育児支援コンサート~子どもを連れて、クラシックコンサート
報告:佐々木 久枝(会社員・華道教授)
投稿日:2006.03.30
前半:子供音楽スタジオにTANサポーターとして参加。
今回の持ち場は打楽器コーナー。音楽集団団員の慮さんと一緒に4才の子供達と体験するとんちぎ組(絵本のキャラクター)。それにしてもこの怪物クン、何ともユーモラスな顔だなとつぶやきつつ会場のリハーサル室に向かいました。軽い打ち合わせとお昼を済ませていよいよ本番。
慮さんは穏やかな語り口かつ丁寧に我々サポーターに一つ一つ説明して下さいましたが、これが演奏に入ると一気にテンションアップ。三十数名の子供達を前に「模範演奏」をなさった時はすっかり音の世界に入っていて、子供達も身を乗り出して聴き入っていました。
スタジオに来た子供達と体験タイム開始まで折り紙や絵本読み聞かせで一緒に過ごしましたが、皆ぐずる事なく待ってくれました。
今回は何故か絵本読み聞かせが多く、その昔多く当てられた国語や英語のリーディング光景を追体験。更に折り紙遊びでは私達の知らない折り方を教えてくれたりする子供達もいて、最初からたじたじ。
「太鼓の先生」慮さんが登場し、サワリ部分を閉め太鼓で打ち始めると、さっきまで騒いでいた子供達がバチの一つ一つの動きに見とれていました。更には謡曲らしい掛け声にも聴き入っていた様子。おもむろに太鼓の先生はボードに書いた「大きな古時計」のリズム(ターンとかタタタンとか)を膝打ちで練習。それにしても子供達の飲み込みの早い事、早い事!!以前合唱でリズム読みの練習経験のある私の方が、実は間違えたりしました(大汗)。
ここで慮さんは楽器毎に3つのリズムを振り分け、早速実際の楽器体験へ。今回オルゴールが大人気で、一緒のスタジオだった他サポーターさんのお話では、「何が何でもオルゴール!!」という子供達が何人もいたそうです。ちなみに私は木鉦担当だったのですが、ちょうど碁石を入れる入れ物の大きさ。これを体験した皆は非常にリズム感が良くて感心してばかりでした。お隣の大太鼓は力いっぱい打つ子供達がいて、慮さんも大わらわ。途中で御自分で見本演奏なさる場面もありました。大騒ぎになりつつも皆で「大きな古時計」を2回も3回も通しているうちに
皆それぞれの楽器の世界に「入り込んで」いました。よく子供は吸収が早いと聞きますが、自然と集中しているうちに自分の中に音なり形なりしみ込んでいくのでしょう。大人の部(第1部コンサート)の後にお迎えに来た親御さん達の前で子供達は生き生きと歯切れよい打楽器アンサンブルを披露していました。こんなに夢中でやっているんだ!!と驚きとも嬉しさともいう表情の親御さん達の様子が印象的でした。その後楽器を前に記念撮影しながら「これやったのー!!」「スゴイ大きな音がしたよー」と話す子供達の姿には嬉しくなりました。
後半:2F C1列-3番
さて、片付け後は生き生きとしたスタジオでの興奮覚めやらぬまま今度は客席へ。ロビーやビュッフェではついさっきまでのスタジオ体験を興奮しながら報告する子供達がいっぱい。エスカレーター上で日頃忘れかけていたナマの音への純粋な興奮を思い出していました。
第2部「みんな一緒のコンサート」では吉松隆の組曲「星夢の舞」から(太鼓の先生、予告通り手を振って下さいました!!)。
北斗七星をモチーフとした組曲冒頭「序の舞」ではE音の連打に乗って笛と琴の絡みがいかにも「春が来た!!」と周りに知らせているよう。三味線をはさんで流れるようなアンサンブルが展開されていきました。2曲目「綺羅々」(きらら)では涼やかな鉦の音に琴ソロと笛ソロが加わり、物思いにふけるような響きが演奏されました。続く「点々」はスケルツォっぽく小太鼓と琴が止め拍子を交えており、この「ストップモーション」がこの上ない緊迫感とライヴ感をもたらしていた
ように思います。笛と尺八とのメロディラインの震えるような響きには私も身を乗り出して聴きました。2巡目では太棹が入って響きに厚味が増し、トリル音が小回りきいた舞を連想させる印象でした。丁々から舞戯之舞(←ブギもこのように書くとなかなか洒落たもの!!)へ展開していくところでは、やはりE音連打から展開、何気なく笛がノリに乗っていた印象だったが、テンポが上がると尺八ソロと弦パートのアルペジオ風に奏される広がりを持った響きとがホールで上昇気流気味に掛け合っていき、「舞戯之舞」ではいよいよパワー全開!!
実はこの部分はリハーサルを拝見出来たのですが、単なる演奏にとどまらず、各パートがジャズバンドよろしく各ソロパートで立って演奏してみようという事も言っていたので、実際本番でそれぞれの見せ場を見られたのが大満足でした。春の催しにふさわしくパステル調の和装も交えてのアンサンブルでは邦楽でもここまで「見せる」演奏が可能というのが見られて大いに満喫しました。中でも三味線パートのいわゆる「ベンベン」する部分が何とも格好よく、指揮者も大変ノッておられました。会場からもブラヴォーと掛け声が飛んでいましたっけ。
続いて音楽と絵本「ヘチとかいぶつ」太陽を守る善玉ヘチと地中深く住んでいつも悪さをしている4匹の怪物兄弟のお話でした。朗読佐々木梅治(劇団民藝)さんは語り部っぽく作務衣のような昔のいでたち。音楽集団の奏でるダイナミックな音楽に乗って、豊かな声色で怪物達の物語を語っていました。
ここで使われた音楽は朴範薫(パクパンブン)作曲「シナウイ」。昨年5年の音楽集団定期演奏会で聴きましたが、今回の絵本にもちょうどよく合っていました。太陽を守るヘチの正義の角のモチーフや怪物4兄弟の紹介場面では独特の音楽。スライドに映し出された険しい山々光景や、イタズラで太陽が4つ照らされる場面では打楽器のたたみかけるような動きが効果的。またヘチが怪物4兄弟におしおきする場面では琵琶と三味線が緊迫した語り口で盛り立てていました。
本番後、さっきスタジオで折った折り紙を取りに来ながら面白かった!!(首から下げている名札が目印!!)と満足そうに帰って行く子供達。きっと今日は子供達も親御さんも熱く語るんだろうなと想像しつつ、後片付けに入る私達。逆に皆から聴き手の原点とでも言えそうな素直に楽しむ心を教えてもらった気がしました。
公演に関する情報
〈ライフサイクルコンサート17〉
育児支援コンサート~子どもを連れて、クラシックコンサート
日時: 2006年3月26日(日)15:00開演
出演者:日本音楽集団、佐々木梅治(劇団民藝/朗読)
演奏曲:
第1部
・子どものための音楽スタジオ(幼稚園年少組年齢から年長組年齢対象/
4歳児~6歳児まで、4つのスタジオにわかれ、演奏家と一緒に楽しい音楽体験をします。)
・大人のためのコンサート(小学生から)
~楽しい初めての邦楽器アンサンブル~
長沢勝俊(作曲):二つの舞曲より
三木稔(作曲):「四季」ダンス・コンセルタントⅠ、
指揮者による楽器紹介つき。(演奏楽器:笛、尺八、三味線、琵琶、十七絃、打楽器)
第2部
・みんな一緒のコンサート
音楽と韓国の絵本「ヘチとかいぶつ」(全国学校図書館協議会選定)