プレアデス・ストリング・クァルテット
ベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会Ⅰ
プレアデス・ストリング・クァルテットを聞いて。
祝日ということで、この日の開演は午後3時のマチネ。明るい時間にホールを訪れるのは、とても久しぶりのこと。いつものクァルテット・ウェンズデイと比べると、お客様が多いような気がしました。それは、祝日だからでしょうか、それともメンバーの顔ぶれによるものか・・・。
1曲目は弦楽四重奏曲へ長調、op.14-1。もとはピアノ・ソナタで、ベートーヴェン自身による、編曲とのこと。そういえばベートーヴェンのピアノ曲の中には交響曲第3番「エロイカ」の変奏曲がありますが、交響曲を知っていると、その編曲具合にとても楽しく聞けます。
ベートーヴェンはとてもアレンジが上手な作曲家だったようですが、この曲については原曲を知らないので、そのアレンジのほどは分かりませんが、出だしのみなさんの音の美しいこと。これは弦楽器ならでは。ピアノでは出せない音色です。松原さんの演奏はこの日初めて聞いたのですが、意外にも(大変失礼な言い方ですみません)とても繊細な音で演奏されるのだという驚きと共に、他のメンバーの方々が松原さんに寄り添った演奏をされているのに感心いたしました。
2曲目は初期の第1番へ長調 op.18-1。
特に第1、2楽章は演奏経験があったので、ボーイングも見ながら、興味深く聞かせていただきました。1楽章は緊張感を保ちつつ、軽快な演奏で、やはりプロの方は違う!とただただ驚くばかりでした。また2楽章は美しいだけに、ややもするともたれてしまうのですが、先に進めつつ、歌っていけるという、素晴らしい間の取り方に4人の息の合ったところを見せて(聞かせて?)いただいた気がしました。
休憩をはさみ、最後の曲は、第9番ハ長調 op.59-3「ラズモフスキー第3番」。
1楽章、冒頭の減7の和音。アマチュアなら弓を持つ腕が震えてしまう、そんな雰囲気の中でこの曲は始まります。会場の静寂した空気の中で、この和音を響かせるのは、非常に勇気が要るような・・・。でも、プレアデスの方は、もちろんそんなことに動じることはなく、整然とこの和音をならし、軽快な音楽へと導いていってくれました。2楽章はチェロのピチカートがポイントですが、チェロの山崎さんはとても丁寧にピチカートを弾かれていました。チェロという楽器の特質かもしれませんが、山崎さんは他の曲の中でも、時に背中を曲げ、小さくなったり、背筋を伸ばして堂々とされて弾かれたり、と見た目ににもその場の音楽が伝わってきました。美しい3楽章に酔いしれているうちに、4楽章があっという間に終わってしまいましたが、この曲は聴き慣れると、とても耳に馴染み、頭にメロディーが浮かんできます。そんな所が人気のある要因なのでしょうか。
内声部の2ndバイオリンとヴィオラのお二人にも是非触れておきたいのですが、2ndの鈴木さんは、足を怪我されての出演で、車椅子で舞台にいらっしゃり、椅子に移られて演奏されていましたが、バイオリンもある程度足で踏ん張らなければ大変演奏し辛い部分があり、いつもと勝手が違う状況の中で、よく頑張られたなぁ、と思いました。またヴィオラの川崎さんは、まさにいぶし銀の演奏というべきか、目立たない音域の中、旋律ともなれば、朗々と歌わせるあたりはヴィオラ奏者の鑑だな、と思わずにはいられませんでした。
ベートーヴェンのクァルテットをこれから全曲演奏してくださるとのこと。これから益々息の合ったベートーヴェンを聞けるかと思うと、楽しみで仕方がありません。
公演に関する情報
第一生命ホール5周年記念コンサート
〈クァルテット・ウェンズデイ#55〉
プレアデス・ストリング・クァルテット
ベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会Ⅰ
日時: 2007年3月21日(水・祝)15:00開演
出演者:プレアデス・ストリング・クァルテット
[松原勝也/鈴木理恵子(Vn)、川崎和憲(Va)、山崎伸子(Vc)]
演奏曲:
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第1番へ長調作品18の1、同へ長調Hess.34、
同第9番ハ長調作品59の3「ラズモフスキー第3番」