実は,大人も弾いてみた~い 弦楽器体験Vol.3(for TANサポーター)
報告:齋藤健治/月島在住・編集者/TAN会議室
投稿日:2007.03.31
「松ヤニを用意しなくっちゃね」
「弓を動かす方が,よく塗れますよ」
サポーターによる,サポーターのための"弦楽器体験"第3回目が始まった。
1月からスタートし,毎月行われてきたこの企画も本日が最終日だ。
ピアノ,ギター,ホルンを演奏したことはあっても,ヴァイオリンやヴィオラは初めて,または全くの楽器初心者のサポーターが参集。当初はケースから楽器を出すことさえ一人きりではできなかった受講生が,今ではすっかり慣れた手つきでネックに触れている。
講師を務めているのも,同じくサポーター。2人のアマチュア・ヴァイオリニストだ。そのうちの1人はヴィオラ指導も兼ねる。さらに,2人の友人であるチェリストも参加。
* * *
今日の受講生は5人。
プログラムは調弦から始まった。
チューニングは前回も取り組んでおり,その成果が「弦を貼り過ぎないようにしないと」などといった声に反映されている。
受講生の中からはチェロに挑戦する者も現れてきた。今日が初めてのチャレンジだという。
音が合ったところでハ長調の音階をたどる。スケールを上昇し,そして下降。
「指の感覚を覚えてください」
「上るのは簡単だけれども,下るのは難しいでしょう」
「ほらほら,きちんと音をとらないと,速いパッセージが弾けませんよ」
1回のレッスンは1時間半。今日が3回目なので,ここまでに費やした時間はわずか3時間たらず。まったくの初心者がこまでたどりついた。
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「さあ。『家路』をみんなで弾きましょう」
各パートごとに分かれ,ドボルザークが部屋の中にこだまする。
多少音が揺れるが,温かなメロディ。
「どうせだったら,コンサート形式で合奏しましょうか」
「そうそう。何事も形から」
「それでは第一ヴァイオリンはこちら,チェロは向こうへ」
「観客もいるわねえ」
「TANの事務局の方に聴いてもらいましょうか」
事務局長と制作スタッフが呼ばれて即席演奏会がスタート。コンサート・ミストレス役だっている。
「ブラアヴォ! アンコール!」
「すみません。ネタはこの曲しかないんです」
笑顔に囲まれ,"サポーターによる,サポーターのための弦楽器体験"は成功裏に終了した。
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「子どもたちへの体験活動を手伝っているうちに,実は大人だって楽器を弾きたいんじゃないかって気づいたんですよ」という,サポーターのちょっとしたアイデアから始まったこの企画。練習のプログラムも,教材も,すべてサポーターの話し合いから創られていった。
「いろいろな人たちと音楽が幸せに出会う機会をつくりたい」と願うTANの取組みは,このような"アートを通した人と人"との関わりも,また新たに生みだしたのである。
※弦楽器体験では,JPモルガンならびに菊池サポーターよりご寄贈頂いた楽器を使用いたしました。
公演に関する情報
実は,大人も弾いてみた~い 弦楽器体験Vol.3(for TANサポーター)
日時: 2007年3月17日(土)