第7回「パオロ・ボルチアーニ賞」国際弦楽四重奏コンクール
優勝者ワールドツアー
パヴェル・ハース・クァルテット
報告:藤井利勝(サポーター)
投稿日:2006.07.19
パヴェル・ハース/クァルテット演奏会を聴いて
演奏者が舞台に登場した時の感想は"4人とも格好いいなあ、動作がキビキビしており若いなあ"でした。2人のバイオリニストの女性のピンクとクリーム色のドレスも決まってエレガント。後で聞いてみると演奏者達は、22歳~28歳とのことでした。モーツアルト:弦楽四重奏曲第19番ハ長調「不協和音」
第1楽章・・序奏のアダージョの不協和音に続くアレグロ、モーツアルト特有の軽快でリズミックな旋律が浮き浮きさせる。4人の音のバランスがとても良い。
第2楽章・・キレイな和音を背景に、美しい第1バイオリンのメロデイで始まる。とても甘美なメロデイ。チェロが補完する形で進む。森の湖でゆったりと至福な時を過ごしているような錯覚を覚える。ホールの音の良さを十分活かした緩徐楽章。
第3楽章・・強弱のハッキリしたメヌエットと短調のトリオ。モーツアルト特有な哀調を帯びた第1バイオリンのメロデイが心に沁みる。4人のリズムはまさにピッタリ。
第4楽章・・早いリズムと和音をベースに第1バイオリンのメロデイが惹きつける。4人の息がピッタリ合い楽しいモーツアルトである。
曲を通じて、若々しい、瑞々しい演奏という感じでした。
パヴェル・ハース:弦楽四重奏曲第2番op7
第1楽章・・心の底から訴えるような叫びが聞こえるようだ。何か引き込まれる感じ。
チェロの叩きつけるようなピッチカートも呪縛から開放される雰囲気である。作曲家の
数奇な運命を示唆させる。チェロのメロデイも強い主張を訴えているようだ。一転、静かな穏やかな安定した時間。その後強奏。魂が揺さぶられる。
第2楽章・・途中激しく日本の祭バヤシのようなリズム。グリッサンドが続く。後半激しく終わる。若さ溢れる演奏である。
第3楽章・・重苦しいメロデイで何かの不条理を訴えている感じ。静かに終わる。チェロの旋律の余韻が続く。
第4楽章・・体力が勝負の楽章といった感じ。われわれは生きているんだ、存在しているんだと主張しているようだ。中間でヴィオラの訴えかけるメロデイ、それを受けてのチェロの重々しい旋律が胸を打つ。
これは、まさに主張の音楽という感じがしました。現代音楽についてまわる取っ付き
くさは、感じられませんでした。もちろん、私には初めての曲でしたが。何かを発見したような、満ち足りた思いになりました。作曲家の名前を冠したこのクァルテットに最も相応しい曲なんだと認識しました。この曲は、日本でも公演回数が少ないようですが、
これを機にフアンが増えることでしょう。
ヤナーチェク:弦楽四重奏曲第2番「ないしょの手紙」
この曲は、ヴィオラがとてもいい役割をしています。また、4人が均等な役割分担という感じです。この曲で、弦楽器の技法スル・ポンテイチェロ(駒の近くで弾く奏法)を知りました。とても新鮮な感じでした。曲のタイトルは「ないしょの手紙」ですが、
中味は激しくないしょとはいかないようでしたが。
ヤナーチェクは、74年の人生でオペラ11曲、管弦楽曲17曲、ピアノ曲25曲、
その他教会音楽・合唱曲を含めて130曲近い作曲をした20世紀の大作曲家の一人です。弦楽四重奏曲は2曲だけ。私もオペラ「イエヌーフア」をTVで観たほかは、どちらかといえば敬遠していましたが、この演奏で少し身近になりました。
このクァルテットは、世界の弦楽四重奏団の中で最難関といわれる「パオロ・ボルチアーニ国際弦楽四重奏コンクール」で優勝しただけに、卓越した技術と表現力にとても満足したひと時でした。また聴きたい。
これだけの若さに溢れた素晴らしい演奏を、もっと多くの日本の聴衆に聴いて欲しい。
このクァルテットは、今後大きく羽ばたいていくこと請け合いです。
演奏終了後のレセプションに、演奏者たちが気さくに参加し参加者達と談笑していたのも、ほほえましい光景でした。司会者の軽妙なやり取りに陽気に反応していたのも、若い演奏家だからでしょうか。身近に接してみて感じたのは、みんな背も高く、スタイルもいいし魅力的でした。あらためて、楽しい一夜でした。
公演に関する情報
〈クァルテット・ウェンズデイ#49〉
第7回「パオロ・ボルチアーニ賞」国際弦楽四重奏コンクール優勝者ワールドツアー
パヴェル・ハース・クァルテット
日時: 2006年6月14日(水)19:15開演
出演者:パヴェル・ハース・クァルテット
[ベロニカ・ヤルツコヴァ/カテリナ・ゲムロトヴァ(Vn)、
パヴェル・ニクル(Va)、ペテル・ヤルシェク (Vc)]
演奏曲:
モーツァルト:弦楽四重奏曲第19番ハ長調K.465「不協和音」
パヴェル・ハース:弦楽四重奏曲第2番作品7"オピチー・ホリ"から
ヤナーチェク:弦楽四重奏曲第2番「ないしょの手紙」