パシフィカ・クァルテット
報告:川澄直美(TANサポーター)1階14列25番
投稿日:2007.03.3
プロフィールによれば、シカゴ大学とイリノイ大学で、クァルテット・イン・レジデンスを務めているとのこと。日本では馴染みのない、クァルテット・イン・レジデンスとはどんな制度なんだろう、考え込んでしまいました。確か、ボルメーオ・ストリング・クァルテットもそうだったなと思い出しながら。
パシフィカQもボルメーオSQに続き、A(アーティスト)I(イン)R(レジデンス)のプログラムでSQWの演奏会の他、近隣の地域での小さなコンサートを10日くらいの間で何ヶ所かこなし、さらに、広島・鵠沼・名古屋・横浜でもコンサートが開催されていたとのこと。私が聞いた第一生命ホールでのSQWでは、そんなハードスケジュールを感じさせない。そして、それぞれの曲の個性を楽しませてくれたと、そんなことを感じながら聴いていました。
最初はメンデルスゾーン20歳の時の作品で、弦楽四重奏第1番。
若いときの作品とは思えないような凄みみたいのを感じました。確か第1バイオリンが誘導して終った第1楽章で、思わず拍手しそうになった人がいたような。そんな小さな音が、2楽章との間に聞こえたような感じがしました。思わずって感じがよくわかる。そんな演奏でした。
ヤナーチェクの弦楽四重奏第2番は晩年に作られたそうで、最初は「ラブレター」そして後に「ないしょの手紙」とタイトルが変更になったとのこと。その経緯をプログラムで読んだ後、演奏を聴いていたら、なんとも楽しい。ほほ笑ましい。ちっとも「ないしょ」じゃなくて全部、描きだしているように感じられました。苦手だと思ってた現代音楽なのに、そんなこと関係なくなってしまったようで聴かされてしまった。
そして、最後はベートーヴェン。これも晩年の作品。6楽章編成で、最後は大フーガ。
昨年の暮れに公開されたベートーヴェンの映画でも描かれていたけれど、作曲された当時、難しいと批判されていたとか。21世紀になって、難しい曲が易しくなるわけではないけれど、どんな演奏してくれるんだろうといった楽しみを聴く人が持っているのは、変わってきたことなんだろうなと思う。(確か、映画の中でのベートーヴェンは、この曲は未来の人のために作った。というセリフがあったような)気になる大フーガよりも、この日、私が一番ぐっと来たのは、第5楽章のカヴァティーナでした。それこそ思わず、涙が滲んでしまったほど。泣かされました。
この泣かされてしまうほどの底力は、レジデンスということで、生活と弦楽四重奏が一体となっている時間が確保されているのだろうか。だからこそ、積み重ねられた練習の賜物を、聴くことができたんだろうなと思ったら「ないしょの手紙」を聴き直したくなり、CDを購入してました。
パシフィカQは来年以降、ベートーヴェンを演奏するとか。楽しみが増えてしまいました。
公演に関する情報
第一生命ホール5周年記念コンサート
〈クァルテット・ウェンズデイ#54〉
パシフィカ・クァルテット
日時: 2007年2月21日(水)19:15開演
出演者:パシフィカ・クァルテット
[シミン・ガナートラ/シッビ・バーンハートソン(Vn)、
真澄パーロスタード(Va)、ブランドン・ヴェイモス(Vc)]
演奏曲:
メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲第1番変ホ長調作品12
ヤナーチェク:弦楽四重奏曲第2番「ないしょの手紙」
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第13番変ロ長調作品130「大フーガ」作品133付