絵本をホールの大きなスクリーンに映して、クラシック音楽の生演奏、朗読とともにお楽しみいただく大好評企画「音楽と絵本」。これまでに生まれたたくさんの作品の中から、アンコールにお応えして、名作「こんとあき」(林明子 さく)が帰ってきます!
「こんとあき」の音楽構成はもちろん、コンサート全体のプログラムを考えて下さっているピアニスト小川典子さんにお話を伺いました。
第1部と第2部、異なる魅力と工夫がたくさん
このコンサートでは、小川典子さんと「道」クヮルテット(弦楽四重奏)とのピアノ五重奏の演奏や、声優の森田樹優さんの朗読をお楽しみいただけます。第1部は、「いろいろな楽器の音色を聴いてみよう」と題して、ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロそれぞれの演奏を楽しめるプログラムになっていますね。
小川:弦楽四重奏やピアノ五重奏は、それぞれの楽器が音と息を合わせて演奏します。第1部では、その個々の音や音域、音色もお楽しみ頂きたいと思います。また、もっとも狭き門の職種のひとつである「声優」森田さんのお話も伺う予定です。
声優のお仕事って興味が沸きますね!森田樹優さんの「こん」は本当に今にもスクリーンから出てきそうで、あっという間に物語に惹き込まれますが、森田さんの印象をお聞かせください。
小川:森田さんは、普段は私たちと同じようにお話しされますが、ひとたび絵本を前にすると、森田さんの身体の中から、何人ものキャラクターが登場してきます。その表現力は、まさに圧巻で、圧倒されます。森田さんの輝くような声を生で聴くことが出来るのは、本当に素晴らしい体験です。インターネットや録音で聴くのとは、感動の度合いが全く違います。楽しみにして頂きたいです。
絵本にあわせてクラシックの名曲が...
『こんとあき』(林明子 さく/福音館書店刊)
「こん」は、「あき」のおばあちゃんが作ったキツネのぬいぐるみ。ある日、こんとあきはふたりで、おばあちゃんに会いに行くことになりましたが......。互いがかけがえのない存在であるこんとあきの冒険の物語。
音楽と絵本『こんとあき』の演奏曲はどのように決められましたか?
小川:『こんとあき』は優しくもあり、もの悲しくもあり、懐かしさもあり...大人も子どももそれぞれ心の中に持っているさまざまな感情を喚起させるお話になっています。それをさらに盛り上げるのが音楽。私たちは「ストーリーに素直に合った音楽を」と選曲しました。
ピアノを習っているお子さまにはお馴染みの曲から、はたまたドヴォルザークの傑作〈ピアノ五重奏曲〉から...と、耳になじみやすく、また、本筋のストーリーに寄り添うような選曲をしました。
『こんとあき』は、奏者たちも感動しながら演奏を進めます。初演時も、再演時も、本当は涙が出そうになるのを我慢しながら演奏しました。
ピアノ五重奏の演奏と森田さんの七色の声による、世界でひとつの『こんとあき』。どうぞお楽しみください!
♪♪ほかにもこんなことを伺ってみました♪♪
子どもの頃に好きだった絵本は?
◎『どうぶつ会議』(文:エーリヒ・ケストナー 絵:ヴァルター・トリアー)
買ってもらった時には難しいと感じましたがよく読んでいました。動物が会議をする様子がとても不思議で面白かったです。私自身、最近は国際会議に出席する機会が大変多いので、あの時に読んだ絵本が目の前に映し出されているような気持ちがします。
◎『いやいやえん』(作: 中川 李枝子 絵:大村 百合子)
子ども心にとても納得する内容でした。
ピアノは何歳から習い始めましたか? またそのきっかけは?
私の母がピアノ教師で、家にピアノが複数台あったものですから、食事の時間も「ぴあの~」と言って楽譜が読める前からピアノで遊んでいたそうなので、それがきっかけでしょう。
指使いがメチャクチャすぎて、目に余った叔母(やはりピアノ教師)が、私の母に「そろそろおけいこに通い始めたほうが良いのでは」と助言してくれたそうです。おけいこに通い始めたのは4歳半でした。
他の楽器を習われたことは?
他の楽器を習ってみたかったですが、ないのです。ヴァイオリンとヴィオラ...あの演奏姿に憧れがあるので、弾いてみたい曲はたくさんあります。英国では(※1)、ピアノ科の学生も副科(※2)を推奨されるので、英国のピアニストの友人たちはクラリネットが吹けたり、チェロが弾けたりするのですよ。うらやましいですね!
(※1)小川さんは英国を拠点に世界中で演奏活動を行っています
(※2)音楽の学校で自分の専門の楽器以外に他の楽器や歌唱を習うこと
ピアニストになろう! と思われたのは?
子どもの頃からずっと、私はピアノの道を進んでいくのだろうなあと思ってきました。でも、実際にピアニストになるのは、国家資格でも免許でもありません。何年何月にピアニストになった、と言うのはありませんが、私の場合、「リーズ国際ピアノコンクール(英国)」入賞をした日が、ピアニストになった記念日と言えると思います。それまで学生だったのが、突然プロピアニストになったような気持ちでした。
子どもの頃の楽器演奏で楽しかった思い出は?
私の妹は、幼少時ヴァイオリンを習っていて(美大へ進みましたが)、小学生の時に、一度だけ、姉妹で発表会で共演をしたことがありました。あまりリハーサルもせずに弾けたのは、姉妹だからかも知れません!楽しかったことを思い出しました。