2006.3.6
クス・クァルテット
Homage to Mozart-モーツァルト生誕250年に寄せて
報告:井出春夫/会社員(TANサポーター)2階L2列46番
投稿日:2006.03.6
カルテット・ウェンズディをシリーズで聞き始めて約半年が過ぎた。最近は会社を早退するのもだいぶ慣れ、時間に余裕を持ってホールにつけるのが何となくうれしい。
電車の座席に座って居眠りをし、少し体力回復させることもできるし。そういえば合唱団に入っていた頃、たまに先生が冗談で、「合唱の練習のある日は、あまり一生懸命仕事をしてはいけない。体が疲れすぎていると合唱の練習にならないから」と言っていましたが、コンサートに来るにも、これは結構的を射ているのではないかと思う。 さて、今回は2回目の来日となるクス・カルテット。
私は、前回聞いていないので、今回が初めて聞くカルテットになる。曲は、前半がモーツァルト「弦楽四重奏曲第1番」と「アダージョとフーガ」の間にベルク「弦楽四重奏曲」を挟んだものである。「どうも、モーツァルトとベルクでは、不釣り合いではないか」と思っていたが、3曲を通して聞いてみると、なかなかベルクがいい味を出していて面白い。そして、後半のメインディシュはベートーヴェンの「ラズモフスキー第2番」である。
コンサートの最初の曲は「モーツァルト弦楽四重奏曲第1番」曲の冒頭、第1音めから、透明感のある暖かい音がホール全体に響いた。音楽が瑞々しく、自然に美しいメロディーがあふれ出てくる感じがした。
2曲目のベルクは、この曲の美しさが前面に出た素晴らしい演奏。曲の中に自然にひきこまれ、とても音楽が聞き易い。現代音楽というと、不協和音や必ずしも快い響きの音ではないことが多い。しかし、このカルテットの演奏を聞いていると、「現代音楽だからといって食わず嫌いにならないで。この演奏なら、現代音楽も親しめるでしょう。」と、話かけられているようであった。だから私には、不協和音が、曲を引き立てるためのスパイスのようにさえ感じられた。
前半最後の曲は、モーツァルト「アダージョとフーガ」この曲を個人的には、きっちりとした重い音楽と感じていた。でも、この演奏を聞いてると、フーガがとても楽しい音楽のように思えた。そして、曲がとても新鮮。この曲を聴き終わった時、私は2曲目のベルクよりも新しい音楽ではないかという印象を持った。
後半は、本日のメインディシュであるベートーヴェン。この2楽章がめちゃくちゃに美しい。強面のベートーヴェンのどこに美しくて透明なところがあるんだろうと思った。今度、ベストなんとかというCDを出すところがあったら、このカルテットでこの楽章を演奏したものを入れて欲しい。この曲のフィナーレはとても上品で熱い演奏であった。
アンコールは、バッハ「我は悩みの極みにありて」(オルガン曲。ライプツィヒコラール集より)である。
このカルテットを聞いて感じたのは、アンコールのバッハであれ、モーツァルトであれ、時代に関係なく、音楽が新鮮に聞こえた。クスカルテットをこのホールで聞けてよかった。
公演に関する情報
〈クァルテット・ウェンズデイ#46〉
クス・クァルテット
Homage to Mozart-モーツァルト生誕250年に寄せて
日時: 2006年2月22日(水)19:15開演
出演者:クス・クァルテット
[ヤナ・クス/オリヴァー・ヴィレ(Vn)、
ウィリアム・コールマン(Va)、フェリックス・ニッケル(Vc)]
演奏曲:
モーツァルト:弦楽四重奏曲第1番ト長調K.80
ベルク:弦楽四重奏曲作品3
モーツァルト:アダージョとフーガ ハ短調K.546
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第8番ホ短調作品59の2「ラズモフスキ-第2番」
クス・クァルテット
Homage to Mozart-モーツァルト生誕250年に寄せて
報告:上田淳子/2階R3扉R2列41番
投稿日:2006.03.6
カルテットは自分でも友人たちと演奏して楽しんでいるのですが、4人で作る音楽は大人数のオーケストラや、たった一人のソロとはまた違った音楽の世界が広がります。4人で一つになったり、2対2になったり、1対3であったり・・・。難しくもあり、楽しい空間です。ですが、今回のプログラムは全く聞いたことがなく、しかも予習ができなかったので、直感による感想ということになり、その楽しさをお伝えすることがきっと十分ではないと思いますが、お許しください。
<モーツァルト: 弦楽四重奏曲第1番ト長調 K.80>
この曲は、多数の弦楽四重奏曲を書いているモーツァルトの記念すべき一曲目のカルテットの曲です。1770年に作曲された、とあるので、1756年生まれのモーツァルト、14歳の時の作品です。今の日本でいえば中学生でこんな曲を作ってしまうとは、天才とは恐ろしいものです。
それを演奏するのは、たまたま聞きにきていた知人曰く、「上手すぎる」クス・クァルテットのンバーです。昨年12月に同じこの第一生命ホールで聞いたミロ・クァルテットとはまた違った音がします。ミロ・クァルテットはどちらかといえば、全体的に軽やかな印象でしたが、クスは第一音から、とても重厚な響きが聞こえたかと思うと、躍動感溢れる演奏にぐっと引き込まれました。
<アルバン・ベルク: 弦楽四重奏曲 op.3>
日本でも人気のあるアルバン・ベルク四重奏団の名前の由来となっているアルバン・ベルクの四重奏曲ですが、ベルクの曲自体初めて生で聞きました。予習の予習でCDのネット販売のサイトで、1分弱、一部を試聴したのですが、まったくそこからは全体もつかめず、いったいどんな曲かとある意味恐れていました。なんといってもベルクの時代の曲はいまだ私の中では"現代曲"なのですから。
案の定、チャイコフスキーや、ドヴォルザークのように、メロディーを追っていけるようなフレーズはありません。しかし、スルタスト(指を押さえ込まず、弦に触れただけの状態で弦を鳴らす奏法)を効果的に使ったりして、混沌とした音楽が広がっていきました。シェーンベルク、ベルクといった作曲家の無調、12音技法については、よく分かりませんが、この四重奏曲が作曲された数年後には第一次世界大戦が始まっていたことなどを思うと、作曲という手段を用いて、世相を表そうと考えたりしたのかしら、と少し想像が膨らみます。
<モーツァルト: アダージョとフーガ ハ短調 K.546>
モーツァルトにしては重い曲、という印象です。モーツァルトといえば、やはり軽やかで、明るくて、楽しい、というのが私の中での大雑把なイメージですが、短調の曲を聞くとき、天才に色々悩みはあったわけで、モーツァルトの影の部分を感じます。
<ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第8番ホ短調 op. 59-2「ラズモフスキー第2番」>
昨年のミロ・クァルテットはベートーヴェンのカルテットの初期の作品を一夜で一気に演奏したわけですが、これらはアマチュアでもなんとか演奏できる、と言われており、自分自身でも少し演奏したことがありました。だから、という訳ではありませんが、弾いていても比較的分かりやすく、楽譜もすっきりしています。ですが、このラズモフスキーあたりになると、かなり構成も複雑になり、聴いていても難しいのだろうな、と感じましたが、それがベートーヴェンの作曲家としての成長でもあるのでしょうね。それにしても、1stのクスさんはとても小柄なのに、ぐいぐい演奏を引っ張っていく姿には圧倒されました。
ところで<クァルテット・ウェンズデイ>には、いつもカルテットを楽しむために、とプログラムに手作りのサブテキストが添えられています。そこに、この曲の2楽章にはBACHの名前が織り込まれている旨が書かれていました。折角のサブテキスト、そこを聞き逃すまい、と必死に聴いていたお蔭か、BACHを聴くことができました。テキストのお蔭で、ベートーヴェンのいたずらに楽しむことができてよかったです。
さて、最後に。演奏内容とは関係のないことですが、このクス・クァルテットも、プログラムのエッセイにもありました、クスと同じくアルバン・ベルク四重奏団に学んだベルチャ・カルテットも、1stバイオリンが女性で、その女性の名前をグループの名前をしているのは、同性として、ちょっと嬉しくもあり、益々の活躍を期待せずにはいられません。
公演に関する情報
〈クァルテット・ウェンズデイ#46〉
クス・クァルテット
Homage to Mozart-モーツァルト生誕250年に寄せて
日時: 2006年2月22日(水)19:15開演
出演者:クス・クァルテット
[ヤナ・クス/オリヴァー・ヴィレ(Vn)、
ウィリアム・コールマン(Va)、フェリックス・ニッケル(Vc)]
演奏曲:
モーツァルト:弦楽四重奏曲第1番ト長調K.80
ベルク:弦楽四重奏曲作品3
モーツァルト:アダージョとフーガ ハ短調K.546
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第8番ホ短調作品59の2「ラズモフスキ-第2番」