2008.12.18
ふたりでコンサートV オペラの楽しみ
その数日前に、TANの広報さんから「モニターをご夫婦でお願いできませんか?」というお話をいただいた。そして、TANのサポーターを始めた2003年はちょうど5年前で、このコンサートが始まったころだったことをおもい出した。自分にとっても節目の今年にこのような機会を得られたことが次の何かに繋がるように感じ、思わず引き受けてしまった。
当日は、「完売御礼」ということで、顔馴染みのサポーターさんから「大入袋」を見せてもらった後、客席へ。2階席も端から端までぎっしり。年齢層も様々。おかあさんと小学生という「ふたり」もちらほら。いろんな「ふたり」がいて、雰囲気が和やかになっている心地よさを感じながら着席した。
司会も兼ねている郡さん(メゾ・ソプラノ)の楽しいおしゃべりと女性陣の華やかな衣装を楽しみながら、コンサートは展開していった。ピアノは「これぞ伴奏」といっていいのだろうか。楽曲、歌手の両方の個性にあわせ、音色が自在に変わっていく。ピアノが目立つことは無い。でも、聴き入ってしまう。歌がより鮮やかに表現されていく様子が、とても印象的だった。
第一部のアリアでは、曲によってはオペラの一幕を思わせる構成で、第二部ではジャンルを超えた名曲が繰り広げるなど、出演者紹介を交えて楽しんだ。 特に、郡さんが歌った「アメージング・グレース」は、私の大好きな曲。どんなアレンジで聴かせてくださるのか楽しみにしていた。歌が終わった時、「楽しみ」が「いやし」に変わっていた。ライブで演奏を聴く醍醐味とは、こういう瞬間があるということ。それを「楽しみ」に、演奏会へ出かけてしまう。コンサートに足を運べる幸せを改めて感じた時間だった。
プログラムが終了して、アンコールを求めての拍手のなか、2階席の男の子は、身を乗り出しそうになりながら待っているし、1階席では、立って拍手している人も。アンコールでは、4人が揃っての四重唱。郡さんがお話していた「オペラではね、メゾの役割は......」を彷彿させるようなオペラ仕立てでの演奏は圧巻。1曲が終わっても、拍手鳴りやまず、またアンコール。 この「ふたりでコンサート」を待ち望んでいる方が多いだろうなぁと感じるほど、ニコニコしながら拍手している様子が印象的でした。また来年も、と楽しみにしながらの声援なんだろうなと思いながら、会場を後にしました。
公演に関する情報
〈ライフサイクルコンサート#33〉
ふたりでコンサートV オペラの楽しみ
日時: 2008年12月7日(日)15:00開演
出演者:佐藤 美枝子(ソプラノ)、郡 愛子(メゾ・ソプラノ)、川久保 博史(テノール)、
谷 友博(バリトン)、松本 康子(ピアノ)
演奏曲:
第1部 珠玉のオペラアリア
ロッシーニ:歌劇「セヴィリアの理髪師」より「私は街の何でも屋」
ビゼー:歌劇「カルメン」より「ハバネラ」
プッチーニ:歌劇「トスカ」より「星は光りぬ」
ベッリーニ:歌劇「清教徒」より「あなたの優しい声が」
プッチーニ:歌劇「ラ・ボエーム」より「もう帰らないミミ」(二重唱)
サン=サーンス:歌劇「サムソンとデリラ」より「あなたの声に心は開く」
ヴェルディ:歌劇「ドン・カルロ」より「私は死ぬ」
ヴェルディ:歌劇「リゴレット」より「愛こそ心の太陽~さようなら」(二重唱)
ヴェルディ:歌劇「リゴレット」より「慕わしき人の名は」
第2部 あなたと魅惑のひとときを・・・・・・
ガーシュイン:「ポーギーとベス」より「サマータイム」
ニューマン:「慕情」より「恋ははかなく、恋はすばらしきもの」
ブロズキー:「ニューオリンズの美女」より「ビー・マイ・ラブ」
スコットランド民謡:アメージング・グレース
ララ:グラナダ
ロウ:「マイ・フェア・レディ」より「踊り明かそう」
デ・クルティス:忘れな草
タリアフェッリ/ヴァレンテ:情熱
ふたりでコンサートV オペラの楽しみ
オペラのアリアが並ぶ第1部,映画音楽や世界の歌曲が続く第2部とで構成された「ふたりでコンサート」。音楽をきっかけに夫婦の絆をより深めていただきたい,との趣旨で始められたこのプログラムは,今年で5回目を迎えた。
「満員御礼なので,よい席がご用意できなくて......」と,TANの広報担当スタッフに差し出されたチケットを手に,特設されたイスに座る。見渡すと,2階席の隅まで席が埋め尽くされている。
一昨年にモニターを務めた時のノートをひっくり返しても,"チケットは完売"とのメモがある。例年どおりの盛況振りだ。
客層はご年配の夫婦が目立つ中,20代と見えるカップルや,お子さんを連れた30代のファミリーもホールのロビーを歩いている。その一方,出演者のCDを並べている即売場も人が絶えることがない。
* * *
「メゾ・ソプラノの役どころと言えば,だいたいが悪女,魔女,占い師なんてところですね。そうでなければ......乳母っ!」といった郡愛子さん(メゾ・ソプラノ)の茶目っ気たっぷりの司会で進むプログラムは,客席から始終笑いが起こり和やかなムードが漂っていた。
ステージに立つのは,この郡さんをはじめ,佐藤美枝子さん(ソプラノ),川久保博史さん(テノール),谷友博さん(バリトン)の4人。伴奏はピアノの松本康子さんが務める。
「ごあいさつ代わりにアリアを1曲ずつ歌います」(郡さん)と始まった第1部「珠玉のオペラアリア」では,ロッシーニ《セヴィリアの理髪師》より〈私は街の何でも屋〉で,谷さんのバス・トーンが会場を震わす。続くビゼー《カルメン》より〈ハバネラ〉は郡さん。悪女のまさに代名詞とも言えるカルメンさながらに,客席を舞台へとぐいぐい引きずり込むかのよう。
そしてプッチーニ《トスカ》より〈星は光りぬ〉の川久保さんのテナーが,ホールに絹織のような夜のとばりを落とし,佐藤さんがベッリーニ《清教徒》より〈あなたの優しい声が〉で切なさにあふれたハイトーンを歌いきったところで会場から「ブラボー!」と拍手が湧き上がった。
* * *
続く第2部「あなたと魅惑のひとときを......」でも,4声それぞれの特長と魅力がぞんぶんに引き出された構成であり,あたかも良質のオムニバスを聴いているかのようだった。
ロウ《マイ・フェア・レディ》より〈踊り明かそう〉では,ソプラノの佐藤さんがチャーミングなお色気で舞台を彩れば,メゾ・ソプラノの郡さんはデ・クルティス〈忘れな草〉をしっとりとした日本語で歌い染める。かたやテノールの川久保さんがブロズキー《ニューオリンズの美女》より〈ビー・マイ・ラヴ〉で憧れの人への想いを朗々と描き出し,バリトンの谷さんはニューマン《慕情》より〈恋ははかなく,恋はすばらしきもの〉で聴いている者の全身を揺さぶるような音量で低音を響かせた。
一方,伴奏の松本さんの表情豊かなピアノも舞台に花を添えていた。アーティストのキャラクターに寄り添い,時に穏やか,時にダイナミックな演奏が舞台を華やげていたことは書き添えておきたい点だ。
* * *
そして客席に目を移せば,曲が終わると微笑み合いながら静かに話を交わしているご年配の二人連れを,ここかしこに見ることができた。
今,ステージに流れたこの曲は,お二人にとって何の想い出と結びついているんだろうか,どのような暮らしの節目に聴いた曲なんだろうか......。
そんな曲とともに歩む夫婦のライフサイクルは,きっと悪いはずはないだろう。だって,お二人の笑顔が証明している。そんな気持ちで舞台を見つめながら,時折,横に座っている妻の顔を眺めた(本日はTAN広報の計らいで,夫婦でのモニターを務めました)。
公演に関する情報
〈ライフサイクルコンサート#33〉
ふたりでコンサートV オペラの楽しみ
日時: 2008年12月7日(日)15:00開演
出演者:佐藤 美枝子(ソプラノ)、郡 愛子(メゾ・ソプラノ)、川久保 博史(テノール)、
谷 友博(バリトン)、松本 康子(ピアノ)
演奏曲:
第1部 珠玉のオペラアリア
ロッシーニ:歌劇「セヴィリアの理髪師」より「私は街の何でも屋」
ビゼー:歌劇「カルメン」より「ハバネラ」
プッチーニ:歌劇「トスカ」より「星は光りぬ」
ベッリーニ:歌劇「清教徒」より「あなたの優しい声が」
プッチーニ:歌劇「ラ・ボエーム」より「もう帰らないミミ」(二重唱)
サン=サーンス:歌劇「サムソンとデリラ」より「あなたの声に心は開く」
ヴェルディ:歌劇「ドン・カルロ」より「私は死ぬ」
ヴェルディ:歌劇「リゴレット」より「愛こそ心の太陽~さようなら」(二重唱)
ヴェルディ:歌劇「リゴレット」より「慕わしき人の名は」
第2部 あなたと魅惑のひとときを・・・・・・
ガーシュイン:「ポーギーとベス」より「サマータイム」
ニューマン:「慕情」より「恋ははかなく、恋はすばらしきもの」
ブロズキー:「ニューオリンズの美女」より「ビー・マイ・ラブ」
スコットランド民謡:アメージング・グレース
ララ:グラナダ
ロウ:「マイ・フェア・レディ」より「踊り明かそう」
デ・クルティス:忘れな草
タリアフェッリ/ヴァレンテ:情熱