖かくて、耳に心地いい・・・
このコンサートは第一生命110周年、第一生命ホール10周年の記念として、海老澤先生のレクチャーとモーツァルトが弾いたヴァイオリンとヴィオラを使った演奏を聞くというものであった。当日の来場者は、事前申し込みによる無料招待。当日、ホールに入ると、ドイツ語をよく耳にした。今回の催し物の関係者も多くみえていたように思います
モーツァルテウム財団総裁の御挨拶の後、海老澤先生のレクチャーが始まった。正直なところ海老澤先生のレクチャーがもう少しあってもよかった。私は海老澤先生の話しを生で聞くのは初めてでどんな話しをしてくださるかということも楽しみの一つだったので少し残念でした。
でも、その分演奏を十分楽しめた。全体を通して、古楽奏法のためか、楽器によるものかは私にはわかりませんが、音色が暖かくて、耳に心地いい。
最初の曲は、「弦楽四重奏曲変ホ長調」とてもかわいい曲でした。第1楽章は、アレグロとありましたが落ち着いた感じで、ディベルティメントK.136第一楽章のメロディに似たメロディが聞こえてきました。第2楽章はしっとりしていてとてもきれいでした。
2曲目は、「ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲K.424」
これこそ、モーツァルトが使っていたヴァイオリンとヴィオラのとても美しい二重唱(奏)を聞くことが出来ました。特に第3楽章は短いけれど素敵で、最終楽章の変奏曲では、ヴァイオリンとヴィオラの対話が楽しかった。
第3曲目「弦楽四重奏曲ニ短調K.173」。モーツァルトが短調の曲を作曲するときは、特別な時だと聞いたことがある。この曲はどんな時のものなのかはわからない。でも、モーツァルトは長調の曲の中に短調の部分でも、「これはまいったなぁ」と思うような暗さを感じる時がある。この曲の最初の音はかなり重たい音で始まりたしかに暗い。だけど、どこかに希望が持てるような演奏(曲)のように思えた。第4楽章は、最初から「フーガ」であり少し現代音楽的な響きを感じた。そして、最後は炎が消えていくように曲が終わった。
後半は、オペラ「ドン・ジョヴァンニ」からの弦楽四重奏版(ヨーゼフ・キュフナー編曲)である。この曲は演奏者からの提案であったようです。以前、ショパンのピアノ協奏曲を弦楽合奏版のレクチャーコンサートの時、静岡文化芸術大学の小岩先生から、ショパンくらいまでは小人数で演奏できるように協奏曲の室内楽版があるという話を伺った。海老澤先生も、モーツァルトは、宗教曲、交響曲、オペラでも小編成の編曲版があり、「楽器で演奏しても歌のように聞こえますよ」といわれた。そうはいってもどうなんだろう?と思った。でも曲を聞いていて本当にそう思った。オペラファンの方には顰蹙(ひんしゅく)をかうかも知れないが、声で聞くよりもシンプルで暑苦しくないのがいい。もちろん演奏も素晴らしかった。第1、2幕から11曲の抜粋、アンコールで『シャンパンの歌』、「フィガロの結婚」から『もう飛ぶまいぞ、この蝶々」と盛だくさんでたのしかった。ホールを出て時計を見たら9時半を過ぎていた。でも疲労感はない。すばらしいレクチャーコンサートだった。
昼の音楽さんぽ 第7回
カルミナ四重奏団~クラシック・グレイテスト・ヒッツ~
更に、プログラムの楽曲解説が新鮮だった。
柔らかい表現でわかりやすくユーモアもあり、解説者の人柄が伝わってくるようだ。
630コンサート~充電の1時間~
カルミナ四重奏団と巡る音楽紀行
弦楽四重奏による音楽の世界旅行は、音楽の世界の発見
プログラムは、弦楽四重奏を発明、発展させたハイドン、シューベルトのウイーンから始まり、民族音楽の伝統に基づくスイスの作曲家ミュラーによる「ヘルヴェティア」、スペインのトゥリーナによる「闘牛士の祈り」と現代の2曲。それからボロディンのロシア叙情豊かなノットゥルノ、ラヴェルとプッチーニによるフランスとイタリアの輝かしく高貴なエスプリの世界に続く。最後にスイス人作曲家シュナイダーが、友人のカルミナ四重奏団のために作曲したという「日は昇り,日は沈む」の「ウエディングダンス」。作曲者によると「アマゾンの結婚のダンスを起源とし、ラテンのリズムをベースにした曲」ということで、演奏者からは題名にあるように東と西の文明の出会いを意識しているというメッセージがあった。このような何かわくわくとさせるプログラムの選曲は、音楽による世界旅行の公演主旨に賛同して、カルミナ四重奏団本人たちも楽しみながら選んで実現したそうだ。
各曲の演奏の前に,ビオラ奏者のチャンプニーから簡単な楽曲解説があり、作曲家の意図、演奏のポイントなどよくわかるガイド付きで音楽の世界の旅行が始まった。ミュラーの曲は,スイス伝統音楽の土の匂いというより、アルプスの空気の雰囲気は感じるがモダーンで洗練されたコスモポリタンの曲のようだ。現代音楽といっても聴く人に緊張を強いるようなことなく、弦楽四重奏の各パートがおしゃべりするように掛け合いながら進む。次から次へと流れ出てくるソフトで厚みがあり、透明な響きはとても美しかった。初めて聴く曲であるのになにか心が和む素晴らしい演奏で、演奏者とホールの聴衆の共感、共に心の底から楽しんでいるのが伝わってくるようだった。
トゥリーナの曲は、ファリャのように色彩豊かだが木管楽器のように明るく響き、スペインの昼下がりのシェスタの一時、光に満ちた乾いた空気をふるわせて遠くから聞こえてくる音のようで、スペインを肌で感じさせる印象的な曲だった。
世界旅行のハイライトともいえるボロディンのノットゥルノは、テーマ音楽に使われているその美しい旋律が、ヴァイオリン、ビオラ、チェロで繰り返しながら重なり合い、深く叙情の世界に沈み込んでいく。転調して変化していく陰影は奥深いが、暗く陰鬱な世界に落ち込まないようにチェロがその特徴的なリズムで支え、ため息が出るような旋律、特に第一ヴァイオリンの音はあくまでも輝くように美しい。カルミナ四重奏団の演奏は、単によく息があって室内楽としてまとまっているという美しさでない。演奏者が対話するようにモティーフを掛け合いながら進行し、4つのパートの音が一本の糸を手繰り寄せるように響き合いながら流れ出してくるようだ。ボロディンがロシアンロマンの歌の伝統の中で見いだし,弦楽四重奏で構成した音の世界、魂に深く共感し、その深いところから音が湧き出てくるのでこのように情感に満ち、人を感動させるのかと思った。
ラヴェルの曲は,「水の流れが光り輝くような音の響きを楽しんで下さい」という演奏前のコメントだったが、本当に弦楽四重奏のピッチカートのはじけるような響きが、鐘が鳴り響くというか、鈴をふるようにきらきら光輝くのには驚いた。プログラムの解説では,未だ世間に認められる前の若者の作品だが、ドビュッシーが「一音たりとも変えてはならない」と命じたという。その完璧な和声、瑞々しい響きはその後のラヴェルの作品を予告するもので、この曲にはガムラン音楽の影響、異国的なリズムの反映もあるという。
プッチーニの曲「菊の花」は、まさしくイタリア的な甘美な歌の旋律を、弦楽四重奏の厚みのある輝かしい響きに昇華したともいえそうな美しくも高貴な曲。ここでも第一ヴァイオリンは本当に輝かしく美しい音色だが、歌い過ぎたり全体をリードしているというのではない。ビオラの中音は音の芯を作り、幅のある重厚なチェロの音も、明るく溌剌と響き合う。旅はシュナイダーの「日は昇り,日は沈む」で遠い新世界まで拡がり、アンコールのシューベルトの弦楽四重奏の名曲「死と乙女」でウイーンに帰ってきた。
一時間余りの音楽による世界旅行は、新鮮な発見に満ちた何とも贅沢な音楽の世界の旅行だった。これは世界の音楽紀行というより、カルミナ四重奏団による音楽の世界の本質の案内であり、作曲家にとって弦楽四重奏という表現が、自分の中の伝統の音から、創意工夫により新しい音の世界を創造する最も身近で,ふさわしい方法であるらしいということを教えてくれるものであった。
不明なことながら,カルミナ四重奏団の演奏は今回生で初めて聴き、今までその本当の真価を知らなかった。贅沢な希望かもしれないが、スメタナ四重奏団やアルバン・ベルク四重奏団で何年も前に感動した記憶のある、モーツァルトのハイドンセットや、ベートーヴェン晩年の弦楽四重奏曲を是非聴いてみたいものだと思う。
630コンサート~充電の1時間~
カルミナ四重奏団と巡る音楽紀行
カルミナ四重奏団の演奏は、各奏者が弓を動かすと弦から美しい音がはじけるように出てくるのを、お互い楽しみながら聴き、弾いているようです。
630コンサートは,仕事帰りに合わせて6時半から始まるのに,少し遅れてしまいました。ホールの少し後ろ側の席に案内していただき座ると,丁度ビオラ奏者の女性演奏家が自分たちスイス人の作曲家ミュラーの曲の解説をしていました。歯切れのよいリズムに乗って演奏が始まると、ヴァイオリン、ビオラ、チェロの弦が重なり合ってホールに鳴り響き、その音の美しさにまず驚きました。シューベルトやブラームスの室内楽の曲は大好きなので、普段からよくFM放送やCDで聴いていますし、小さい室内楽向きのホールで、直ぐ近くで聴くこともありましたが、第一生命ホールのような広いホールで聴くのは久しぶりでした。弦楽四重奏の音は、シンフォニーのような色彩感でなく、モノトーンの墨絵にたとえられるようですが、艶やかで厚みのあるカラフルな音は本当に美しく感じました。
カルミナ四重奏団の演奏は、各奏者が弓を動かすと弦から美しい音がはじけるように出てくるのを、お互い楽しみながら聴き、弾いているようです。ヴァイオリンの艶やかな音も、ビオラのいぶし銀のような音も、チェロの柔らかいバスも、ホールの中で重なり合って響き渡り、自分の周りが美しい音で包み込まれているようでした。ステージからずいぶん離れていたのですが、演奏者の息づかいが伝わってくるように感じたのは、演奏の素晴らしさもさることながら、このホールの音響設計の素晴らしさによるものでしょうか。
ボロディンの曲は、いつも聴いているNHKのテーマ音楽で好きな旋律ですが、こんなにヴァイオリンの音が力強く艶やかに輝くのは新鮮な驚きでした。ヴァイオリン、ビオラ、チェロがおしゃべりしているように、互いに次から次へと引き継ぎながら、重ね合わせて進んでいくようで、その推進力が独奏では聞けないような音の輝きを感じさせるのかと思いました。
旅先で演奏会に行くのは海外旅行の大きな楽しみですが、疲れている時などつい居眠りして気がついたら拍手というのが一番の心配です。今回の世界音楽紀行は、そんな心配は無用で、スペインのトゥリーナはまぶしい光の中のトレドの街並み、ラヴェルはフランスの印象派の世界、プッチーニはヴェネチアやソレントで流れてくるイタリアの歌の記憶をまざまざと蘇らせるもので、居眠りの暇などありません。いろいろの国を鮮烈な印象を持って一時間余りで巡るというのは、何とも贅沢なことです。このコンサートを聴いた人はちょっとリフレッシュどころか、とても得した気分になって帰途についたのではないかと思いました。少し残念だったのは、もう少し聴いていたいと思ったことで、次の機会を楽しみにしたいと思います。
最後にこの演奏会のカルミナ四重奏団の出演料は全額、東日本大震災の被災地復興のために寄付されたということです。被災された方への慰めと復興支援の励ましの心が、演奏者からホールの人にも共有され、音楽で世界の人の心を繋ぐシンパシーの力を感じさせた素晴らしい演奏会でした。





