先週(6月10日)の公演では、高い集中力と、美しい絶妙のアンサンブルで聴衆を沸かせたシューマン・クァルテット。
改めて、彼らの経歴をご紹介しますと、2013年ボルドー国際弦楽四重奏コンクールでも優勝、今や世界中の名門ホールで公演を重ね、若手弦楽四重奏団の中でも高い評価と注目を集める、まさに今、聴いておきたいクァルテットなのです。
明日は、いよいよ東京公演の第2回。
ソリストとしても活躍する第1ヴァイオリンのエリック・シューマンが語る、聴きどころをご紹介します。(コンサートイマジン発行「シューマン通信vol.2」より)
モーツァルトの弦楽四重奏曲第23番は、いわゆる「プロイセン王セット」の3番目の作品で、そして、モーツァルトにとって最後の弦楽四重奏曲となった作品でもあります。チェロは感情を吐露するように動きますが、これは当時としてはとても珍しいことでした。でも、「プロイセン王セット」の他の2曲でもそうですが、ここでもチェロは多くの場所で主旋律を与えられています。この曲は非常に挑戦的な作品と言えます。モーツァルトは、聴衆にとっても演奏者にとっても予期出来ない休止、突然の曲調の変化を随所に挿入しています。モーツァルトは言っています。「休止は重要で、時には音よりも重要である」、と。この曲において、冒頭ですでにそれを感じることが出来るでしょう。モーツァルトはその効果を期待しながら戯れているのです。それでも尚、この曲はモーツァルトの最上の作品と言えるでしょう。美しい旋律、天才的な展開。モーツァルトのオペラや交響曲もそうですが、この名作の中では、より凝縮された形で見出すことができます。
武満徹の「ランドスケープ」は、全く別の音楽体験をもたらしてくれるでしょう。曲は極端な、突然のディーナミク(音の強弱)と雰囲気の変化によって成り立っています。武満は、全曲を通して完全にヴィブラートなしで演奏することを要求しています。この曲は、演奏者と聴衆の間の距離感から着想を得た珍しい音楽作品と言えるでしょう。この曲は、私たちに日本の古いおとぎ話や絵画を思い起こさせます。武満が、周文の「四季山水図」から影響を受けたことがあるのかどうか、私は知りません。ただ聴衆の誰もが、この曲が終わる時に、幼い頃に聞いたおとぎ話を思い出す時の感覚や、「四季山水画」をみる時に得た感覚と同じものを感じるでしょう。
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第13番は、弦楽四重奏のために書かれた全ての曲の中でもとても好きな曲です。とても豊かで深淵、同時に軽快で活力に満ち、魅力に溢れています。「カヴァティーナ」は最高に美しく、その美しさを描写する言葉はありません。この世界の美しさへのオマージュとさえいえるのではないかと思います。この世界の生きとし生ける全ての創造物の美しさ、我々はそれを、ベートーヴェンの音楽を通して感じることができる特権を与えられているのです。生きていること、そしてそれを全ての瞬間に感じていること、それが最も大切なことなのです。それはまさに弦楽四重奏曲を演奏することの喜びでもあります。作曲家と演奏家と聴衆をつなぐ、真に親密な絆を築く、という喜びです。
皆様が私達と一緒に、これらの多彩な名作たちの世界をめぐる旅を楽しんでくださることを祈っています!
エリック・シューマン
また、彼らの最新アルバム「Landscapes」も好評発売中。発売レーベルのBerlin Classicの公式Youtubeでは、武満徹の「ランドスケープ」の一部をお聴き頂けます。 こちら
当日券は、13:00より発売。みなさまのご来場を心よりお待ちしております。
(くろ)
シューマン・クァルテットII
日時:2017年6月17日(土)14:00開演
出演:シューマン・クァルテット[エリック・シューマン(第1ヴァイオリン) ケン・シューマン(第2ヴァイオリン) リザ・ランダル(ヴィオラ) マーク・シューマン(チェロ)]
演奏プログラム:
モーツァルト:弦楽四重奏曲 第23番 ヘ長調 K590 「プロイセン王第3番」
武満徹:ランドスケープ I (1960)
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第13番 変ロ長調 Op.130
■公演詳細は こちら