アドヴェントセミナー&クリスマスコンサート
報告:藤井利勝/サポーター
投稿日:2006.01.5
~アドヴェントセミナー受講生による室内楽コンサートを聴いて
アドヴェントセミナーは、今年で5年目になります。このセミナーは、弦楽器を対象に9月にオーデイションがあり、それに選ばれた受講生達が、一流の講師に徹底的な指導を受けることを狙いとしています。
そして、クリスマスイヴの本番コンサートに向けて結成されたのがアドヴェント弦楽合奏団です。今日は、本番前のロビーコンサートです。今回の受講生にとっては、ロビーコンサートといっても初の晴れ舞台といえます。特に今回のロビーコンサートは、通常とは異なり、弦楽室内楽5曲で2時間の本格的コンサートです。平日の昼時でもあり、企画サイドとしては、聴衆を若干少なめに予想し80席ほどの椅子を用意しましたが、杞憂でした。急遽、予備の椅子を20席加えるほどでした。一部立ち見のお客様もありました。
1曲目・・シューベルト弦楽四重奏曲第10番変ホ長調D87
第2楽章のリズムが楽しい。第3楽章はいかにもシューベルトらしく、メロデイの豊かさに引き込まれる感じであった。第4楽章もリズム感が心地よい。
演奏は、音符に忠実でいかにもキチットした真面目な演奏という感じでした。2曲目以降も含めて、上質な室内楽でした。各曲に、講師が参加されて要所を引き締めていたということでもあろう。しかし、欲をいえば何か一つ足らない感じでした。これは、全曲の受講生ついて感じた私見でありますが、技術を別にしても、講師の先生達と相違しているのは、その演奏スタイルです。加えて表情です。これらは、プロの卵ととしてこれから成長して行くために経験していく過程であると思いますが。しかし、熱心さ、ひたむきさは良く伝わってきました。
2曲目・・ボッケリーニ弦楽五重奏曲ハ短調op37-1
講師を含めて全員女性であり、衣装がとてもカラフルで楽しい。
第1楽章は、ゆっくりしたテンポで始まり、一転アップテンポになり魅力的なリズムに引き込まれる。第2楽章は、日本の歌曲風牧歌的なメロデイで、癒される感じでした。
ボッケリーには、18世紀後半の作曲家で、優雅で明るい曲調に特徴があり且つ、当代随一のチェロ奏者であったといわれています。それだけに、チェロの特徴を活かした楽しい美しい曲でした。演奏も、これを裏付ける熱演でありました。ボッケリーニが好きになりました。
3曲目・・コダーイセレナーデへ長調op12
コダーイは、20世紀前半にかけて活躍したハンガリー出身の作曲家。バルトークとも付き合いがあったとのことです。現代作曲家にありがちな構えて聴くような曲ではなく、とても幻想的な雰囲気が印象的でした。特に、第2楽章のヴィオラで始まるメロデイがファンタジックでした。
トリオの中ではやはり、1stヴァイオリンが抜きん出ていたのは、当然か。聴衆の中に
、講師の鈴木理恵子さんの演奏を聴きにきたんです、という方がいたのも肯けるところでした。これがコダーイなんだ。いい演奏でした。
4曲目・・モーツアルト弦楽五重奏曲ト短調K516(第1.第3楽章)
これは、私の最も好きな室内楽曲でもあります。モーツアルトには、600曲を超える曲があります。(ケッヘルでは626)その中でも短調の名曲が多いといわれています。
代表的な曲として、交響曲第40番(ト短調)、ピアノ協奏曲K466(二短調)、レクイエム(二短調)それにこの弦楽五重奏曲(ト短調)等々です。しかし、モーツアルトの曲には、圧倒的に長調の曲が多いのです。短調の曲は一割くらいです。でも、印象深いのは、短調の曲ではないでしょうか。
演奏は、第1楽章の短調の特徴をうまく引き出したいい演奏でした。松原講師のリードが目立っていました。天才モーツアルトが紡ぎだした悲しみのメロデイ、余韻を残した演奏でした。
なお、長調と短調の比較を体感としてつかむには、同時期に作曲された弦楽五重奏曲第3番(ハ長調)と聴き比べてください。違いは、一目です。
5曲目・・ドヴォルザーク弦楽五重奏曲第2番ト長調op77(第1.第2楽章)
本日唯一のコントラバス登場。これで弦楽器のそろい踏み。コントラバスが入ることにより、曲の多様性が増す。
優美なメロデイの中にリズムを強調したドヴォルザークらしい曲で、演奏も好演でした。
受講生達は、12月14日からほとんど毎日本番に備えてのリハーサルが21日まで続きました。それも1日のリハーサル時間が長時間に亘りました。皆さん初めての経験とのことでした。出身大学、演奏団体もバラバラなのに、本番直前にはガッチリ一本化しました。とても良い体験でした。とは、受講生の言葉でした。
松原先生を中心として講師の先生方の熱意ある指導で、ここまでの水準にレベルアップしたのでしょう。技術的には、まだこれからでしょうが、熱心さがすぐ目の前で直に伝わる。これもロビコンの魅力でしょう。
これだけの内容と時間をかけての演奏。これが無料。クリスマスツリーをバックにしての演奏。まさにクリスマスプレゼントでした。受講生の皆さん、講師の先生たちありがとうございました。
公演に関する情報
アドヴェントセミナー受講生と講師の室内楽によるロビーコンサート
日時: 2005年12月22日(木)
場所: 第一生命ホールロビー
出演者:アドヴェントセミナー受講生・講師
演奏曲:
シューベルト:弦楽四重奏曲第10番変ホ長調D87
ボッケリーニ:弦楽五重奏曲ハ短調op37-1
コダーイ:セレナーデへ長調op12
モーツアルト:弦楽五重奏曲ト短調K516(第1.第3楽章)
ドヴォルザーク:弦楽五重奏曲第2番ト長調op77(第1.第2楽章)