クラシック はじめのいっぽ Vol.19
チェロ&ピアノ~石坂団十郎&マルクス・シルマー~
今回は、チェロとピアノで全曲、そしてベートーヴェンの作品 だったので、とても楽しみにしていました。
チェリストの石坂さんの座った場所は、ピアニストのすぐ横で、 寄り添うような感じで座っていました。通常、あまり見たことのない風景が、まず印象的でした。そして今日の演奏が楽しみになってきました。
プログラムの解説によれば、この日の選曲は、ベートーヴェンが 20代に書いた作品が中心となっているとのこと。ベートーヴェン は、チェロの曲でありながらも、ピアノが大活躍していることが多 いので、ついついピアニストに注目してしまいます。
その期待以上に、マルクス・シルマーさんのピアニシモ (pp)には、震えがとまりませんでした。そして、ソナタで は、力強くチェロを誘導していると思いきや、ときおり、相手を気遣っているような雰囲気で振り返る。そんなとき、チェリストも、堂々と弾いていながら、ピアノの方に身を傾けている感じが微笑ましく感じました。寄り添いながらの二人の様子は、奏でられる音に表れていて、ここちよい雰囲気が伝わってきました。
変奏曲では、一つ一つのモチーフが短く次々とうつろっていくので、その変化を追いかけているのが楽しかった。また、ヘンデルの主題による変奏曲の中の短調の時のチェロは、楽器そのものの味わいを響かせ、最後の変奏では、チェロとピアノの掛け合いが見事でした。
ところで、このシリーズのもうひとつの楽しみは、演奏者によるお話なのですが、アンコール曲のタイトルをアナウンスするまで、今回ありませんでした。珍しいことですが、プログラムの楽しさを半減させるほどではなかったように感じます。その要因は、緊張感をもって聴くことができ、そして全曲ベートーヴェンの作品だったことも関係していると思います。アンコールが仮になかったとして も、それで満足なほどの充実感がありました。
そんな印象でしたが、お待ちかねのアンコールは、シューベルト「アルペジョーネ・ソナタ(第2楽章)」。チェロらしい柔らかな音でメロディーが流れてきて、「いいコンサートだった」とひとり、にっこりしてしまうほどの出来映え。違う作品も聴いてみたいし、何年か後に再び、本日の二人のベートーヴェンを聴く機会を、このホールで持てることを期待してしまいました。
公演に関する情報
<ライフサイクルコンサート #47>
クラシック はじめのいっぽ Vol.19
チェロ&ピアノ~石坂団十郎&マルクス・シルマー~
日時: 2010年2月10日(水)11:30開演
出演者:石坂団十郎(チェロ) マルクス・シルマー(ピアノ)
演奏曲:
ベートーヴェン:モーツァルトの「魔笛」の「娘か女か」の主題による12の変奏曲ヘ長調op.66
チェロ・ソナタ第3番イ長調op.69より第1楽章(初稿版)
ヘンデルの「ユダ・マカベア」の「見よ勇者は帰る」の主題による12の変奏曲ト長調WoO.45
チェロ・ソナタ第2番ト短調op.5-2