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トリトン・アーツ・ネットワーク

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アーティスト・インタビュー

宮田 大(チェロ)

宮田 大(チェロ)

宮田大の新たなコンサート・シリーズ『Dai-versity』スタート!

 宮田大さんは、2009年の第9回ロストロポーヴィチ国際チェロコンクールに日本人として初めて優勝して以来、リサイタルやコンサート、テレビ出演などに大活躍のチェロ奏者です。
 その宮田さんの新たなコンサート・シリーズ『Dai-versity』が、年1回の予定で始まります。クラシック以外のさまざまなジャンルの共演者を招いて、ふだんの宮田さんのコンサートでは体験できない、多様性と意外な発見に出会えるシリーズです。
 第1回は「文楽」と題して、文楽の人形遣いで人間国宝の桐竹勘十郎さんと、気鋭の箏奏者LEOさんをゲストに、西洋のクラシック音楽と日本の伝統芸能を融合させます。

[聞き手・文:山崎浩太郎(音楽ジャーナリスト)]

黛敏郎さんの『BUNRAKU』では、桐竹勘十郎さんが遣う人形と共演されるのですね。

 宮田:この作品では、三味線の音や、文楽の太夫の語りがチェロで見事に表現されています。チェロの響きは人間の声に似ているとよく言われます。それも男性の音域ですが、文楽の太夫も男の人しかいない。男の人しかいないのに女性の役をするという面白さがあります。だから『BUNRAKU』でも、ここは高いパートだから、男の人が女の人の声のように歌っているのかなとか、いろいろと想像力をかきたてられる部分があるんです。ところが、そのことが確実に聴いている方に伝わるとはかぎらない。難しい現代音楽というだけで終わってしまう方もおられるかもしれない。今回は勘十郎さんが遣う人形がいることで、もっと場面を想像しやすくなって、よりこの作品の魅力がさまざまな方に伝わると思うんです。
 

20230226LEO_interview.jpg視覚的な動きがつくことで、音楽の構成や中身が、より理解しやすくなることはたしかにありますね。音楽を伴奏にするのではなく、互いをより際立たせる、相乗効果が生まれる。楽しみです。そして、もう一人のゲストのLEOさんとは新作や吉松隆さんの曲のほか、宮城道雄さんの『春の海』を演奏される。これは尺八と箏のために書かれたものを、尺八のパートをチェロで演奏するのですね。

 宮田:ヴァイオリンで演奏されることもありますね。どちらとも違う雰囲気になりそうです。尺八やヴァイオリンだと爽やかな朝とか、そういう曲のイメージがすごくありますが、チェロだと夕焼けになるかもしれない。空がオレンジがかった、1日の締めくくりの、切ないような音楽に変わるかもしれません。

チェロと箏の組み合わせによって、『春の海』の新たな一面を見られそうですね。ところで『Dai-versity』のシリーズ、この後はどんな内容を考えられているのですか。

 宮田:第2回以降も、私のいつものクラシックのコンサートとは違うジャンルに挑戦します。チェロは人の声のように歌える楽器なので、映画やミュージカルの音楽を取り上げる回も考えています。素晴らしい編曲家にお願いして、とてもよく知られた作品だけれど、チェロのために書かれたのではない曲をチェロで演奏したり。チェロ版では世界初演になるような音楽を、たくさん日本から発信したいですね。
 映画音楽やミュージカルにも物語がある。ストーリー性のあるものとクラシック音楽が交流することで、より親しみを持ってもらえればと思います。ほかにもいくつかアイディアを練っていますし、また、日本人として生まれたことを意識して、数年後の回ではあらためて、能楽師や歌舞伎役者の方などと共演してみたいです。

年に1回とはいえ、日々のコンサート活動をこなしながらの準備はたいへんですね。

 宮田:何か本当にやりたいことをやるためには、いっそうの努力が必要ですね。自分が好きなことをさせていただく代わりに、いろいろなものを費やさなければならない。そのなかから一つのコンサートができてくるのが、自分としても楽しみです。ふだんの自分とは違った形の自己表現ができるっていうのは、ストレスの発散にもなるんですよ(笑)
 

次回以降もほんとうに楽しくなりそうですね。では、おしまいに今回のコンサートについて、みなさんへのメッセージをお願いします。

20230226KiritakeKanjyuro_interview.jpg 宮田:勘十郎さんとは関西で共演していたのですが、東京での公演は今回が初めてですので、音楽と文楽の世界の融合を、ぜひ目の当たりにしていただきたいです。LEOさんの箏との2人で演奏するのも、そしてLEOさんの新作も、これも東京では初演になります。『Dai-versity』でしか味わえない芸術のコラボレーションによって、一つ一つのイマジネーションをお客さまにもキャッチしてもらえるような、客席から参加している気持になれるような、そんな雰囲気にしたいと思います。舞台と客席が近くて親密な第一生命ホールの特徴を活かして、劇場のようでもあり、クラシックの音楽の世界でもあるという、今までにないコンサートを楽しんでいただけたら嬉しいです。