第34回ロビーコンサート
報告:藤井利勝(TANサポーター)
投稿日:2008.01.22
慌ただしかった「偽」に代表される2007年に代わって、新鮮な気持ちで臨みたいという想いを抱いてのスタートです。それに相応しいバッハの無伴奏チェロ組曲と無伴奏ヴァイオリンソナタが選ばれました。
川本さんといえば、押しも押されぬ日本の代表的なヴィオリストです。昨年暮TVで拝聴しましたが、松本の小沢さん指揮の斉藤記念オーケストラの世界を代表する奏者の中で、ヴィオラのトッププレイヤーで活躍されていました。川本さんは第一生命ロビーコンサートには何度も出演されていますが、サポーターとして拝見したお人柄の一端を披露してみたいと思います。
昨年暮のアドヴェントセミナーのリハーサル中のある日、突然川本さんが姿を見せられました。(教え子が受講生であったのか)その際、受講生たちに美味しいケーキなどの差し入れがありました。みんな大喜び。一見近寄りがたい雰囲気も感じられますが、シャイで気さくな面をお持ちな方と拝見いたしました。(失礼ながら)それに、プログラムに川本さんの言葉で説明されていたように、中央区の第9に飛び入りで出演されるというような茶目っ気もお持ちです。これだけの大家でありながら。ますますファンになりました。
当日用意した席は100席強、地味なヴィオラだけに集客を懸念しましたが、固定フアンを中心に立ち見客も出て満席状況でした。途中退席客を含め123人。嬉しいコンサート初めとなりました。
さて当日の曲目ですが、川本さんが曲の合間にご説明されたように「新年のスタートはやはりバッハになりました。」独奏楽曲の古今の名曲であり,原典です。
第1曲目の無伴奏チェロ組曲第6番ニ長調は、通常のチェロの高音弦(E弦)にもう1弦足した弦楽器用に書かれており、高音部を中心にハイポジションを多用することで演奏が難しいとのことです。
律動的なリズムが心地よく輝かしい音楽で始まるプレリュード。高雅で落ち着いたチェロむきな曲でヴィオラの音にも相応しい。なんとも幸せな気持ちに浸るアルマンドに続く。クーラントは、速いリズムが流れるような指使いで快活さを訴え、元気が出てくる。以下サラバンド、ガヴォットと続き重厚な和音が胸に響く。優雅で美しく几帳面な曲作りが感じられる。スケールの大きいジーグで締めくくる。
第2曲目との間に川本さんのトーク。ロビーコンサートの楽しみでもあります。まず新年の挨拶と来客者への感謝の挨拶から、バッハ組曲の緊張感がほぐれます。「今日は、本来ニ長調なのにト長調で弾きました」との説明がありました。ト長調は人間的な幸せを意味しているとのこと。普段こういう専門的な話はなかなか聞けませんが、ロビーコンサートならではという感じでした。川本さんの飾らないトークと相まって楽しい雰囲気となりました。
2曲目は、ヴァイオリン無伴奏ソナタ第2番イ短調。第1楽章のグラーベは、自由で伸び伸びした感じです。第2楽章は、まさにバッハのフーガで長い曲ですが一音もないがしろにしない重厚さも感じられました。第3楽章は、フーガの緊張感の後のゆっくりしたアンダンテ。まなこを閉じ音楽を聴いている楽しさを味わう。ここでも旋律と和音の組み合わせでのボウイングの高度な技術を確認されました。第4楽章は、再び緊張感とリズムあふれるアレグロで曲が締めくくられた。
一流のプロが一生懸命演奏してくれた至福のニューイヤーコンサートとなりました。
川本さんありがとうございました。当日のサポーター皆ベテラン、準備、後かたずけ手際が良かったですね。
公演に関する情報
第34回ロビーコンサート
日時: 2008年1月11日(金)
場所: 第一生命ホールロビー
出演者:川本嘉子(ヴィオラ)