金子:バルトークという作曲家に「むずかしい」という先入観をお持ちの方も多いのは仕方ないことですが、彼の作品を階段にたとえると、重く複雑な大作は登った一番先。最初からそこに行くとびっくりしてしまうのは当たり前です。一歩一歩発見を重ねていきながら、バルトークの世界観を理解していけば、いきなり当たるのと全然違ってくるはずなんです。
そこで今回は、パワフルで濃厚多彩な傑作〈ピアノ・ソナタ〉の魅力へ向けて、初めてのかたにもわかりやすく階段を登ってゆきます。
金子:バルトークが影響を受けた曲もいろいろ演奏します。バッハを弾いたら、バルトークがバッハに捧げた曲を弾き...あるいはリスト《ラ・カンパネラ》に聞こえる鐘の音と、バルトーク《豚飼いの踊り》に聞こえるバグパイプの音を比べながら「音のイメージから風景が見えてくる」その共通点と違いをみてみたり。
さまざまなアプローチの先に開かれる〈ピアノ・ソナタ〉の世界。金子さんの演奏と解説でその魅力がぐっと目覚ましくわかるはず。これはぜひご体験を!
[聞き手・文:山野雄大(音楽ライター)]
バルトークってどんな人?
バルトークはハンガリー出身の作曲家。ハンガリー民謡を集めて研究し、自身の作曲に活かしたことで有名です。ピアニストでもあり、今回金子さんが演奏する《ミクロコスモス》《子供のために》といったピアノ教材も残してくれました。6歳の頃からハンガリーで生活し、小さな頃からバルトークを弾きながら育ってきたという、自他ともに認めるバルトーク・マニアの金子三勇士さんならではのプログラム・演奏にご期待ください!