カルミナ四重奏団 Festa第4日〈#83〉
The Challengers-挑戦する者
カルミナ四重奏団の演奏、とても素晴らしかった! あんな素敵な体験ができるのなら、もっと日ごろから、まめにコンサートホールに足を運べば良かったと切に思う。
第一生命ホールを初めて訪れた。こじんまりとした、美しい空間だった。円い形のホールは自分にとって新鮮で、とてもおもしろかった。
今回良かったと思うことの一つは、世の中にこんなに素晴らしい曲があるということを知ることができたこと。まずシュナイダーだが、あんなに複雑で難解な構成で、それでいて楽しく、生き生きとした音楽を書ける人が現代にいるのには驚いた。今回の演奏で、弦楽四重奏3番は早くも私のお気に入りになってしまった。
ヴェレッシュも初めて聴いた。私はクラシック音楽は好きだが現代音楽はそこまで好きではなく、良いなあと思うことは稀なのだが、ヴェレッシュの四重奏曲には思わず引き込まれてしまった。知らない曲故、次にどうなるのだろうという期待と不安が常に交錯する、そんな魅力満載だった。ラヴェルをお目当てにいったはずが、スイスの音楽家の虜になってしまった。
このように感じさせられたのは、やはりカルミナ四重奏団の実力なのだろう。楽章が一つ終わるごとに、観客の興奮が高まるのが感じられた。私は演奏中、このコンサートが終わらなければいいのにと思っていた。いつまでも聴いていたい、そんな演奏だった。
ラヴェルの最終楽章が終わった後の割れんばかりの拍手は、お世辞でも何でもない、観客の素直な感想だ。私と同様に興奮していた人は、ひたすら手を叩きたかったはずだ。スタンディング・オベーションをしていた方もいた。私も立ち上がりたかったが、あまりの感動のため動けなかった。観客席が明るくなるまで鳴りやまない拍手。こんなコンサートは初めてだった。
彼らの強烈な個性は聴いていて楽しかった。溢れんばかりの表現を生きた演奏で実現する、そんな感じだった。まさに、音楽が生きている感じ。単調な、退屈な場面など一度も無かった。常に緊張が張り詰め、何かが生成されていく感じだ。といっても重苦しいわけではなく、自然に何かが生まれ、動き出し、華開いていくかのようだった。
良かったのは、彼らのコメントがプログラムに載っていたことだ。どのような想いで彼らは演奏をしていたのか、それをプログラムを通じて垣間見ることができた。音楽家とは音楽をもってのみ語る職業人なのかもしれないが、彼らに興味をもってしまった私にはとても嬉しいサービスだ。
最後のラヴェルが始まる前、彼らはどのようにラヴェルの楽譜を感じ、表現するのだろうという想いでいっぱいだった。バルトーク、ヴェレッシュ、シュナイダーで私達の期待は十分高まっていた。そんな期待を裏切らないカルミナ四重奏団は相当な実力者なのだろう。観客はとにかく聴きに聴き入っていた、そのはずだ。あんなに引き込まれていく聴衆を見ることも、そうはないだろう。貴重な経験だった。
私の第一生命ホールの感想は、カルミナ四重奏団のおかげで本当に良いものとなった。良い演奏会に出会えた幸福に感謝したい。
公演に関する情報
〈クァルテット・ウィークエンド 2009-2010 Festa〉
カルミナ四重奏団 Festa第4日〈#83〉
The Challengers-挑戦する者
日時: 2009年6月13日(土)18:00開演
出演者:カルミナ四重奏団[マティ-アス・エンデルレ/スザンヌ・フランク(ヴァイオリン) 、
ウェンディ・チャンプニー(ヴィオラ)、 シュテファン・ゲルナー(チェロ)]
演奏曲:
バルトーク:弦楽四重奏曲第2番op.17
シャーンドル・ヴェレッシュ:弦楽四重奏曲第1番
ダニエル・シュナイダー:弦楽四重奏曲第3番
ラヴェル:弦楽四重奏曲ヘ長調