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トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
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アーティスト・インタビュー

篠﨑友美(ヴィオラ)&岡本正之(ファゴット)

トリトン晴れた海のオーケストラ 第7回演奏会
ベートーヴェン・チクルスIV (全5回)

全5回のベートーヴェン・チクルスが進行中の、トリトン晴れた海のオーケストラ(晴れオケ)。その折り返しとなる第3回公演に向けたリハーサル期間中、今後の公演、そして「晴れオケ」への思いについて、ファゴットの岡本正之さんとヴィオラの篠﨑友美さんに話を聞いた。 
(聞き手:林昌英)

指揮者なしの「晴れオケ」は、室内楽に近い緊張感。 本番はいつも何が起きるか分からない?!

結成以来、多くのメンバーが変わらず参加し続けている「晴れオケ」。第一線の奏者たちにとって、この指揮者なしのオーケストラの何がそれほど魅力的なのだろうか?そこから独特のアンサンブルの秘密も浮かび上がる。

岡本:ここでは毎回すばらしい発見があります。リーダーの矢部達哉さんが僕らにアイディアを投げかけて、自分たちなりに考えて、音で受け答えするというやりとりで、とても充実した時間を過ごさせてもらってます。本当に身も心もヘトヘトになります(笑)

篠﨑:本当に毎回ぐったり疲れて、楽屋から出られないくらいです(笑)。でも爽快感もすごくて。本番はいつも何が起きるかわからないんですよ。もちろん指揮者がいるときでも瞬間ごとにいろいろ察しながらやっていますが、ここだとやはり気の遣い方が違うというか、個人をより出しているかもしれません。室内楽の延長みたいな感じですね。

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岡本:一人ひとりが、常に何が起きているかに耳をそばだてて、その上で自発的な発信をする必要があります。普段のオーケストラとはまた違う、たしかに室内楽に近い緊張感ですね。例えばシューベルトの八重奏曲やベートーヴェンの七重奏曲といった、大き目の室内楽曲を演奏する時の延長という気がします。だから、管・弦という壁はありません。弦が弓順や弾き方などの確認をしていても、僕らはそれをよく見て、弦がこうするなら僕らもこうしようとか、こういう音色が合うかなとか、相談せずとも行っています。

ベートーヴェン・チクルスに入り、ますます熱気が充満する「晴れオケ」。ここで演奏するベートーヴェンは何が違うのだろうか?

岡本:その前はしばらくモーツァルトが中心で、今はベートーヴェンで、初心に帰らざるを得ない作品群と言えます。そういった毎回の緊張感と、それを乗り越えた達成感が、オケの経験として蓄積されている気がします。特にベートーヴェン・チクルスが始まってから、各番号を経て「第九に向かっていくんだ」という高揚感を感じながら、毎回前向きな雰囲気で集まっています。

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篠﨑:各々準備は万全にしてきて、何回弾いてる曲でも練習し直して、流れがどう来てもいいような状態を自分の中では作っています。ヴィオラパートの役割の果たし方も、普段とは違います。全員レベルが高いので、その中でどういう風にヴィオラの役割を果たしていこうかと考え続けています。ベートーヴェンは、内声にとても重要な役割を書いています。内声の刻みとか、全然深みが違いますしね。

岡本:ベートーヴェンは、ファゴットもかなり出番が多く、かつ本当に無駄がないので、隠れることも手を抜くこともできません。常に体力勝負という面もありますし、エネルギーを吸い取られます。晴れオケは繰り返し全部ありでやりますし、体力・気力・知力、すべて総動員してみんなやっているんじゃないかと思います。

篠﨑:ヴィオラも毎回が体力勝負です。特に今やっている4番・7番(第3回の曲目)は運動量がすごくて、今回はいよいよやばいなと思って(笑)。お客さんにも、内声の刻みとかも注目していただいて、大変そうだなあと思ってくださると嬉しいです(笑)
もちろんほかの作曲家でも刻んだり和声を作ったりしていますけど、ベートーヴェンはより重要な感じがします。ヴィオラの役割を本当によくわかっているというか。伴奏がただの伴奏に回らず、メロディとも一体化して盛り上がるんです。

岡本:ベートーヴェンって、ある意味では必ず盛り上がるようにできていて、仮に指揮者がいまいちでもいい本番になったりするんです。うまく書かれているし、すごいエネルギーに満ちています。だからこそ、僕らが指揮者なしでやると、ものすごいことになるんじゃないかと期待しながら臨んでいます。演奏中に最大限にアンテナ張って、エネルギーをすべて使い果たして...そういうのが楽しみです。今後6番・8番・9番と続いていくと思うと、どうなっちゃうんだろうという感じですね(笑)

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「晴れオケ」は、「縦の線を合わせる」という次元はとうに超えて、むしろ表現を殺して合わせに行くことなく、「はみ出しても多少崩れてもいいから、個を出して、表現をしたい」という音楽作りを目指している。「失敗を恐れない」オーケストラに、聴衆も演奏者も魅了されている。

岡本:「晴れオケ」は、一人ひとりが能動的な音楽家であり、協調性と、感動する心を共有しようという前向きな人間の集団なんです。約束事に縛られたり型にはまるということではなく、演奏しながらアンテナを張って、流れに従ってそれに反応していく、爆発していくというプロセスです。そして、ある程度経験を積んだことで、より生き生きとした、今までになかった新しい感覚を目指しているんです。

篠﨑:例えば、普段のオーケストラでも、指揮者がヴィオラを聴いてくださいと言うと、一瞬で音が変わります。「晴れオケ」の場合は、小編成なこともあり、もともと皆さん積極的にいろいろなところを聴いています。そういう意味では、音色の面をもっと追及していきたいと思います。

岡本:おそらく、聴いているお客さまたちも、演奏家の一人になったような気持ちになっているのではないかと思うんです。舞台上のスリルや交わされている視線とか、そういうものに引き込まれているのかなと。
実をいうと、この「晴れオケ」、演奏しに来るんじゃんなく、聴きに来たいくらいなんです(笑)。そのくらい、私たちが本当に塊となったエネルギーを聴いていただきたいと思います。

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