日時 | 2017年12月20日(水)14:00~14:40 |
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出演 | 小野明子(ヴァイオリン)、益田正洋(ギター) |
概要 |
実施会場:リハポート明石 食堂 対象者:リハポート明石入所者、デイサービス利用者 人数:80名 助成等:文化庁「平成29年度劇場・音楽堂等活性化事業」 |
【プログラム】
・エルガー:愛のあいさつ
・ドヴォルザーク:ユーモレスク
・F.カルリ:セレナーデOp.109-1 Larghetto espressivo-Poco Allegretto
・シューベルト:アヴェ・マリア
・藤井眞吾:曲集「はじまりの音楽」から~おぼろ月夜/一月一日/ゆりかごの歌
・モンティ:チャールダッシュ
・アンコール グルーバー:きよしこの夜
【レポート】
施設職員の方々はサンタクロースの衣装をまとい、また一部の聴いておられる方々にサンタ帽子を被せ、クリマスコンサートを盛り上げる演出をされて、皆でお二人の演奏家の登場を待ちかねていました。そして司会の方の挨拶に続き、会場の方々とともに一斉に「メリークリスマス」の掛け声で始まりました。
私はこのアウトリーチでの演奏家の方と会場の方々との交流を3つのグループに分けてみました。
1.2つの楽器の合奏の素晴らしを感じて頂く
2.聴く方々と演奏家の方とが楽しく交流する
3.それぞれの楽器演奏の特性を聴いて頂く
1.「エルガー:愛のあいさつ」はヴァイオリンの高音で柔らかい音色とギターの低音の響きとの合奏で演奏家からの会場の方々へ短い時間での音楽交流の挨拶で始まりました。第4曲の「シューベルト:アヴェ・マリア」は本当にこのアウトリーチにとても合った演奏です。ギターの音での前奏で始まりヴァイオリンの柔らかで深い音色と相まっての演奏は落ち着てじっくりと静かに聴き入ることが出来て皆さんが心の休まる1曲です。私もこの二つの楽器の組み合わせの合奏を聴くのは初めてです。弦楽器同士ですが、かたや弦を擦り(明るく高音)、もう一方は弦をはじく(哀愁帯びた低音)演奏スタイルの違いだけでなく、音量の差があるので合奏はどうなのかなと思っていました。でも、演奏が始まりプログラムが進むにつれ、お二人の選曲の良さ、音域とゆったりした演奏が今回対象のお年を召した方々にとても合っていることが分かりました。
2.第2曲の「ドヴォルザーク:ユーモレスク」でゆったりしたヴァイオリンのメロデイーに対してギターの音が繰り出される良いテンポの演奏です。一部の方はテンポに合わせて首を振ったり、車椅子の肘掛を指で叩かれたりして調子を取られているのが見られました。また、近くの車椅子の方は聴いている内に眠ってしまわれました。第5曲目の「藤井眞吾:曲集(はじまりの音楽)から おぼろ月夜・一月一日・ゆりかごの歌」。「おぼろ月夜」が始まると少数の方々が思い出されたように小声で歌い始められました。そして「一月一日」から「ゆりかごの歌」までは会場のほとんどの方々が一斉に小声で歌詞を思い出しながら演奏と一緒に合唱で楽しまれていました。
また、演奏のお二人がみなさまが歌い易いように演奏されたり、内向きになりがちな方々が笑顔で楽しくそして会場全体がとても盛り上がりました。演奏家から歌うことの示唆がなくても自然発生的に演奏に合わせて皆で歌うことは、演奏家と聴き手が一体となり、お互いに本当に心から音楽を楽しんでいるからだと思います。
3.第3曲目の「F.カルリ:セレナーデOp.109-1」は、ベートーヴェンと同時代のイタリアの作曲家で、このセレナーデの第1楽章はゆったりとしていて、第2楽章はリズムがありテンポの良い曲想であることを紹介しました。ギターの音色や響きが出ているようなお二人の演奏です。第2楽章はリズムに合わせて手拍子を取る方も見えました。第6曲目の「モンティ:チャールダッシュ」で曲想はとても元気が出る中に哀愁を帯びた旋律のある曲で、ヴァイオリンの緩急の音色と響きそして演奏力や表現力がとても良く出ていて、聴いておられる方も心を揺さぶられる演奏です。それとギターの音は小さいですが絶妙な低音で絡む、本当に曲想に沿った軽快でとてもテンポの良く、途中に哀愁のあり緩急のある演奏です。
私も初めて聴きましたが、イタリアの作曲家F.カルリはギタリストでもあった為、セレナーデの曲想はとても綺麗な旋律で、しかもギターの音色や響きがベースにあるのだと考えます。ヴァイオリンだけでなくギターの音色と響きが光る演奏です。ハンガリー舞曲をヴァイオリンの緩急ある音色と響きでの演奏で本当に会場を盛り上げる熱演です。
アンコールの呼びかけにクリスマスコンサートとして「きよしこの夜」がギターの前奏で始まり、ヴァイオリンの演奏の合図で、お二人の演奏に合わせて皆さん、職員の方々とともに全員で一斉に楽しく歌われていました。演奏家の方が退室されるときは名残惜しそうにされていた方がおられ本当に楽しまれた様子が良く分かりました。
特に聴かれる対象の方々のことを良く考えられた選曲と演奏、そして順序の良いプログラムの中で自然発生的に歌声が出たのは本当に演奏家の気持ちが伝わって、心の底から聴く方々との音楽を通じての楽しい交流が出来た証しだと思いました。
サポーター柴崎康久 観察レポートより
12歳で英国・メニューイン音楽院に単身留学し、メニューインに7年間師事。文化庁芸術家在外研修員としてウィーン国立音楽大、同大学院で学ぶ。 2000年メニューイン国際ヴァイオリンコンクール・シニア部門で優勝し、英国紙”ザ・タイムス”の一面トップを飾り一躍注目を集める。ビオッティ・バルセシア、フォーバルスカラシップ・ストディヴァリウス等のコンクールで優勝。またエリザベート王妃、パガニーニ、シゲティ国際コンクール等に入賞。1998年、ユニセフ・ガラコンサートにてメニューイン指揮/エッセン・フィルと共演し欧州デビューを飾る。同年、ニューヨーク国連本部で行われた「世界人権デー発足50周年記念会議」に招かれ、バッハ「パルティータ」を演奏。これまでワイマール響、ベルギー国立管、仏・リル国立響、ロンドン・モーツァルト・プレーヤーズ、ロンドン室内合奏団、リトアニア室内合奏団、サンカルロ歌劇場管等と共演。国内では佐渡裕、下野竜也、飯守泰次郎、広上淳一、飯森範親、小松長生、C・アルミンクらの指揮のもとNHK交響楽団、読売日本交響楽団、東京交響楽団、新日本フィル、東京シティ・フィル、大阪フィル等と共演する。Y.メニューイン、D.シュワルツベルグ、M.フリッシェンシュラーガー、小林武史、小林健次の各氏に師事。英国ギルドホール音楽院、メニューイン音楽院ヴァイオリン科教授。佐渡裕氏率いるスーパーキッズ・オーケストラ特別指導者。(財)地域創造・公共ホール音楽活性化事業登録アーティスト。CD「チゴイネルワイゼン」P: 野平一郎 (WWCC7595)、「ROMANCE」P:野平一郎 (WWCC-7827) 好評発売中。 |
長崎県生まれ。幼少時よりギターを始める。長崎大学を卒業後、ジュリアード音楽院修士課程にて学ぶ。クラシカルギターコンクールにて史上最年少で第一位。東京国際ギターコンクールにても入賞。シカゴにて行われた国際コンクールにてファイナリストなど、国内外で数々の賞歴を重ねている。多くのアーティストとの共演、ガラコンサートや音楽祭等でも客演。ロドリーゴ生誕100周年記念コンサートにて海外デビューする。財)東京オペラシティ主催のシリーズ「B→C」に招聘。ディズニー・オン・クラシックにもゲスト演奏家として参加。またスペイン・マドリッド王立音楽院でのリサイタルは絶賛を受ける。さらに美術史家の川瀬佑介氏と行う「音楽と美術を楽しむコンサート “ギターと絵画の交わるところ」を全国各地で開催。その意欲的な活動は多岐にわたる。発表したCDは約20枚におよび、ほとんどが月刊誌・レコード芸術にて特選盤として紹介され、読売新聞、東京新聞、婦人公論など各メディアからも支持を集めている。 現在最も精力的に活動する日本を代表する実力派ギタリストである。 益田正洋オフィシャルサイト http://www.masahiromasuda.com |