平日昼間の60分間にお楽しみいただける「昼の音楽さんぽ」。3月に登場するのは、今をときめくメゾソプラノの林美智子さん。公演の聴きどころを語ってもらいました。
言葉が直接心に響いてくる歌
「昼の音楽さんぽ」は、お子さまのいる主婦の方や、ご年配の方にも気軽にコンサートを聴いていただけるように、平日のお昼におこなっているシリーズです。
そういう企画はうれしいですね。本当にくつろいで帰っていただきたいと思います。
プログラムの前半は、武満徹作曲の歌ですね。
私と同世代の主婦の方やご年配のお客様が多いとうかがいましたので、心に響く歌をと考えた時に、最初に武満徹さんの曲が思い浮かびました。作曲された当時も、今も、そしてこれからも、言葉が直接心に響いてくる歌ばかり。誰もが見たことのある風景や、ぬくもり、懐かしさ、優しさなどが、ふわっとシンプルに歌われており、ふだん見逃しているようなことに気づかされたり、希望を抱くことができたりします。3月ですしね、「三月のうた」も入れて(笑)。
ベル・エポック(美しい時代)のフランス歌曲
後半はフランス歌曲です。
ベル・エポック(美しい時代)のフランス・パリの作曲家の作品から、私がとても好きで、美しいと思う歌曲を集めました。社会も芸術も豊かだった良き時代の背景を感じさせる何かを秘めた作曲家ばかりで、不思議と聴いたことがなくても楽しめる歌ばかりです。フランスものは、今の自分の声域、音色に合っているように思います。「カディスの娘たち」は、同じ詩に2人の作曲家、ドリーヴとヴィアルドが作曲しています。比較して楽しんでいただけたらと思います。
最後は、どこかで聴いたことがあると安心していただけるように、名曲ぞろいのオペラ「カルメン」の中でも一番有名だと思われる「ハバネラ」を。ただ、初めて聴くかもしれないフランス歌曲も、お話をまじえながら、ごくふつうに楽しんでいただけるように歌わせていただきますので、どうぞ構えることなく足を運んでいただけたらうれしいです。
もともと小さい頃からお母様がよく歌って聞かせてくれていたそうですね。
日本歌曲や童謡をよくお風呂で歌ってくれていました。それで3歳の時から児童合唱団に入り、高校の部までコーラスに所属していたのです。幼稚園の頃は、お稽古の帰りに大きなクーラーボックスから好きなアイスを選んでいいと言われて(笑)、それが楽しみでした。
今はご自身が双子のお母様でもありますね。
何よりもかわいくて尊い存在で、そういう気持ちを持って仕事も深めていきたいと気づかされることも多いです。一瞬一瞬をおざなりにしないで、愛情を持って、今すべきことを一生懸命やっていくことですね。音楽作品は、絵や彫刻と違って目に見えないので、空間を創造する瞬間芸術です。だからこそ、自分の信じる心や伝えたいという思いが軸になり、人にも届くものになるに違いないと思います。
[聞き手/文 田中玲子]