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トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
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アーティスト・インタビュー

©藤本史昭

田崎瑞博

クァルテット・ウィークエンド2014-2015
古典四重奏団 ムズカシイはおもしろい!!
~古典四重奏団のモーツァルト全曲2014の1~3

全6回2年にわたってモーツァルトの弦楽四重奏曲全23曲を演奏する、古典四重奏団の「ムズカシイはおもしろい!!」の、いよいよ後半3回が始まります。チェロ奏者で演奏前のレクチャーも担当する田崎瑞博さんにお話を伺いました。

レクチャーでより楽しい、モーツァルトの弦楽四重奏曲

レクチャーのテーマが決まりました。

レクチャーでは、モーツァルトの幼少からの歴史を追ってきました。今年の第1回は、昨年に引き続き、ハイドンとの関係性を、そして第2回、第3回ではモーツァルトならではの特性を取り上げようと思っています。
1回目のテーマは、「本当の意味での【パパ】は、レオポルトか、ハイドンか~その2」。モーツァルトが弦楽四重奏曲を書くにあたって、やはり一番影響を受けたのはハイドンですから、ハイドンの天才性を抜きには語れない。ですから、モーツァルトが主人公なのに変な話ですが、ハイドンの素晴らしさを伝えたいのです。それがなければ、「ハイドン四重奏曲(ハイドン・セット)」は生まれなかったわけですから。
モーツァルトもその時代の作曲家の例にもれず職人です。幼い頃から旅をして、色々な地方の多くの作曲家の作品を吸収し、自分なりに咀嚼して、さらに高いものを作ることができました。ところが、ハイドンの弦楽四重奏曲には、それ以上のものを見つけ、そう簡単には真似はできないと思いながら、それを超えてゆく。ハイドンを驚嘆させるに至る作業が、弦楽四重奏の歴史のポイントです。この出会いがなければ、後の傑作、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲につながらないわけですから、そこを熱く語りたい。


クァルテット・ファンとしてどうしても見逃せない、モーツァルトの傑作「ハイドン・セット」が生まれたという世紀の瞬間ですね。

しかもハイドン・セットの初演の場に、ハイドンもモーツァルトも、モーツァルトの父レオポルトもいた。ハイドンに賛辞をもらい、本当のパパであるレオポルトにとっても、最も輝かしく幸せな瞬間だったろうと思いますね。
モーツァルトは、ある時点でハイドンを師とするところから離れていきますが、その特性を考えるのが次の第2、3回目です。ハイドン・セットの中においても、最終的にモーツァルトがどこに向かっていったのか、何を目的としたのか見えてくる。そこにはすでに模倣ではなく、まったく独自の作品があります。
私たちは演奏家なので、作曲家は何をもって美しいと感じていたか、ということが一番大事だと考えます。その美意識を見つける作業が最も難しいし、最も楽しい。それをみなさんにお伝えしたいと感じています。


レクチャーは2回目が「ミューズへの恭順」、3回目が「ミューズへの反逆」。この「ミューズ」は、その美の象徴と考えていいでしょうか。

はい。モーツァルトの信条は「どんな場合でも音楽は美しくなければならない」ということです。それはいわば、ミューズ、つまり「音楽の神」の世界に近づいていくことでした。ただひたすら子どもの頃から、その技を磨き、誰よりも自分がその高い場所に到達できると感じていたことでしょう。「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」は、「ミューズへの恭順」の最たるもの、完璧な音楽ですね。しかし、それだけでは物足りなくなった瞬間があるわけで、それが、この「ミューズへの反逆」。「ホフマイスター」と「不協和音」から、その片鱗を少しご紹介します。モーツァルトがあと30年間生きていたら、どんなものを作ったのだろうと思いますね。

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田崎さんの語り口は分かりやすく、それでいて熱い想いにあふれています。演奏を交えてのレクチャーは、弦楽四重奏曲は普段はあまり聴かないという方にも、楽しんでいただける道しるべとなることでしょう。