時間的に余裕のできたご夫婦を中心に、昨年までご好評いただいていた「ふたりでコンサート~オペラの楽しみ~」がリニューアル。今回のコンサートを構成してくださったのは、バリトンの宮本益光さんです。「オペラの楽しみ オペラ歌手の裏のうら~モーツァルトの4大オペラと共に~」と題した公演の聴きどころをうかがいました。
モーツァルトの歌で紹介するオペラの舞台裏
どんな構成になりますか。
宮本:とあるオペラ歌手の1日に密着しながら、オペラの舞台裏をこっそりのぞいてみましょう、という趣向です。人気歌手ジョヴァンニ(宮本)が、楽屋入りするところから物語が始まります。前から気になっていたメイク担当のスザンナ(鵜木)を口説く時に歌うのは、「フィガロの結婚」でアルマヴィーヴァ伯爵がスザンナに言い寄る「ひどいぞ! どうしてこれまで焦らしたんだ」。次は「ドン・ジョヴァンニ」となってヅェルリーナを誘う「お手をどうぞ」を歌いながら衣裳担当(砂田)を誘惑。「コジ・ファン・トゥッテ」からはグリエルモがドラベッラに歌う「心をあなたに差し上げます」で、やきもち焼きのマネージャー(小林)に恋のテクニックを総動員...というようにバックステージでの物語が進んでいき、最後にジョヴァンニがオンステージで演じるのが「魔笛」という設定です。
元のオペラを知らなくても、このストーリーだけでも楽しそうですね。オペラをよくご存知の方なら、より楽しめますし。
宮本:「魔笛」は一部ですがオペラの舞台という形でお見せしますので、ご存知ない方でも、今度は「魔笛」を全幕見てみようかな、というお気持ちになればうれしいですね。
一人のオペラ歌手が演じ分けるパパゲーノとドン・ジョヴァンニ
いろいろな役を演じ分けることになるわけで、どれも今まで実際にオペラで演じていらっしゃる宮本さんならではですね。
宮本:特にモーツァルトの、この4大オペラでは、バリトン歌手が様々なキャラクターを演じるのですが、そこにアーティストとして強い魅力を感じます。お調子者のパパゲーノを演じる同じ歌手が、二枚目ドン・ジョヴァンニを演じるなんて、すごいことだと思うわけです。これからもこの両極端の役と、そのあいだに位置するフィガロやアルマヴィーヴァ伯爵やグリエルモを演じていければと思います。それを1日で表現してみたいというのが、今回の企画の発端で、みなさまにも、モーツァルトの多様性を楽しんでいただければと思います。
「オペラの楽しみ」制作にあたって考えられたことは。
宮本:よくオペラは「敷居が高い」と言われますが、敷居とは何でしょう。僕たちオペラ歌手の大多数は、歌が好きで好きでたまらない。そんな大人たちが本気になって大好きな音楽にエネルギーを注いで創ったものを、少しでも音楽が好きな方が聴きに来るとすれば、もう十分に敷居は越えているのではないでしょうか。楽しく観ていただいた上で、「今度オペラに行ってみようかな」と思っていただけたら、最高ですね。
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原語で歌う「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」「コジ・ファン・トゥッテ」は、宮本さんオリジナルの日本語字幕つき。また「魔笛」は日本語バージョンですのでご心配なく。ぜひご夫婦で、お友だち同士で、お誘い合わせの上、音楽が大好きな大人たちが本気で創る「オペラの楽しみ」にお越しください。
[聞き手/文 田中玲子]