ミロ・クァルテット
報告:朝山勝治(あさまやかつじ)
投稿日:2005.12.21
12月7日、18:00開演といつもに比べ、はるか早い時間帯にホールへ、しかも大きな期待を持って向かいました。アメリカからのミロ・クァルテットによる「ベートーヴェン 弦楽四重奏曲作品18全曲演奏会」を聴きに行くため。直前の4日には「カナルサイドコンサート第1回」と銘打たれ、文字通り運河のすぐ横、レクサス晴海で行われた気軽に足を運べるコンサートで、作品18-1の第1楽章等、魅力的な演奏を聴かせてくれた、そのアンサンブルが作品18の全6曲を一晩で演奏するという快挙をやってしまおうという演奏会は非常に待遠しく思われたためです。
実際に聴いて、驚くべき事は、これだけの長丁場、曲数にも拘らず、ムラがないどころかどの曲も高レベルを保っていた事。楽曲のフレーズのキャラクターを明快に出し、コントロールされたテクニックでダイナミックス、音程・和音の違いで本当に僅かに変化しているという事を的確に聴き手へ伝えてきます。芯のあるスピッカートやスタッカート等も含め、テクニック、メカニカルな面では素晴らしいと言えるでしょう。しかし、それだけではなく、表情豊かで、緊張といい意味での弛緩が多用され、繊細さも合わせ持っています。途中、緩徐楽章で2度も拍手が会場から出たのも、あまりにも美しい演奏だったからでしょう。
11月号の「かわら版」にはインタビューが掲載され、作品18の作曲年代と彼らが丁度同じ歳廻りとのこと。次には是非、作品59を演奏したいという言葉が非常に楽しみになり、会場を後にしました。
当分はこの余韻を味わうために、彼らのCDを自宅で聴き続けるとします。
公演に関する情報
〈クァルテット・ウェンズデイ#44〉
ミロ・クァルテット
日時: 2005年12月7日(水)18:00開演
出演者:ミロ・クァルテット
[ダニエル・チン/山本智子(Vn)、
ジョン・ラージェス(Va)、ジョシュア・ギンデル(Vc)]
演奏曲:
ベートーヴェン 作品18 全6曲
弦楽四重奏曲第3番ニ長調 作品18の3/第2番ト長調作品18の2/
第1番ヘ長調作品18の1/第5番イ長調作品18の5/
第4番ハ短調作品18の4/第6番変ロ長調作品18の6