日本音楽集団第201回定期演奏会
報告:Sho/勝どき在住 2階席C2列
投稿日:2010.11.17
あ、これは邦楽のオーケストラなんだ、というのは後になって思ったことで、次々に演奏される変化に富んだ音のアンサンブルにすっかりはまってしまった。
朝から雨の降る寒い日だった。友人からの電話で誘われたコンサート。棚から降ってきた"ぼた餅"ではなく"日本音楽集団の定期演奏会"のお誘い。お断りするのは勿体ないと、何の知識もなく軽い気持ちででかけた。
開演を待ってプログラムをめくる。解説を読んでみても見当がつかない。
今までの洋楽のコンサートなら、私でも何曲か知っている曲や作曲家(バッハとかドビュッシー)があるのだけど、まるで様子がちがう。
曲目は『子供のための組曲』、『雨のむこうがわで』、『夢もよい・・・』、『火の曲』、『ディヴェルティメント』。なんだか難しそう・・・と思った。
ステージは三段の舞台に設えられ、着物や袴姿の演奏家が登場する。奥に打楽器と三味線と琵琶、中間に尺八、手前には箏と十七絃がずらりと並ぶ。総勢19人の豪華なメンバーで、女性の淡い着物の色が美しい。
一曲目が始まった。箏、尺八、三味線、音色はどれも心地よく、初めてのようだけど、懐かしいようで、醸し出されるリズムは調子よく、打楽器のパッカパッカに体が弾む。あ、これは邦楽のオーケストラなんだ、というのは後になって思ったことで、次々に演奏される変化に富んだ音のアンサンブルにすっかりはまってしまった。
今まで私にとって、日本古来の楽器で演奏される音楽は、伝統音楽として、または日常の生活の中の音楽として耳にしてきた。それがこんなふうにおもちゃ箱みたいに楽しい「子供のための組曲」になってしまうなんて、本当に驚きのスタートだった。
次の『雨のむこうがわで 4人の打楽器奏者のために』には、またびっくりした。4人の演奏者の体が楽器になってしまって、好き勝手にやっているのではないかと思ったけど、楽譜をめくっているところを見ると、これはこういう音の世界なのだ。
続いて『夢もよい・・・』は唯遊湯人(たゆたふと)の詩に遊ぶ奇想組曲という不思議な曲で、休憩後の二つの演奏も玉手箱の連続だった。けれどもなぜか、耳にも心にもなじんでしまう。どこか私の体内のリズムに共鳴してしまう何かがあるようで、音楽を聴くという構えなしに体の中に入り込んでしまう。そして最後の曲、名残を惜しむかのようなエンディングは、もう一発、もう一発と打ち上げられた夜空に浮かぶ大玉の花火のようだった。
コンサートが終わってホールで演奏家の方々とTANの皆さんの温かいお見送りを受けて家路に向かう。今日の"ぼた餅"は美味しかった。美味しいものは洋食か和食かジャンルを問わない。TANと第一生命ホールという素晴らしい音楽のレストランが身近にあるなんて本当に恵まれている。 今後もいろいろなメニュー、楽しみにしています。
公演に関する情報
〈TAN's Amici Concert〉
~200回記念シリーズ~《200の創造・未来へ》
日本音楽集団 第201回日本音楽集団定期演奏会
「集団・∞の表現力へ~河地良智氏を迎えて」
日時: 2010年11月17日(水)19:00開演
出演者:日本音楽集団 河地良智(客演指揮)
演奏曲:
長澤勝俊:子供のための組曲(1964年)
池辺晋一郎:雨のむこうがわで 4人の打楽器奏者のために
(打楽器:仙堂新太郎・望月太喜之丞・盧慶順・島村聖香)
福嶋頼秀:邦楽合奏のための組曲"夢もよい"~唯遊湯人の詩に寄せて・・・~
(委嘱初演)(語り:宮越圭子)
四反田素幸:火の曲(2004年)
佐藤敏直:ディヴェルティメント(1969年)