〈クァルテット・ウィークエンド2010-2011“Festa”〉
ミロ・クァルテット 第4日
でも、そのうちに何故ドヴォルザークがトリなのか分かってきたような気がした。
地下鉄大江戸線、勝どき駅を初めて降りる。
トリトンスクエア、もう10年位前かしら、開発されて話題になった街に初めて足を踏み入れた。運河に架けられた動く歩道のあるトリトンブリッジにもびっくり。完全な御上りさんだ。だから第一生命ホールも初めて。土曜日で少し閑散としたロビーからエスカレーターでホールへ。客席数800に満たないこぢんまりとしたホール。ステージとも親和性があって雰囲気もいい。
今日はピアノ五重奏曲が2曲。ブラームスとドヴォルザーク、どちらも大好きな曲。でも演奏会で聴くのは初めてか...。プログラムの一曲目はブラームスから。日本人的感覚(?)ではブラームスがトリのような気がするけど...。
ブラームスの演奏が始まってびっくり。気迫溢れる演奏。体が躍りガッツ溢れるプレイって感じ。身体中から音楽が迸るようで、見ていて気持ちがいいし、説得力がある。最近こんな力の入った演奏にはなかなかお目にかかれない。そういえば弦楽器の4人の椅子も背もたれのないピアノ椅子、背もたれに凭れて演奏するような横着な演奏ではない。また、譜面台も低くして演奏者がよく見えるようにしている、サービス満点。
また5人の音のバランスが秀逸。セカンドヴァイオリンやヴィオラの音もしっかり前に出てきて気持ちがいい。チェロも張りのある素晴らしい響き。ピアノが入ると弦楽器の音がけされるかなぁ、なんて不安は全くの杞憂だった。
1楽章が終わったところで思わず拍手したくなる。
でも、そのうちに何故ドヴォルザークがトリなのか分かってきたような気がした。ブラームスも凄いけれど、一人一人の音が凄くきれいで(ちょっと色彩的?)、ドヴォルザークを歌う方がオハコなのかもしれない...なんて気がしてきた。きっとドヴォルザークの歌を、これでもかというくらい聴かせてくれるのだろう。
それにしても凄い気迫のブラームス。4楽章の終盤では身体中にゾクゾクっと電気が走った、こんな演奏会も久しぶり。
さて休憩をはさんで、ドヴォルザークの演奏。期待通り、まるで彼らの血が歌っているよう。幅の広い表現力で、深く心の底を抉るようなところから軽妙に駆け抜ける(疾走といった方が適切か)ところまで自由自在に聴衆の心を揺さぶってくれる。
歌がヴィオラからヴァイオリンへ、あるいはヴァイオリンからチェロへと重ね合わせるように引き継がれていく。ヴァイオリンもヴィオラもチェロもみんな歌がとてもきれい、心に沁みていく。
野原さんのピアノも凄い。どれだけ合わせる機会があったのか知らないが、彼らの世界と見事に絡んでいる。
そういえば、ドヴォルザークでファーストバイオリンが入れ替わった。ブラームスの時は山本サンディー智子さんがファーストだったのにドヴォルザークではダニエル・チンさんに交代している。プログラムではダニエル・チンさんの名前が先になっているから本来は彼がファーストなのだろうか。でも、山本さんのファーストでも全く違和感がなかったから凄い底力のあるクァルテットなんだと思う。
本当にひとつの楽章が終わるごとにブラボーと拍手したくなる演奏。
演奏が終わると心のこもった熱い拍手、やっぱりみんな大感激だったのだ。
このミロ・クァルテットのシリーズは今回が最後。もっと早く知っていればと悔やまれる。他の曲も聴いてみたかった、残念。
終演後、ホールを後にして土曜日の夕方の街に出る。折角ここまで来たのにこのまま帰るのは忍びない。次回は月島でもんじゃでも食べて帰ろうか。
公演に関する情報
〈クァルテット・ウィークエンド2010-2011“Festa”〉
ミロ・クァルテット
《2人の巨人II ピアノ五重奏曲》
日時: 2010年6月5日(土)14:00開演
出演者:ミロ・クァルテット
〔ダニエル・チン/山本サンディー智子(ヴァイオリン) ジョン・ラジェス(ヴィオラ)
ジョシュア・ジンデル(チェロ)〕
共演:野原みどり(ピアノ)
演奏曲:
ブラームス:ピアノ五重奏曲ヘ短調op.34
ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲イ長調op.81 B.155