その他特別コンサート等 > 2011.11
第一生命ホール10周年記念ガラ・コンサート
~モーツァルトに寄せて~
豪華な出演者によってそれぞれに違った演奏を聞くことができ、楽しかった。
このコンサートは、いろいろな形で第一生命ホールに協力、出演してくださったアーティストによるモーツァルトプログラムによるガラ・コンサートである。演奏者が有名で比較的よく知られた曲が多いためか、このコンサートは早くから完売であったようである。
当日は、前日まで日比谷の第一生命本社ビルで行なわれていたモーツァルト展(ミニコンサートも行なわれていた)の資料も展示され、それをお客さまに見て頂くのに開場時間を1時間早くしただけでなく、休憩時間や終演後も見られるように配慮がされていた。
コンサートのトップバッターを務めたのは、仲道郁代さん。仲道さんは、このホールができたとき2台のピアノのうちの1台を選んで下さった方で、仲道さんにとってこのホールのピアノはマイピアノみたいなものだろう。弾かれた曲は「きらきら星変奏曲」。透きとおった音で変化をはっきり付けた演奏であった。選んだ時と10年後ピアノはどんな風に変化しているんだろう。
2曲目は、「フルート四重奏曲」曲が始まってまもなく背筋に電気が走った。工藤さんの黄金のような音色に堀米さん、川崎さん、山崎さんの弦楽器の暖かな音によく溶け合う。音を合わせるとかいう意識が働いているとは思えない。4人ともとても自由に音楽をしているのだけれど自然に合ってしまうそんな感じのすごい演奏。聞いている間とても幸福であった。
3曲目は清水和音さん。曲は「ピアノのソナタK331トルコ行進曲付き」。1音1音丁寧にしっとりとしたピアノ。清水和音さんのピアノは永らく聞いていなかったのでこんな感じに変わったのかなあと思った。意外な場所での即興性も楽しかった。
4曲目は、佐藤美枝子さん。名前は存じ上げていたが、なかなか聞くチャンスがなかった人でした。オペラ「後宮からの誘拐」からのアリア。のびやかできれいな声。そして表情が豊かな演奏でよかった。
5曲目は、「ヴァイオリンとピアノのためのソナタK.304」。
矢部さんのヴァイオリン、横山さんのピアノ。音がきれいでさらっとした演奏。よく歌っている。もしかしたら、出演者の中では一番渋い演奏だったかも。
6曲目は「幻想曲ニ短調」、演奏は児玉桃さん。よかったです!硬質だけど透明感があり、幻想曲にぴったりっていう感じです。曲の冒頭のアルペジョは、ちょっとドビッシー風のように聞こえましたが全体としては、音楽が新鮮に聞こえました。
7曲目は、児玉さん、堀米さんのduo「ヴァイオリンとピアノのためのソナタK.378」。
ヴァイオリンとピアノの息がぴったり。2人ともとってもよく歌っていて体が熱くなる。
とりを務めるのは、「ピアノ三重奏曲K.542」仲道さんのピアノ、川久保さんのヴァイオリン、長谷川さんのチェロ。豪華な顔合わせだ。3人とも音がきれい。川久保さんはとても素直な感じの音が聞こえたように思う。集中力の高い演奏だった。今回豪華な出演者によってそれぞれに違った演奏を聞くことができ、楽しかった。そして、できるなら、アンサンブルしか演奏をしなかった演奏家の方のソロも聞いてみたかった。
公演に関する情報
第一生命ホール10周年の10days第9日
第一生命ホール10周年記念ガラ・コンサート
~モーツァルトに寄せて~
日時:2011年11月26日(土)14:00開演
出演:児玉桃/清水和音/仲道郁代/横山幸雄(ピアノ)
川久保賜紀/堀米ゆず子/矢部達哉(ヴァイオリン)
川崎和憲(ヴィオラ)
長谷川陽子/山崎伸子(チェロ)
工藤重典(フルート)
佐藤美枝子(ソプラノ)
海老澤敏 モーツァルト・レクチャー・コンサート
~モーツァルトの愛したヴァイオリン&ヴィオラと共に~
全体を通して、古楽奏法のためか、楽器によるものかは私にはわかりませんが、音色が暖かくて、耳に心地いい・・・
このコンサートは第一生命110周年、第一生命ホール10周年の記念として、海老澤先生のレクチャーとモーツァルトが弾いたヴァイオリンとヴィオラを使った演奏を聞くというものであった。当日の来場者は、事前申し込みによる無料招待。当日、ホールに入ると、ドイツ語をよく耳にした。今回の催し物の関係者も多くみえていたように思います
モーツァルテウム財団総裁の御挨拶の後、海老澤先生のレクチャーが始まった。正直なところ海老澤先生のレクチャーがもう少しあってもよかった。私は海老澤先生の話しを生で聞くのは初めてでどんな話しをしてくださるかということも楽しみの一つだったので少し残念でした。
でも、その分演奏を十分楽しめた。全体を通して、古楽奏法のためか、楽器によるものかは私にはわかりませんが、音色が暖かくて、耳に心地いい。
最初の曲は、「弦楽四重奏曲変ホ長調」とてもかわいい曲でした。第1楽章は、アレグロとありましたが落ち着いた感じで、ディベルティメントK.136第一楽章のメロディに似たメロディが聞こえてきました。第2楽章はしっとりしていてとてもきれいでした。
2曲目は、「ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲K.424」
これこそ、モーツァルトが使っていたヴァイオリンとヴィオラのとても美しい二重唱(奏)を聞くことが出来ました。特に第3楽章は短いけれど素敵で、最終楽章の変奏曲では、ヴァイオリンとヴィオラの対話が楽しかった。
第3曲目「弦楽四重奏曲ニ短調K.173」。モーツァルトが短調の曲を作曲するときは、特別な時だと聞いたことがある。この曲はどんな時のものなのかはわからない。でも、モーツァルトは長調の曲の中に短調の部分でも、「これはまいったなぁ」と思うような暗さを感じる時がある。この曲の最初の音はかなり重たい音で始まりたしかに暗い。だけど、どこかに希望が持てるような演奏(曲)のように思えた。第4楽章は、最初から「フーガ」であり少し現代音楽的な響きを感じた。そして、最後は炎が消えていくように曲が終わった。
後半は、オペラ「ドン・ジョヴァンニ」からの弦楽四重奏版(ヨーゼフ・キュフナー編曲)である。この曲は演奏者からの提案であったようです。以前、ショパンのピアノ協奏曲を弦楽合奏版のレクチャーコンサートの時、静岡文化芸術大学の小岩先生から、ショパンくらいまでは小人数で演奏できるように協奏曲の室内楽版があるという話を伺った。海老澤先生も、モーツァルトは、宗教曲、交響曲、オペラでも小編成の編曲版があり、「楽器で演奏しても歌のように聞こえますよ」といわれた。そうはいってもどうなんだろう?と思った。でも曲を聞いていて本当にそう思った。オペラファンの方には顰蹙(ひんしゅく)をかうかも知れないが、声で聞くよりもシンプルで暑苦しくないのがいい。もちろん演奏も素晴らしかった。第1、2幕から11曲の抜粋、アンコールで『シャンパンの歌』、「フィガロの結婚」から『もう飛ぶまいぞ、この蝶々」と盛だくさんでたのしかった。ホールを出て時計を見たら9時半を過ぎていた。でも疲労感はない。すばらしいレクチャーコンサートだった。
公演に関する情報
第一生命110周年記念 第一生命ホール10周年記念
海老澤敏 モーツァルト・レクチャー・コンサート
~モーツァルトの愛したヴァイオリン&ヴィオラと共に~
日時:2011年11月24日(木)19:00開演
出演:海老澤 敏(お話)
フランク・シュタードラー(第1ヴァイオリン)※モーツァルト・ヴァイオリンを使用
ヴェルナー・ノイゲバウアー(第2ヴァイオリン)
ヘルバート・リンツベルガー(ヴィオラ)※モーツァルト・ヴィオラを使用
フローリアーン・ジンマ(チェロ)