レクチャーコンサート
「ショパンの室内楽、ショパンのピアノ」
報告:井出春夫/会社員(TANサポーター)
投稿日:2006.03.20
3月14日の「ショパンのアンサンブルを19世紀のアンサンブルを19世紀のサロンの響きで」というコンサートのプレイベントとして、レクシャーコンサートが演奏会に先立ち開催された。
当日は、静岡文化芸術大学の学生さん2名が遠路浜松からサポーターとして手伝いに来て下さり、一緒にサポーターをさせていただいた。
会場の中をみると、浜松市の楽器博物館から運ばれてきた1830年製のプレイエルが置かれている。聞くところによれば、世界でも、浜松の楽器博物館のように楽器をコンサートのために持ち出しを許可してくれるところはほとんどない(唯一?)だそうである。
ショパンの生きていたときの楽器である。どんな音がするのだろうという興味が高まる。
レクチャーの最初に題名は解らなかった(作品番号op.25?)が小倉さんにより演奏された。 この曲は「シューマンが「エオリアンハープを聞いているようだ。」と言ったという。この曲は、自分は全く知らないのだが、そう言われればその通りだが、「現代ピアノで聞いたらシューマンは、そんなこと言わなかったのだろうなぁ」と想像した。
静岡文化芸術大学の小岩先生からショパンのピアノ協奏曲についてレクチャーしていただく。 その中で面白かったのは、ピアノ譜、弦楽器、管楽器と楽譜が別売されていて、(例えば、この協奏曲をよく知った人には物足りないかも知れないが)ピアノソロでの演奏が結構楽しい。(小倉さんがピアノで実演)また、弦楽器のパート譜には、管楽器がないときは弦楽器でカバーできるように小さな楽譜で示されている。そして、弦楽器が弾きにくい所は、ピアノがカバー出来るような配慮(この部分も小倉さんが実演)がされている。
室内楽版でやるとチェロ、コントラバスは、殆どフルオーケストラの楽譜を弾き、さらに管楽器の部分の手伝いもやるので大忙しらしい。(これは、演奏会の時の楽しみである!)
ショパンの楽譜が、フルオーケストラ版と室内楽版に互換性があるのは、時代背景にも大きく影響されていたようだ。
プレイエルをこのレクチャーコンサートで聞いた感じでは、小倉さんは、とても鳴りやすいとはなされていたが、音は、重く鳴りにくそうに聞こえた。また、低、中音では、弦の張りの強い現代ピアノよりは彫りの深い音が魅力だが、高音にはピッチが低いためか若干、違和感を感じた。それに、スケールみたいなところを弾くときにはあまり気にならないが、和音を聞くと、きれいに響く和音もあるが、あまりよくない響きもあったように思えた。そして、ホールではちょっと他の楽器に音が負けちゃうかもとも感じた。
でも、場所が変われば、音も変わるだろうから、ホールで聞けばまた違う印象なんだろうと考えながら家路についた。
最後に、本番の印象。レクチャーで感じた、プレイエルのピアノフォルテは、違うピアノフォルテではないかと思うくらい美しい音を出していた。音量的にも、弦楽器の後ろに位置しているが、見事に弦楽器と調和してバランスがよい。最近のピアノ協奏曲は戦うという意味が強いが、実際初めて調和するという協奏曲を聴いたように思えた。
今回のレクチャーコンサートでは、演奏会当日は、都合が悪いので、レクチャーコンサートに参加してくださった方も何人かいらした。レクチャーでも、名器プレイエルの音が感じられたのは、貴重な体験であったと思う。でも、機会があれば、ホールに足を運び、この楽器の響きを聞いてみていただきたいと思う。
公演に関する情報
レクチャーコンサート
「ショパンの室内楽、ショパンのピアノ」
日時: 2006年3月11日(土)15:00開演
場所: トリトンスクエアX棟5階会議室
出演者:お話:小岩信治(静岡文化芸術大学講師)
演奏:小倉貴久子(フォルテピアノ)
〈TAN's Amici Concert〉
ショパンのアンサンブルを、19世紀のサロンの響きで
~浜松市楽器博物館所蔵のフォルテピアノ(プレイエル、1830年)を使って~
日時: 2006年3月14日(火)19:00開演
出演者:小倉貴久子(フォルテピアノ)、桐山建志(ヴァイオリン)、白井圭(ヴァイオリン)、
長岡聡季(ヴィオラ)、花崎薫(チェロ)、小室昌広(コントラバス)
演奏曲:
ショパン:ノクターン 変ホ長調 作品9-2、バラード 第1番ト短調 作品23、
ピアノ三重奏曲 ト短調 作品8、ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 作品11
(ドイツ初版(1833)に基づく「室内楽版」)楽版)