日本を代表するクァルテットのひとつ”エク”と次世代クァルテットとの共演!!
クァルテット・ウィークエンド(SQW)シリーズに、2001年の第一生命ホールオープンから欠かさず出演しているクァルテット・エクセルシオ(以下エクQ)。2011年からはゲストを呼んで共演する「クァルテット+(プラス)」を5年間、その後「アラウンド・モーツァルト」シリーズを3年間にわたって行っていただきました。アウトリーチにも力を入れているエクQはホール近隣のコミュニティでもしばしば演奏しており、先日も江東区立小学校で4年生に向けてアウトリーチを行ったばかりです。日本でプロのクァルテットとして生きていくのは本当に大変なことですが、このようにキャリアを積まれて、クァルテットのひとつのロールモデルとなるエクQに、ぜひ若いクァルテットを紹介し、共演していただきたいとご相談して今回のシリーズがスタートすることになりました。第1回の次世代クァルテットとして選ばれたのは「クァルテット奥志賀(以下奥志賀Q)」。エクQ3人と奥志賀Q4人にお集まりいただき、お話を伺いました。
エクQが次世代クァルテットとして奥志賀Qを選んだ訳と
奥志賀Q世代から見たエクQ
まずはエクさん、次世代クァルテットとして、奥志賀Qを選ばれた理由を教えてください。
吉田:若手の中では、それぞれのメンバーの名前は以前からよく聞いていました。小川響子さん、石田紗樹さんは、エクがファカルティを務めていたサントリーホールの室内楽アカデミーの受講生で。アカデミーでは受講生とファカルティがいっしょに演奏するのですが、石田さんは当時ヴァイオリンで受講していたので、西野さんが休養していた時には、ファースト・ヴァイオリンとして私たちエクの中で演奏してもらったこともあります。
会田:私は、大友さんが講師を務められた別のセミナーでごいっしょしています。
西野:それぞれ素晴らしいという評判は耳にはしていましたし、個別に会ってすごいなと改めて思うこともあり、私たちとしても、刺激を頂ければと思います。
逆に奥志賀Qにとって、エクQは、どのような存在でしょうか。
小川:私自身は、室内楽アカデミーでエクの方々に先生として2年間クァルテットを教えて頂いて、その中で合わせの進め方から、音楽を作っていく方法まで、何から何まで教えていただきましたので、今回、一緒に弾かせていただけることをとても楽しみにしています。
石田:演奏はもちろん、お人柄の温かさも、こういう方々がクァルテットを糧として生きていかれる方々なんだ、と思いました。それから、これは共演させていただいた時に感じたことなんですが、個人のテリトリーがそれぞれにあって、それを重ねていくという感じのカルテットではなく、エクの方々は4人でひとつの大きな器を創られているような感じ。すごく長く続けていらっしゃる方々に加われたので、その大きな器に包まれながら心地よく弾けるように感じました。
石田さんは、奥志賀Qではヴィオラですが、今でもヴァイオリンも演奏されているんですか?
石田:いえ、留学先にヴァイオリンを持っていっていないので、今はヴィオラしか弾いていません。私は不器用なので、同時にやるとヴィオラの音色を追求できないと思って、転向する時にヴィオラ1本と完全に決めて海外に行くことにしました。向こうでは、もちろん室内楽も勉強していますが、ソロを中心に学んでいます。
ヴィオラを弾く時に、ファースト・ヴァイオリンの経験もあるのはいいですね。
石田:はい、ヴァイオリンだった頃からずっとヴィオラパートも弾いてみたいと思っていましたし、室内楽という点では、曲の組み立て方なども室内楽アカデミーで先生方にしっかり教わったので、ヴィオラに転向しても大変勉強になっています。アカデミーでの2年間の経験は、やはり大きく、貴重な時間でした。
大友:2年間、毎月、何かしらの機会がありましたからね。
西野:アカデミーで見てきて、一緒に演奏した上で思うのは、奥志賀のみなさんは、それぞれソロも素晴らしいのですが、さらにアンサンブルの能力があり、それを楽しんで演奏している。ですから、この奥志賀Qは間違いなくすばらしいだろうと。
会田:私は、クァルテットという存在を最初に知ったのが、エクQだったのです。東京クヮルテットでも、ハーゲン弦楽四重奏団でもなく、先にエクQでした。なぜかというと、最初にヴァイオリンを習っていた鷲見健彰先生のもとで、西野さんと吉田さんと同門だったのです。おふたりとも、もう卒業されていたのですが、西野さんは発表会にゲストとして出ていらして。この方は、卒業されて間もないけど、すでにプロとして活躍していて、クァルテット・エクセルシオとして活動されているんだよ、と聞いていました。ですから、ヴァイオリンを始めたばかりで、クァルテットとは何かということも知らないころから、「クァルテット・エクセルシオ」という名前は知っていました。
西野:何歳のころ?
会田:始めたのが5歳で、発表会が6歳ですね。その時のプログラムに、「西野ゆか」って書いてあって。まだ家にありますよ。だから、私が始めた時にすでにプロだった方たちと、まさかこうして共演させていただけるとは、という気持ちです。当時、ヴァイオリンをこんなに続けるとも思っておらず、いつの間にか続いたという感じだったので......。でも、きっといつかは一緒にと思っていて。私にとっては、原点に返るといいますか、とても嬉しいことです。
すごく意味がある共演になりますね。会田さんがヴァイオリンを始めた頃に、クァルテットとして活動をはじめたエクと、こうして20年以上たってクァルテットとして共演するのですから。
黒川:クァルテットで、日本でずっとやっていらっしゃるといったらエクセルシオ。この誰もが知るクァルテットと、結成5年目の私たちが共演させていただくのは光栄です。
私たちは、奥志賀のアカデミーでいっしょに過ごした絆があり、その良さもきっとあるので、共演させていただくことで、それをさらに良くしていけるのかなと思うと、ワクワクします。大友先生にお世話になった飛騨のセミナーでは、室内楽を先生方と一緒に組んで、とても濃い3日間を過ごします。4、50分が2回くらいしかないリハーサルの中で、大友先生は、1回通してすぐに、いかに良くするか、何を目標にやるかを、ぱっと指摘して作っていく。そういった場面を聴講させていただいて、本当にすごいと思いました。出てくる音も、導いてくれるような音で、どうやったらこういう音が出るのだろうと。自分もチェロ奏者なので、もっともっと勉強させて頂けたらと思います。
奥志賀Q結成秘話?
奥志賀Qは2014年結成と聞いていますが、もともと「小澤国際室内楽アカデミー奥志賀」の中で組んだクァルテットですね。
会田:奥志賀のアカデミーは、どのメンバーとクァルテットを組むかが行ってから分かるのです。2013年のアカデミーで、チャイコフスキーの弦楽四重奏曲第3番を演奏したのが最初です。その選曲も原田禎夫先生で、私は第1番が良いと言ったのですが、禎夫先生はそんな有名な曲はだめだと。
黒川:取り上げる曲は、すごい曲ばかりで。
会田:ドヴォルザークの第13番とか。有名どころを外してくるんです。それで、そのメンバーで2014年に「プロジェクトQ」のシューベルトの回に第15番で出なさいと、これも禎夫先生が決めました。
その時に、奥志賀という名前をつけたのですか?
会田:そうです。名前をつけなければいけなかったのですが、なかなか大変で。カタカナの名前をつけても、まず自分たちが覚えられない(笑)。それで、日本人だから、日本語の名前はどうかな、と思って、奥志賀で結成したので「奥志賀」ってつけたいねということで、禎夫先生に言ったら、いいねと言ってくださって。でも奥志賀は地名なので、どうなんだろうと......。ちょうど小川さんと私がサイトウ・キネン・オーケストラに参加している時だったので、小澤(征爾)先生に聞こうとなり、禎夫先生が聞いてくださったんです。そうしたら「すごくいい、でも町の人にお伺いをたてよう」と、小澤先生ご自身が電話してくださったのだと思いますけど、聞いてくださったところ、「いいですよ」と言っていただいたので、晴れて奥志賀という名前をつけることになったのです。いろんな方の助けがあってついた名前です。
エク:なるほどね。すごく覚えやすい。
石田:奥志賀Qが初めて結成された時のアカデミーを、私はヴァイオリンで受講していました。だから、最初のチャイコフスキーを演奏した時からこのメンバーを知っています。
その後は、どのくらいの頻度で活動していらっしゃるのですか。
黒川:最初の頃は、毎日あわせをしていました。
会田:すごく忙しくて。毎月本番があって、しかも違う曲で。
黒川:クァルテットの年という感じでしたね。それから、それぞれが留学したり、活動の幅が広がって、羽ばたいていきました。
会田:小川さんは、サントリーホール室内楽アカデミーでは違うクァルテットを組んでいましたし。
石田:2015年頃ですね。2つ掛け持つというのは、本当に大変だったと思う。特に、奥志賀Qでは、ヴァイオリンの会田さんと小川さんは、ファースト、セカンドを固定にしていないので。
会田:今回も、モーツァルトでは小川さんがファーストを弾きます。
だから、エネスコはファーストが会田さんなのですか?
奥志賀:(爆笑)それは、エクさんからの指示ですよね?
(エクも爆笑)
共演するエネスコの弦楽八重奏曲について
会田:大友先生から小川さんのところに、「パート分け決めました、これで」って、いきなり降ってきた。どれを弾くのか知りたくて小川さんから聞いてもらったのですが、予想に反したパートで。
まず、2つのクァルテットが共演する曲を、エネスコの八重奏曲にしようと思ったのは、エクさんのアイディアですよね?
大友:そうそう。彼女たちと共演するんだったら、エネスコにしようと僕が言い出したかな。
黒川:八重奏って聞いていたので、メンデルスゾーンだなと思っていました。そしたら、「エネスコやるんだ?」って。
大友:メンデルスゾーンを演奏してしまったら、後がないじゃないですか。それと、エネスコも良い曲で、ずっとやりたいと思っていた曲だから。
演奏したことは?
大友:やったことはないんです。
西野:エクではないです。
吉田:聴いたことしかないです。
エクQとしても奥志賀Qとしても初めてなのですね。
奥志賀:めったにやらない曲ですからね。
大友:それを、できる人たちだと思って。
パート決めはどのように?
西野:ヴァイオリンの4つのパートは、このクァルテットが1、2番で、このクァルテットが3、4番というのが、一番ノーマルなのですが、ミックスして演奏するのがおもしろいかなと思いました。ファースト・ヴァイオリンは奥志賀と決まっていたので。
決まっていたのですか?!
(全員爆笑)
会田:もちろん、相談はないですよ(笑)。ファースト・ヴァイオリンは、ものすごく難しいです。これくらい高い音なのか、と思って見たら、上に点々(......)があり、さらにオクターヴ上?!って。今まで出会った中で一番難しい曲かもしれない。
西野:ぶっちゃけ、別格でファースト(1番)が大変。4番も要になるところがあるので、結構目立ちます。それで会田さんが1番、小川さんが4番と。
ヴィオラとチェロのパートは?
吉田・大友:1番が奥志賀、2番がエクです。
石田:ヴィオラも、「なんで?」って感じなんですけど...。
会田:く、苦情??(爆笑)
吉田:だいたい八重奏曲をやる時は、下のパートをエクがやって、上のパートを他のみなさんにという形にしています。
石田:エネスコは、ヴィオラ1番が結構おいしいというか。
吉田:期待しています。
石田:最初、私が1番と聞いたとき、もうびっくりでした。音源を聴いてみて、え、これって1番ヴィオラ?と。この音が2番であることを願う、と思ったのですが(笑)。スコアの段を数えて、「あー5段目!!」って。いえ、楽しみなんですけど。先生たちの支えのもと弾けるのは。
会田:やはり下のパートが、しっかりしていないとダメなので、エクの皆さんに支えていただいて演奏できるのはうれしいです。いや、エクが2団体いれば良かったんですけど。
大友:チェロも、やはりどちらかというと1番がメロディーライン、2番は下でボンボンやっている感じだったと思います。最初から、結構音が分厚いですけどね。
一同:うんうん。分厚い。
石田:大友先生の音の運びが、好きです。
会田:すごいんですよ、本当にもう。
奥志賀(口々に):もう大好き! その上に乗って弾くのが楽しみです!
大友:2月に北杜市(八ヶ岳)で、エクと奥志賀で合宿をすることになっていますので、そこでエネスコも演奏してみるのが楽しみですね。
会田:エネスコの実演を聴いたことがないのですが、皆さんはありますか。
大友:サントリーホール室内楽アカデミーで取り上げられたことがありますね。竹澤恭子さんがファースト・ヴァイオリンを弾いていたことが強烈な印象で...。......そういえば、チェロはマリオ・ブルネロでしたね。
ブルネロほどのチェリストの演奏が、一瞬、記憶から飛ぶほど、ファースト・ヴァイオリンの印象が強いんですか。
西野:はいっ!!
吉田:本当に、コンチェルト並みの演奏で。
会田:どのコンチェルトよりも難しいかも。
石田:コンチェルトは自分が弾けばいいけど、八重奏だと室内楽なので、やることも多いしね。
会田:今までの中で一番難しいかもしれません。実は、ルーマニア国際音楽コンクールで優勝したご褒美で、ルーマニアに行ったことがあるのです。博物館になっているエネスコの家にも行きました。エネスコの誰も弾かないようなソナタを弾いたこともあるので、エネスコ自体は結構身近ではあります。ただ、今回は、音数が身近じゃなかった......。
大友:ブカレストに、エネスコ音楽院があるよね。
西野:エクQとして現代音楽祭に参加しました。
吉田:4、5年前ですね。
会田:私が行ったのは、2011年です。エネスコに親近感をもてるのは、そのくらいかな。
石田:でもそれは大きいよね。
一同:(口々に)それは大きい。
会田:本当にがんばりますとしか言えません。今は。
エク:それは、こちらもです。
それぞれの団体が演奏する弦楽四重奏曲について
第1部はそれぞれの団体による弦楽四重奏曲ですが、奥志賀Qが弾くモーツァルトのヴァイオリンパートは、エネスコが決まった後に、ファースト、セカンドを決めたのですか?
小川:会田さんにファーストを、と言ったんですけど、お願いだから、と言われて......。
会田:エネスコのファーストは、数えるほどしか休みがないんだもん。
石田:体力を残しておきたいよね。
プログラムは、まず共演するエネスコが決まってから、それぞれの曲を考えたわけですね。奥志賀として、モーツァルトK428にした理由は何でしょう。
会田:最初は、これまでに演奏したことあるモーツァルトの曲を出したのですが、このシリーズですでに他のクァルテットが弾く予定になっていて。
小川:「ハイドンセット」の中で考えようと思い、それで、これが良い曲なんじゃないかと。
石田:私は大学時代、自主的に組んだメンバーで最初に勉強したクァルテットの曲で思い出深いです。ヴァイオリンでしたが。温かみがあってすごく好きです。
他のみなさんは、それぞれ弾いたことがあるのですか?
奥志賀3名:ないです。
黒川:「不協和音」はすでに演奏したことがあったので、初めての曲に挑戦しようとなりました。
奥志賀Qとして、守りには入らないということですね。
会田:守れよって!!(一同爆笑)
今は、海外にいるメンバーもいる中、なかなか合わせをする時間が取れないのではないかと思いますが、この仲の良さ、信頼感の強さから、攻めていってもいいものができるのではないかと感じますね。エクQの弦楽四重奏曲は、ヤナーチェク「クロイツェル・ソナタ」ですね。
大友:後半のエネスコに行くのに、(ヨーロッパの)東の方にだんだん行こうって感じだったんじゃないかな。
吉田:ここ数年、第一生命ホールではモーツァルト中心だったので、違った雰囲気の曲を楽しんでいただけると思います。
お客さまの中には奥志賀Qを聴くのは初めてという方もいらっしゃるでしょうから、お互いにそれぞれのメンバーの紹介をしていただけますか。ヴァイオリンのファーストとセカンドは、いつも会田さんと小川さんで仲良く決めるのですか。
会田:そんなことはない、って小川さんの顔に書いてありますね。
石田:曲によって変えていると思います。ベートーヴェンやモーツァルトといった古典は、小川さんがファーストを担当していることが多いよね。
黒川:ふたりのキャラクターが全然違うので、曲も全然違う感じになります。奥志賀のアカデミーでは、楽章ごとにファーストとセカンドを換えるのが決まりなので、同じ作曲家でも変わったりして。
会田:楽章で交代するから、レパートリーは増えないんですよね。(苦笑)
黒川:この楽章はこちらがファーストがいいと決めて演奏するのですが、それぞれの歌いまわしとか歌心の違いが出るので、私も弾いていていつも楽しいし、おもしろいなと思います。ふたりとも、お互いの違いが分かっているからこそ、それぞれがパートを換えた時に、弾き方が変わっているんだなと思います。
石田:器用じゃないとできないよね。
お二人は自分たちのキャラクターの違いは意識しているんですか?
会田:いやもう本当に、小川さんはヴァイオリニストとして素晴らしくて。情熱があって。
小川:私は、会田さんはずっと前から尊敬している存在なので、自分がファーストを弾くときは、申し訳ない気持ちがあるくらい。大学も、会田さんは桐朋、私は芸大で、先生も違うので、アプローチのしかたが少しずつ違って、そこがまたいいところ。そういう部分で補強しあえる関係でありたいなと思っています。
会田:こんなに違うタイプなのによくクァルテットを組んでいるね、と言われるんですよ。悪い意味ではなくて。本当は、似たタイプで組んでいたら、楽は楽だと思います。だから、今、小川さんが言った通り、全く違うものを持っているからこそ、もちろん難しいこともあると思いますが、それによってお互いが刺激をしあって良くなっていく。私にとっては、この4年間くらい良い勉強になっています。先生から教わるのではなく、こうして同世代で弾きながら学んでいく、この経験は良かったと思います。みんな海外に行ったりと忙しくなるけど、奥志賀Qはおもしろいし、続けていきたい。みんなに置いていかれないように、がんばりたいと思います。
吉田:素晴らしいですね。
ヴァイオリンを紹介していただいたところで、次は、チェロの黒川さんについてはいかがですか。
小川:大きく分けて素晴らしい面を2つお持ちだと思います。まずメロディを歌うのが本当に素晴らしい、そして、女性なのに、太くていい音で、音楽を運んでいってくれる。そういったところがすごく好きです。
黒川:照れる(笑)。
会田:黒川さんは、このクァルテット随一のヴィジュアル系で。お客様を集める時、実咲さんが出るならと来てくださる方も(笑)。ヴィジュアル系というと誤解がありそうですが、実力もある。だから奥志賀Qには、色々な個性があるねと言われます。黒川さんの音に慣れてしまうと、他の方と組むと、「あれ? チェロが聴こえない」ということがあります。自分の歌を持っていて、低音から発せられる歌にとても安心感があって、いいなと思います。
石田:見た目は女性的で柔らかい印象ですけど、とても太くてたくましい音がする印象があります。すごく男らしい時がある。
全員:あるあるある。
会田:でも、ちゃんと色気も持っているから(笑)。
では最後に、最近ヴィオラとして奥志賀Qに入られた石田さんについて。彼女にお願いしようと思った決め手は?
小川:石田さんは私の大学の先輩なのですが、学内で選抜された生徒だけが出演する室内楽演奏会に毎年出ていらして、本当に尊敬して背中を追いかけている存在だったんです。その演奏会に、ある年、ヴァイオリンとしてもヴィオラとしても出ていらして、それを聴いて、本当にすごいなと思って。ファースト・ヴァイオリンを演奏されていた時代に、すでにヴィオラでも、やりたいと思うことを全てやっていらしたのです。室内楽ではこういうヴィオラを弾いて欲しい、というような演奏をされていて。私は、ヴァイオリンどうしで一緒に弾いたことがありますが、石田さんのヴィオラとも共演したいですと言った記憶があります。
黒川:「クァルテット奥志賀」という名前なので、同世代で奥志賀のアカデミーを経験している方がいいなとも思いました。ちょうど、石田さんがヴィオラで留学するという時期で、石田さんのヴィオラはすごく良いと色んな人からも聞いていたし、私たちのことをよく分かっているから、絶対大丈夫だなというのがありました。それこそ、クァルテットでずっとヴァイオリンを弾いていたから、こういう風に弾いてほしいということを、すごくよく理解してくれているのです。
石田:アカデミーの時からずっと見ているクァルテットで、尊敬していたので、そこに入るというのは畏れ多いという気持ちはありました。音楽創りへのこだわりが強いイメージのあるクァルテットなので、もちろん私が入ることでぶつかることもあるかも知れませんが、そのこだわりの音の重なり合いに加われることがすごく嬉しい。楽しみだなと思って「お願いします!」と言いました(笑)。
エクQのみなさまから奥志賀Qへ、エールなどはありますでしょうか。
西野:今、お話を伺っていると、ポジティブな面しかないですよね。メンバー交代がありましたが、石田さんが入って新鮮な気持ちで前を見ていることが素晴らしい。
エネルギーが伝わってきましたよね。
奥志賀:エネルギーだけはある。
会田:音も大きいと思う。モーツァルトでも。
石田:同世代の友人から、「このメンバー、アツい...(笑)」っていわれます。
会田:みんな、言われる、言われるっていうけど、私は言われないから、私のせい?
石田:いや、揃っちゃったって感じかな。会田さんとは同じ学年なのですが、私たちは、わりとキャラクターが似ているんですよ。
会田:本当に石田さんが来てくれてよかった。この女性4人になっての本番はまだなのですが、どういう感じになるのか、というところですね。一応、4人で写真を撮る時に、服だけはかわいくしておきました。(一同爆笑)
第1部は、元気いっぱいの奥志賀Qと、ベテランのエクQ、それぞれの味わいを弦楽四重奏曲で聴き比べ。第2部は2つの団体ががっぷり4つに組んだエネスコの弦楽八重奏曲が今から楽しみです。