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トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
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アーティスト・インタビュー

北村朋幹

昼の音楽さんぽ 第18回 
北村朋幹ピアノ・リサイタル

平日お昼の60分間、気軽に音楽を楽しんでいただく「昼の音楽さんぽ」シリーズに、ピアニスト北村朋幹が登場します。夏休み期間なので、ピアノを習っている小学生以上のお子さまにもぜひ聴いてほしい公演です。

若き音楽の詩人が「アリア」をテーマに紡ぎだす物語

14歳で東京音楽コンクール優勝
2005年、14歳の時に東京音楽コンクールで優勝されて、一躍注目を集めました。

テープ審査合格だけで、「やった! 東京文化会館で20分も弾ける」と喜んでいました。まさか優勝なんて夢物語。あのようなホールできちんと弾かせてもらうのも初めてでしたし、好きな曲ばかり選んで演奏しました。

当時からテーマ性のあるプログラムが印象的でした。ずっとピアニストになりたいと思っていましたか。

ピアニストという概念について考えたこともなかったですね。ただ、幼稚園児の頃から、「ピアニストになりたい」とは言っていたようです。コンクールの後、次々と演奏会の機会をいただいたのですが、高校生くらいになると「こんな幸せなことがずっと続くわけない」と思い始めて。だからこそ、この機会をいただいている間に、自分のやりたいことを全部やってしまおうと思ってプログラムを考えていました。

東京芸術大学に入学した後、ベルリンに留学されました。

なるべく早くヨーロッパには行きたかったのですが、高校2年生の時に、伊藤恵先生に教えていただくようになり、音楽だけでなく色々なものに対する考え方ががらりと変わりました。それで、コンサートもしながら先生にも教えていただきつつ、将来のことを決めようかなと。今、ベルリン芸術大学で教わっている師匠(ライナー・ベッカー氏)は、伊藤先生と同門で、先生から貸していただいた彼のライブ録音が本当にもう、有無を言わさぬドイツ音楽。いまだにあのような演奏には出会ったことがありません。特にベートーヴェンとシューマンに感銘を受けて、もうこの先生しかいないと思いました。今の人間の手による生きた音楽なのに、本当にいい伝統を受け継いできたベートーヴェン、ドイツ人の複雑な心の動きとしか言えないようなシューマンなのです。

テーマはアリア(歌)
1時間だからこそ、挑戦したいプログラム
今回のプログラムについて教えていただけますか。

テーマはアリア(歌)です。ショパンがノクターンという形式で書いたアリアから始まって、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第31番第3楽章『嘆きの歌(アリオーソ)』、そこから派生してバッハのアリオーソ。ブラームスは大好きな作曲家ですが、最も自分の心を誰かに伝えるような、実は伝えなくてもいいような部分まで見えてしまう音楽。この幻想曲集も、情熱的な部分もあるのですが、実はそれよりも、心の柔らかい部分が、どんどんあふれ出てきて歌になってしまうところが何か所かあります。

僕はクリストフ・エッシェンバッハが大好きなのですが、特に先日ベルリンで聴いた彼の指揮によるブルックナーのシンフォニーが、彼の心が開いていて、音楽が直接こちらに伝わってきて、打ちのめされるほど素晴らしい経験でした。

この4曲とも、心が本当に開いていないと弾けない曲だと思います。そういうものを自分でも演奏してみたくなりました。最初のショパンは、内容は内向的にもかかわらず、1音目から心が開き切っていないと音が出せないような曲。何もないようなところに問いかけるような音楽というか。今考えただけでも少し自分の心が開くような気がします。1時間の公演だからこそ、やってみたいプログラムですね。誰よりも僕自身がこのプログラムを楽しみにしているかもしれません。

夏休み期間なので、ピアノを習っている小学生以上のお子さまにもぜひ聴いてほしい公演です。ピアノを弾いているお子さんに、練習方法などのアドバイスをいただけますか。

弾きたくない時には弾かない。もちろん僕も小学生の頃はすごく練習していましたけど、義務感で練習しても曲を嫌いになるだけで、本当にもったいないと思います。弾きたいと思う曲を弾くのが大事。僕は楽譜を読むのが好きで、色々な曲をかたっぱしから弾いていました。そうして、いいなと思える曲に出会える瞬間というのが、もしかしたら音楽をやっていて最も幸せな瞬間かもしれませんね。

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お昼のひととき、若きピアニストが心を開いて投げかける音楽に、こちらも心を開いて耳を傾け、特別な時間を過ごしていただければと思います。