音楽のある週末 <弦楽器の魅力>
第2回 南 紫音ヴァイオリン・リサイタル
そして、彼女を聞くならやはりライブだろう。
南紫音というヴァイオリニストは何回かテレビで見て知っていたが、あまり印象のない演奏家のように思っていた。でも「一度くらい生で聴いておこうか」時間もあるし、今度新しく始まった「音楽の週末」という土曜日のコンサートシリーズもちょっときになるし。とても気楽な気持ち、半ばひやかしのような気持ちでホールにむかった。ホールにはいってみると、思ったよりもお客さんが少ない。土曜の午後はコンサートの激戦日でやはり分散してしまうのだろうか?などと考えながら開演を待つ。
第1曲目のイザイの無伴奏第6番では、「音がきれいな人だなぁ」と思ったくらいだが、2曲目以降、彼女の音楽に魅せられてしまった。
モーツァルトのヴァイオリンソナタ28番と25番。とても自然な歌い出し、美しい音それでいてのびのび弾いている。南紫音という人は、メロディを歌うのがとても上手い。彼女のヴァイオリンの音はリート歌手の歌のように思えた。後半は、ショスタコーヴィチ、プロコフィエフ、ラヴェルという近代作曲家の作品がとりあげられた。これらの作品は少しとっつきにくさがあるけれど、曲がとても聞きやすく、曲のよさを改めて感じさせてもらえた。このような曲を聞いていてもヴァイオリンの技術が前に出てこないのがいい。
江口さんとの共演も素敵だ。江口さんの音は時にきらきら輝いて、「のだめカンタービレ」の、のだめが弾いている時にピアノからあふれ出てくる音を表すいろんな形のCGが見えるよう。江口さんと南さん、何だかお互いとても弾きやすそうに感じた。
音の大きさも決してデカイ音がしない。楽譜を見たわけではないので何ともいえないが、私の聞いている感じでは、フォルテ1個が最も大きい音。それでも、フォルテ2個のように感じられる時もある。音楽がとても上品である。ホールの響きを考慮してダイナミックスを押さえ気味だったのかどうかはわからない。でも、このホールの響きにはぴったりだったと思う。この演奏会が素晴らしかったのでそう思ってしまったのかも知れないけど、このヴァイオリニストは、大きなホールでガンガン弾くよりも、何だか第一生命ホールみたいなあまり大きくないホールで弾いた方が彼女のよさがわかるように思う。そして、彼女を聞くならやはりライブだろう。
また聞いてみたい演奏家である。そしてその時はどんな風に変わっているだろう。
公演に関する情報
音楽のある週末 <弦楽器の魅力>
第2回 南 紫音ヴァイオリン・リサイタル
日時: 2010年7月24日(土)14:00開演
出演者:南 紫音(ヴァイオリン) 江口 玲(ピアノ)
演奏曲:
イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第6番ホ長調op.27-6
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第28番ホ短調K.304(300c)
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第25番ト長調 K.301(293a)
ショスタコーヴィチ(ツィガーノフ編):4つの前奏曲op.34-10,15,16,24
プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ第2番ニ長調op.94bis
ラヴェル:ツィガーヌ