グスタフ・レオンハルト チェンバロ・リサイタル
第1夜
報告:T.N./会社員/1階15列31番
投稿日:2009.05.21
第一生命ホールを訪れるのは初めてであったが、スタッフの方々の対応もよく、開始時間まであまり余裕のない状態で到着したにも関わらず、すぐ席に着くことができた。会場に入ってからしばらくの間はざわついていたホール内が、演奏の始まる数分前には誰ともなく一斉に静まりかえる様子から、自分も含め観客の期待感や緊張感が高まっていくのが分かり、生の演奏会ならではの雰囲気を早々に感じることができた。
私自身は、チェンバロの演奏をリサイタルで聞くのも会場を訪れるのと同様に初めてであったが、しばらく演奏が進んでルイ・クープランの組曲のクーラントであっただろうか、小気味よくメリハリの利いたリズムによってとてもリラックスできたように感じ、会場全体もそのような雰囲気になったように思われた。その後も普段耳にすることの少ない独特の音色に身を委ね、演奏を楽しんだ。
前半の演奏が終わり、休憩時間には奏者自らによる調律が行われた。鍵盤楽器がその場で調律されること自体が新鮮であったが、多くの観客が休憩時間中も外に出ることなくその光景に見入っていた。後にパンフレットを読んで分かったことであるが、奏者はその日その日のプログラムに合わせて理想となる響きを求めて微妙に異なる調律を行っているとのことであり、それを知らずにいたことが少し悔やまれたが、一音一音丁寧に、しかし素早く調律を行っていく様子が印象的であった。残念であったのは、前方の席には立ち入らないようにとの事前の注意にも関わらず何人かの人々が残り続けていたことであろうか。
後半の演奏では全体的な曲調も前半のプログラムと変わり、再び新鮮な気持ちで聴くことができた。個人的にはデュフリのラ・フェリックスのメロディとハーモニーが特に美しく感じられ、今でも思い起こされる。
演奏が終わると会場から惜しみない拍手が送られ、何度もそれに応える奏者に対してより一層の拍手がホール全体に響き渡っていた。この観客の一体感というのも生の演奏会ならではであろう。
奏者が立ち去った後、多くの観客が興味を示していたのが使用されていたチェンバロについてである。遠目でよく分からなかったが、楽譜も手書きであったという話も聞こえてきて、周囲からは感嘆の声があがっていた。間近で楽器を見ることもでき、聴覚、視覚の両方から最後まで楽しむことができたが、楽器を携帯電話で撮影する人が数多く見られたことや、それをスタッフの方が注意するといったやりとりがあり、演奏を聴き終えた後の満足感が少し薄らいでしまったことが残念であった気がする。観客へのマナーの徹底というのは本来会場に求めるものではないと思うが、リサイタルやコンサートに通いなれていない自分でも気になったこういった部分は、この演奏を前々から楽しみに来られた方にとっては、それ以上であると考えられることから、事前に何らかの対策を講じていただけたらと願う次第である。
演奏や会場の雰囲気は言うまでもなく、とても素晴らしいものであったことから、機会があれば是非また訪れたいと感じた。
公演に関する情報
〈TAN's Amici Concert〉
グスタフ・レオンハルト チェンバロ・リサイタル
第1夜
日時: 2009年5月7日(木)19:15開演
出演者:グスタフ・レオンハルト(チェンバロ)
演奏曲:
ルイ・クープラン:パヴァーヌ/組曲ニ短調
パッヘルベル:ファンタジアト短調/3つのフーガ
J.S.バッハ:組曲ヘ短調BWV823/
コラール・パルティータ「おお神よ、汝まことなる神よ」BWV767
アルマン=ルイ・クープラン:ラントレピッド
デュフリ:アルマンドとクーラントニ短調