2010.11
音楽のある週末 第5回 梯 剛之 ピアノ・リサイタル
梯さんの体の中から自然に沸き上がって来た音楽。
「音楽のある週末」のコンサートシリーズも5回を数えた。シリーズがスタートした当初はあまり興味が持てず、1回冷やかしのつもりで来てみたら、とても素晴らしい演奏だった。しかし毎回、今度の演奏会は「はずれる」かもという不安が頭の隅をよぎる。演奏会が終わってみれば、結構満足して帰宅する自分がいた。今回の演奏会の入場者は、ざっと見た感じで350人位だろうか。その中で盲導犬をつれた方が6名いらしたそうである。年齢層も幅広かったようで、私の隣の方々は、家族みんなでいらしているようだった。
第1曲目「舟歌」が始まる。かなりの安全運転で始動だ。音楽は淡々と進む感じがあったが、ショパンの素朴さが感じる。
梯さんの使用したピアノは音が鳴りやすく、メロディがうき出てくるように聞こえとても弾きやすいように思えた。音量的にはさほど大きいとは思えなかったが、幻想即興曲では、すこしかげりのあるような音を混ぜたり、スケル ツォの2番では、ダイナミックスに変化を持たせたりと曲毎にいろいろ工夫がなされていた。音楽的な細かなことはよくわからないが音楽が聞き易くリラックスして楽しめた。
後半のソナタも集中力があり、しっかりした演奏でとてもよかった。
今日の一通りのプログラムを終えアンコール。これがとても素晴らしかった。梯さんの体の中から自然に沸き上がって来た音楽。音楽がとても自然でかなり自由な演奏のように思えた。アンコールは全部で5曲弾かれた。全部が素晴らしいが、個人的には1曲目の子守歌と3曲目のワルツNo.10が特によかった。
とても素敵な演奏会だった。
公演に関する情報
ウィークエンドコンサート
音楽のある週末
第5回 梯 剛之 ピアノ・リサイタル
日時:11月20日(土)14:00開演
音楽のある週末 第5回 梯 剛之 ピアノ・リサイタル
力強く優しいショパンの調べに、観客全員が酔いしれた午後
公演に関する情報
ウィークエンドコンサート
音楽のある週末
第5回 梯 剛之 ピアノ・リサイタル
日時:11月20日(土)14:00開演
日本音楽集団第201回定期演奏会
演奏会が始まり、舞台が明るくなった時、次々と舞台袖から出てくる団員のみなさんが輝いて見え、とても素敵でした。
初めて第一生命ホールでの演奏会を聴きに行きました。雨が降り、寒い中トリトンまでの道のりは長いように思いましたが、会場の入口はとてもわかりやすく、良かったと思います。入口を入ってからも、受付の方々が笑顔で明るく出迎えて下さいました。会場の案内もしてくださっていたので、初めての私も迷うことなく座席につくことができました。
今回の演奏会は自由席だったため、私は上から見える二階席へ行きましたが、会場を見渡す限り、空席が少し目立っていたように思えました。
演奏会が始まり、舞台が明るくなった時、次々と舞台袖から出てくる団員のみなさんが輝いて見え、とても素敵でした。
1曲目「子どものための組曲」
最初の方はゆったり軽やかに進んでいく音楽に一緒になって揺れていましたが、段々と激しくなりはじめ、生き生きと鳴り響く太鼓の音に釘付けになってしまいました。打楽器の演奏者の方々がとても格好良かったです。
2曲目「雨のむこうがわで」
今までの様々な演奏会を見た中で、初めて打楽器だけの合奏を聴いたので、少し不思議な感じがしました。普段目にすることはできないたくさんの種類の楽器もとても魅力的でした。演奏者自身も楽器になったような感じで視覚からも音楽を楽しむことができました。
3曲目「夢もよい」
語りが朗読のように聞こえたと思うと、次は感情のこもったお芝居のようになり、変化の速さに少し驚きながらも、その様々な世界観に圧倒されてしまいました。
4曲目「火の曲」
箏の音だけでなく、竜笛の音がとても響いていて、とても美しかったです。並びも十七絃から箏へ広がっており、音も広がっていくように聞こえました。
5曲目「ディヴェルティメント」
この曲は今回の演奏会で私の印象に一番強く残りました。私も少し練習したことがあったので、無意識に手がリズムをうっていて、とても楽しく聴くことができました。ゆったりとしていて優しくきれいな所も好きですが、全員が同じテーマを弾いている所は力強く迫力もあり、とても素敵でした。
今回の演奏会を通して、私個人の意見ではありますが、洋楽器よりも和楽器の音色が好きだと改めて感じさせられました。
また機会がありましたら、様々な演奏会に足を運びたいと思います。
公演に関する情報
〈TAN's Amici Concert〉
~200回記念シリーズ~《200の創造・未来へ》
日本音楽集団 第201回日本音楽集団定期演奏会
「集団・∞の表現力へ~河地良智氏を迎えて」
日時: 2010年11月17日(水)19:00開演
出演者:日本音楽集団 河地良智(客演指揮)
演奏曲:
長澤勝俊:子供のための組曲(1964年)
池辺晋一郎:雨のむこうがわで 4人の打楽器奏者のために
(打楽器:仙堂新太郎・望月太喜之丞・盧慶順・島村聖香)
福嶋頼秀:邦楽合奏のための組曲"夢もよい"~唯遊湯人の詩に寄せて・・・~
(委嘱初演)(語り:宮越圭子)
四反田素幸:火の曲(2004年)
佐藤敏直:ディヴェルティメント(1969年)
日本音楽集団第201回定期演奏会
あ、これは邦楽のオーケストラなんだ、というのは後になって思ったことで、次々に演奏される変化に富んだ音のアンサンブルにすっかりはまってしまった。
朝から雨の降る寒い日だった。友人からの電話で誘われたコンサート。棚から降ってきた"ぼた餅"ではなく"日本音楽集団の定期演奏会"のお誘い。お断りするのは勿体ないと、何の知識もなく軽い気持ちででかけた。
開演を待ってプログラムをめくる。解説を読んでみても見当がつかない。
今までの洋楽のコンサートなら、私でも何曲か知っている曲や作曲家(バッハとかドビュッシー)があるのだけど、まるで様子がちがう。
曲目は『子供のための組曲』、『雨のむこうがわで』、『夢もよい・・・』、『火の曲』、『ディヴェルティメント』。なんだか難しそう・・・と思った。
ステージは三段の舞台に設えられ、着物や袴姿の演奏家が登場する。奥に打楽器と三味線と琵琶、中間に尺八、手前には箏と十七絃がずらりと並ぶ。総勢19人の豪華なメンバーで、女性の淡い着物の色が美しい。
一曲目が始まった。箏、尺八、三味線、音色はどれも心地よく、初めてのようだけど、懐かしいようで、醸し出されるリズムは調子よく、打楽器のパッカパッカに体が弾む。あ、これは邦楽のオーケストラなんだ、というのは後になって思ったことで、次々に演奏される変化に富んだ音のアンサンブルにすっかりはまってしまった。
今まで私にとって、日本古来の楽器で演奏される音楽は、伝統音楽として、または日常の生活の中の音楽として耳にしてきた。それがこんなふうにおもちゃ箱みたいに楽しい「子供のための組曲」になってしまうなんて、本当に驚きのスタートだった。
次の『雨のむこうがわで 4人の打楽器奏者のために』には、またびっくりした。4人の演奏者の体が楽器になってしまって、好き勝手にやっているのではないかと思ったけど、楽譜をめくっているところを見ると、これはこういう音の世界なのだ。
続いて『夢もよい・・・』は唯遊湯人(たゆたふと)の詩に遊ぶ奇想組曲という不思議な曲で、休憩後の二つの演奏も玉手箱の連続だった。けれどもなぜか、耳にも心にもなじんでしまう。どこか私の体内のリズムに共鳴してしまう何かがあるようで、音楽を聴くという構えなしに体の中に入り込んでしまう。そして最後の曲、名残を惜しむかのようなエンディングは、もう一発、もう一発と打ち上げられた夜空に浮かぶ大玉の花火のようだった。
コンサートが終わってホールで演奏家の方々とTANの皆さんの温かいお見送りを受けて家路に向かう。今日の"ぼた餅"は美味しかった。美味しいものは洋食か和食かジャンルを問わない。TANと第一生命ホールという素晴らしい音楽のレストランが身近にあるなんて本当に恵まれている。 今後もいろいろなメニュー、楽しみにしています。
公演に関する情報
〈TAN's Amici Concert〉
~200回記念シリーズ~《200の創造・未来へ》
日本音楽集団 第201回日本音楽集団定期演奏会
「集団・∞の表現力へ~河地良智氏を迎えて」
日時: 2010年11月17日(水)19:00開演
出演者:日本音楽集団 河地良智(客演指揮)
演奏曲:
長澤勝俊:子供のための組曲(1964年)
池辺晋一郎:雨のむこうがわで 4人の打楽器奏者のために
(打楽器:仙堂新太郎・望月太喜之丞・盧慶順・島村聖香)
福嶋頼秀:邦楽合奏のための組曲"夢もよい"~唯遊湯人の詩に寄せて・・・~
(委嘱初演)(語り:宮越圭子)
四反田素幸:火の曲(2004年)
佐藤敏直:ディヴェルティメント(1969年)
ショパンの愛したプレイエル・ピアノ~弦楽器と奏でる美しい詩~
響きが衝突することなく、それぞれの楽器が掛け合いながら混ざり合うことによって音が広がっていく感じがとても聴いていて心地よく感じられた。
今年はショパン生誕200年ということでショパン関連のコンサートが多くで開かれていたが、今回の演奏会は一味違っていた。今回使用されていたプレイエル・ピアノは浜松市楽器博物館に所蔵されているものである。開場後まもなく小岩氏によるプレトークが行われていた。このプレイエルはアクションがシングル・エスケープメントであるためキーを完全に戻さないと次の音が出てこず、キーのタッチがデリケートであるため演奏が非常に難しいという。
しかしながらそういった繊細な楽器であるからこそ、小倉氏の演奏は本当に1音1音を楽器と対話しながら紡いでいっているという様子で、見ていても凄く引き込まれた。
オープニングの「華麗なるワルツ」では飛んだり跳ねたり、テンポを揺らしたりして、軽やかに音が転がっていったと思えば、「レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ」ではずっしり、しっとりとした響きで多彩な表情が見られた。しかしプレイエルの音はどんなに力強い場面でもどこか優しく、上品な響きをしていたのが印象的であった。
弦楽五重奏版の「ピアノ協奏曲 第2番」では、他の弦楽器とプレイエルの音色が溶け合っていた。響きが衝突することなく、それぞれの楽器が掛け合いながら混ざり合うことによって音が広がっていく感じがとても聴いていて心地よく感じられた。当時の楽器での演奏を聴くことで、ショパンがその音楽をつくった時に思い描いていた音や世界に近づくことができたように感じる。
それから、アンコールで演奏された弦楽五重奏版の「別れの曲」が新鮮だった。弦のピッチカートやトレモロが加わり原曲より軽やかで動きが伝わってくるアレンジで、この曲のまた新たな面を発見することができた。そして当時はもっとこんな風に自由にサロンや様々な場所で演奏がなされていたのだろうか、と色々思いが巡った。
このシリーズは静岡文化芸術大学との共催で、私は2008年の3月に開かれた『クララ&ロベルト・シューマン~愛、輝きと優しさ~』の公演も聴いたのだが、ここで使われていたグラーフのフォルテピアノと比べるとプレイエルの方がつくられたのが新しいということもあり、もう少し音が明るく輪郭がくっきりしているような印象を受けた。フォルテピアノだけ見ても、シリーズを通して聴き比べるとそこにも楽器の変化が見られて興味深かった。
歴史の中で楽器も聴衆も変化し続け、そして現在に至っている。音楽をひも解いていく中で、そんな歴史の大きな流れを会場に居合わせた人々は感じられたコンサートだったのではないかと思う。
公演に関する情報
〈TAN's Amici Concert〉
ショパンの愛したプレイエル・ピアノ
~弦楽器と奏でる美しい詩~
日時: 2010年11月9日(火)19:00開演
*小岩信治プレトーク 18:15~(20 分間)
出演者:小倉貴久子(フォルテピアノ)
桐山建志 藤村政芳(ヴァイオリン) 長岡聡季(ヴィオラ) 花崎薫(チェロ)
小室昌広(コントラバス)
演奏曲:
ショパン:
《マズルカ》 イ短調 作品17-4
《バラード 第4番》 ヘ短調 作品52
《舟歌》 嬰ヘ長調 作品60
《華麗なるワルツ》 変イ長調 作品34-1
《レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ》(ノクター ン) 嬰ハ短調 遺作
チェロとピアノのための《序奏と華麗なポロネーズ》 ハ長調 作品3
《ピアノ協奏曲 第2番》 ヘ短調 作品21 (ドイツ初版に基づく室内楽版)
使用楽器:
I. プレイエル作の歴史的ピアノ(パリ、1830年) 浜松市楽器博物館蔵