第35回ロビーコンサート
ロビーコンサート第35回は2月22日(金)、ヴィオラの川本嘉子さんによる6回にわたったバッハシリーズの最終回だった。入場者160名以上となり椅子席はすぐに埋まり、多くの聴衆の方は立ち見で最後まで熱心に聞き入っていた。
川本さんの言葉によると「このシリーズは自分を見つめる修行にも似た時間であった」という。その熱く真摯な演奏に終始ホワイエは包まれた。プログラムはまず「無伴奏チェロ組曲第2番ニ短調BWV1008」。奏者が幼い頃から親しみ又、あこがれた曲であった由。しかし精神的にとても難しい曲であるとも語って下さった。2曲目は「無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番ハ長調BWV1005」。川本さんにして「この曲を演奏する時は非常に緊張する難しい曲」との事、各々約20分の曲である。
ヴィオラという楽器をソロ、しかも無伴奏で聞くという事が初めての自分にとって、このシリーズのこの日の演奏は深い感動を新しい発見の喜びの日となった。ヴァイオリンの音ともチェロの音とも勿論違う、その中間で奏者が体全体で奏でる音は美しく又、重すぎる事なく、まるで人間が静かに語りかけてくれる言葉の様な安らかさで聞き手の体全体に入ってくるようだった。その音色は空気を伝ってホワイエをひととき、今世界中で起きている悲しい事、理不尽な事、辛い事、すべてを忘れさせ、唯バッハの深遠な世界にひたれる「幸福感」そのものであった。奏者にとっても聴衆にとっても感無量なシリーズであった。
又、是非ともヴィオラの演奏をこのロビーコンサートで接したいと思った方は多かったに違いないと思う。途中のトークの中で川本さんが「時間になりましたらお仕事のある方はどうぞお立ちになって下さいね」との一言があった。彼女の温かいお人柄をしのばせるものだった事を付け加えさせて頂きたい。
公演に関する情報
第35回ロビーコンサート
日時: 2008年2月22日(木)
場所: 第一生命ホールロビー
出演者:川本嘉子(ヴィオラ)