クラシックはじめのいっぽ チェロ編
平日の、しかも昼間のコンサートに行くのはもしかしたら人生で始めてのこと。さて、どんなコンサートになるのやら。チェロを弾く友人を誘って出かけてみると、開場前のロビーには、ベビーカーを押したママさんの姿もチラホラ。
一曲目は黛敏郎(昔、「題名のない音楽会」の司会をしていらっしゃいました)の『BUNRAKU』。初めて聞いた曲でした。ピアノ伴奏の無い、いわゆる無伴奏の曲ながら、ピチカートでは三味線を表していたのか、そのピチカートが指板に当たる音は、正に撥で弦を弾いているような音がしました。早いパッセージは義太夫が語るが如く、まるで本当に文楽の舞台を見ているような感じを味わえる曲でした。20世紀のチェロ曲は面白い、の一言につきました。
その後、藤原さんはチェロが、もともとは伴奏に使われた楽器であること、そして、メロディーを弾くようになっていったことなどチェロの歴史の説明をしながら、ヘンデルの『ラルゴ』、バッハの『アリオーソ』、『音楽の捧げものからのコラール(一般的には『主よひとの望みの喜びを』などといわれていますが)』、『無伴奏チェロ組曲第1番より前奏曲』を演奏されました。
演奏曲はヘンデルから、どんどん新しい時代に進んでいくのですが、バッハの後、プログラムには無いベートーベンのソナタを触りの部分だけ弾いてくださいました。そういえばベートーベンには、チェロでさっと弾く小品が無いような・・・。
その後はエルガーの『愛の挨拶』、フォーレの『シシリアーノ』、サン=サーンスの『白鳥』と曲名を知らないまでも、誰もが耳にしたことがあるであろうチェロの名曲が続きます。そしてリストの『忘れられたロマンス』、チャイコフスキーの『感傷的なワルツ』、ドヴォルザークの『わが母の教え給いし歌』で締めくくられました。
藤原さんは、曲の合間合間にお話を交えてくださったのですが、決して話すのが得意なご様子ではありません。それでも、チェロという楽器の素晴らしさを伝えようと、一生懸命に話してくださったのも印象的でした。
一日の中で、人は一時間又は60分という時間をどのように過ごしているでしょう。仕事に没頭していたり、テレビを見ていたり、お散歩をしていたり、色々なことができるでしょう。その一時間、たまには音楽に浸ってみるのも素敵な時間の過ごし方だなぁ、と思わせる「クラシックはじめのいっぽ」。
来年の4月からはシリーズ化され、続々と大物の方も登場される予定となると、「はじめのいっぽ」の人ばかりに楽しんでいただくわけにはいかない!とも思ってしまった私でした。
公演に関する情報
〈ライフサイクルコンサート#23〉
クラシックはじめのいっぽ チェロ編
日時: 2007年5月31日(木)11:30開演
出演者:藤原真理(Vc)、倉戸テル(Pf)
演奏曲:
黛敏郎:BUNRAKU
ヘンデル:ラルゴ
J.S.バッハ:カンタータ第156番からアリオーソ/無伴奏組曲第1番から前奏曲
エルガー:愛の挨拶
フォーレ:シシリアーノ
サン=サーンス:白鳥
リスト:忘れられたロマンス
チャイコフスキー:感傷的なワルツ
ドヴォルザーク:わが母の教え給いし歌