エルデーディ弦楽四重奏団 メンデルスゾーン全曲演奏会2
報告:佐々木久枝(中央区勤務・2FR1-37番)
投稿日:2006.06.21
全曲演奏第1回は聴けなかったものの、この時の評判とスケジュールが合った事も助けとなって今回は聴く事が出来ました。
第2番イ短調
メンデルスゾーン節のメロディラインの美しさもさることながら、めまぐるしい転調や内声部の饒舌な歌い口に初めから引き込まれていきました。
第2楽章ではアダージオの静かな歌い上げる場面や短調で時間差で入ってくる部分の歌が際立っていました。
フィナーレでは歯切れ良さと密度の濃さが相まっており、第1ヴァイオリンのカデンツァが素敵でした。あれだけ長いものをよくぞ集中力を切らさず
に、と驚かされました。
第3番ニ長調
第1楽章では狩の歌を思わせる快活さがよく弾き出されていました。第1ヴァイオリンの歌によどむような3人、転調部分での伴奏が軽やかなのに
奥深いものだったのは、やはり彼らの経験がなせるわざだったのでしょうか。チェロの対旋律と第1ヴァイオリンのメロディが掛け合っており、
ブラームスのヴァイオリン協奏曲のアンサンブルを思い起こさせました。
途中短調になる部分の第1ヴァイオリンのソロが連綿と続くメンデルスゾーン節を聴かせていました。
牧歌風のチェロはよく響かせていました。第4楽章では快活な第1ヴァイオリンに始まり途中順番にパートが重なり合っていく部分が聴き
所でした。低音パートの2名が一気に駆け上がってくる部分は良い意味でスリリングでした。
第6番へ短調
メンデルスゾーンにとっては「白鳥の歌」になったこの曲はさざめくような弾き始めに第1ヴァイオリンが悲痛な叫びを上げて始まりました。
ちょうどここでベートーヴェンの熱情ソナタを思い浮かべていましたが、明らかに違うのは、せまい音域をさまよいたたみかけるように付点音符。
もしかしたらここはメンデルスゾーンの慟哭の場面だったのでしょうか。タンタターンとむせび泣くようなヴァイオリン、チェロの対旋律に他の
3者が伴奏を刻む部分はどれもあの明朗なメンデルスゾーンとは一線を画したもの。緊張感を帯びてひっきりなしにひた走る部分やユニゾン部分
はタテに揃っており、晩年の時の刻みを物語るよう。第2楽章はチェロが主導権をとりシンコペーションの同じようなリズムでタテに突き進むような
展開。ここでシューベルトの即興曲(後半の方)を思い出しました。第3楽章は穏やかな彼岸の境地を表すかのようなチェロの響きが印象的。
他の3者はレクイエムのリベラメを聴くような演奏でした。ヴァイオリンのメロディと中声部の裏拍とチェロの対旋律はその多彩な響きの絵の具を
用いて音の絵を描き出そうとしたのではないかと思わせました。フィナーレはアパッショナータ・フィナーレとでも呼べそうなもので、展開部での
細かい動きとややオリエンタルな部分と第1ヴァイオリンの激しいカデンツァとがいわば入り乱れて弾き進められていました。
ひときわ大きな拍手と多くのブラヴォーの声に包まれての本編に続いてアンコールは作品18の4つの小品からカプリチョ。
いわば大仕事を遂げてほっと肩の力の抜けた、こちらもまた味わいのある演奏でした。
本番後にお会いした皆さんはどなたも気さくに(何故か恐縮!?)サインを下さいましたが、まだまだこれからも開拓しますよ!!との頼もしいお言葉を
伺う事が出来、聴き手としても大変幸福なひとときでした。ホールもこの4名のように更にその響きを熟していって欲しいし、このホールに集う
仲間の一人として誇らしくも感じた当夜でした。
公演に関する情報
〈クァルテット・ウェンズデイ#48〉
エルデーディ弦楽四重奏団 メンデルスゾーン全曲演奏会2
日時: 2006年5月31日(水)19:15開演
出演者:エルデーディ弦楽四重奏団
[蒲生克郷/花崎淳生(Vn)、桐山建志(Va)、花崎薫(Vc)]
演奏曲:
メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲第2番イ短調作品13、
第3番ニ長調作品44の1、第6番へ短調作品80