有田栄先生の楽しいお話で毎年人気の「中央区民カレッジ」、全4回のうち、講義の3回が無事終了しました。最終回である第4回は、10月28日(土)の第一生命ホールでの「白井光子&ハルトムート・ヘル リート・デュオ」の公演を実際に聴いていただくことになっています。
毎年、楽器体験つきで楽しんでいただく有田栄先生のこの「中央区民カレッジ」シリーズ、これまでにも最終回の公演にあわせて、レクチャーの中で、クラリネット、ヴァイオリン、フルートを実際に触って演奏してみるという体験をご用意してきました。
今回は、ドイツ・リート(ドイツ歌曲)の演奏会が最終回となるので、歌の体験、それもドイツ・リートの体験にできれば......と思い、たまたま春に、有田先生が企画する吉井瑞穂さん(オーボエ)のコンサートに行ってご相談したところ、その場にいたのが、吉井さんのご主人アリスター・シェルトン=スミスさん(バリトン歌手)。
有田先生が、ふと「アリスターさん、リートのワークショップをやってくれないかしら?」と尋ねてみると、なんと
「最終回が、白井光子さんとハルトムート・ヘルさんのデュオ? 喜んで! 私は、ドイツで白井さんとヘルさんに師事していたんですよ!」
とちょっと偶然にしてはできすぎのお答えが! (こんなこともあるので、企画はやめられません。)
リートとして受講生の皆さまに歌っていただくのは何がよいか、有田先生とアリスターさんと色々とご相談した結果、みなさんメロディーをよくご存じで、音域にも無理がないメンデルスゾーンの「歌の翼に」がよいのでは、ということになりました。
第1回の9月9日は、まず有田栄先生のレクチャーで「ドイツ・リートの世界への招待」と題し、西洋音楽史における「リート」の意味とその歴史をざっくりと学んだ後に、アリスターさんとピアノの岡純子さんに、歴史をおってシューベルトからブラームス、ヴォルフ、マーラー、R.シュトラウスの作品を演奏していただきました。さらに、フランス語と英語(アリスターさん母国語)のリートを聴き、ドイツ語との比較をするという贅沢な企画になりました。
第2回9月24日は、「リートに心を託した作曲家たち」というテーマで、詩と音楽の関係やピアノの役割について学びました。アリスターさんと岡さんの実演つき、有田栄先生のレクチャーの後、この日は、第一生命ホールの中でリハーサルの見学、その後、バックステージツアーに参加して、コンサート制作の裏側をご覧いただきました。
第3回10月14日は、いよいよリートの体験です。まずは「さらにリートの奥座敷へ――リートの発展と変容」と題した有田先生の講義で、同じ詩にもとづき異なる作曲家がリートを作曲した場合の比較や、バイロンなどの翻訳詩によるリートなど、リートの様々な側面を実演つきで学びました。
休憩後はいよいよ「アリスターとドイツ・リートを歌ってみよう!」のコーナー。まずは身体をほぐし、身体のつま先から頭のてっぺんまでリラックスした状態をつくります。アリスターさんのお話でおもしろいなと思ったのは、身体を意識する際に、綱引きのように均衡して引っ張り合うイメージを持つということ。例えば、上に引っ張られている身体を感じると同時に、地面に根を張ってしっかり下からも引っ張られているイメージを持つ。歌う時も同じく、声は物理的には前に出るのですが、同時に頭の後ろにも響くように意識すること、という話がありました。
そして、歌う前にまずは歌詞を読んで(日本語でOK)音楽をイメージしてみること。その次に、音程にのせずリズムだけで歌詞を声に出してみます。最後にようやく、メロディーにのせて歌を歌ってみます。
他にもドイツ語の発音なども教えてくださったのですが、実際に演奏する(歌う)前に、身体も頭も、実は準備が必要という、とても大事なことを教わった気がします。
第4回はいよいよ「白井光子&ハルトムート・ヘル リート・デュオ」公演鑑賞です。このコンサートについては、先日、朝日新聞でも白井光子さんのインタビューが記事に取り上げられましたので、ぜひご覧ください。
朝日新聞記事は こちら
講座を聞いてリートの奥深さに感じ入ったのはもちろんですが、白井光子さんは、リートは言葉が分からなくても楽しめるもの、とも語っています。
白井光子さんインタビューは こちら
講座を聴いた方も聴かなかった方も、どうぞリートの奥深い世界にお出かけください。
(たな)
〈ウィークエンドコンサート〉
室内楽の魅力~白井光子&ハルトムート・ヘル リート・デュオ
歌とピアノの究極の室内楽「リート・デュオ」
日時:2017年10月28日(土)15:00開演
出演:白井光子(メゾソプラノ) ハルトムート・ヘル(ピアノ)
演奏プログラム:
シューマン:
恋の歌 Op.51-5(詩:ゲーテ)/出会いと別れ Op.90-3(詩:レーナウ)
ひそやかな愛 Op.35-8(詩:ケルナー)/心の通いあい Op.77-3(詩:ハルム)
歌曲集「女の愛と生涯」 Op.42(詩:シャミッソー)
ヴォルフ:
歌曲集「メーリケ詩集」より
眠りなき者の太陽(詩:バイロン)
めぐりくる春(詩:ゲーテ)
ミニョン「君よ知るや南の国」(詩:ゲーテ) 他
入場料(全席指定):
■S席¥6,000 ■A席¥5,500 ■B席¥3,500 ■ヤング¥1,500(小学生以上、25歳以下)
公演の詳細は こちら