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トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
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アーティスト・インタビュー

© Michiharu Okubo

エルデーディ弦楽四重奏団

クァルテット・ウィークエンド2012-2013
~ブリテン、生誕100年を記念して~

エルデーディ弦楽四重奏団が、20世紀イギリスの大作曲家ブリテンの生誕100年を記念して、弦楽四重奏曲第1番から第3番を演奏します。エルデーディ弦楽四重奏団を代表してヴァイオリンの蒲生克郷さん、花崎淳生さんにお話を伺いました。

生で聴かないと分からない、ブリテンの弦楽四重奏曲

エルデーディ弦楽四重奏団は、2012年2月に、第一生命ホールでブリテンの弦楽四重奏曲第3番を演奏されました。今回は番号のついている第1番から第3番すべてに取り組まれます。

おそらく日本ではブリテンの弦楽四重奏曲をまとめて聴く機会はないと思います。1つの団体がまとめて3曲演奏するという企画は、ブリテンの本国イギリスでも珍しいでしょう。

とても貴重な機会ですね。

それぞれの曲が個性的で、まとめて取り上げる価値があります。実は、ブリテンは、第1番より前に、「小弦楽四重奏曲(クァルテッティーノ)」や「弦楽四重奏曲」など、若い頃の習作も含めて、かなりの数の弦楽四重奏のための作品を書いているのですが、結果的に、出版された第1番、第2番、第3番は、やはりブリテンの中でも傑作です。

昨年聴かせていただいた第3番はすばらしかったです。特に第5楽章の終曲では、滞在したというヴェニスの鐘の音に由来するという、チェロが演奏するバスの上に、とても美しいメロディーが奏でられる。まさにブリテンの「白鳥の歌」という感じがしました。

あの良さは、生で聴かないとなかなか分からないかもしれませんね。自分たちも実際に弾いてみないと分からないところがありましたし。あの時も、来てくれたお客様で、「初めて聴きましたが、よかった」「強烈でした」というような感想を言ってくださった人が結構いらっしゃいました。それだけのインパクトを持った音楽です。今回も、諧謔的で、力強く、深遠なブリテンの世界を楽しんでいただきたいですね。

第1番、第2番についても特徴を教えていただけますか。

1941年に書かれた第1番と1945年の第2番は、ブリテンが年齢にして30代、一番、創作意欲が旺盛だったころの作品です。第1番は、第二次世界大戦中、反戦家だったブリテンが兵役を逃れてアメリカに渡っていた間に作曲され、アメリカで初演されました。性格的には軽妙なタッチで、ジョークがたくさんあります。弾いていると、コープランド(1900-1990、20世紀アメリカを代表する作曲家のひとり)やアイヴス(1874-1954、アメリカの現代音楽の基礎を築いたといわれる作曲家)などを連想することもあり、当時のアメリカ音楽からも影響を受けているという感じがします。
第2番は、第1番を書いてから4年しかたっていないのに、様々な影響が消化されて、音の使い方、和声、曲の運びなど、そのどれもがブリテンの音楽になり切っています。パーセルの没後250年を記念して依頼されて書かれたもので、最終楽章は、チャコニー(Chacony)、つまりシャコンヌの形式で書かれているのですが、音楽はブリテンそのものです。ブリテンはこうしたことも得意ですね。

第1番、第3番、休憩をはさんで、第2番という順番で演奏します。

亡くなる1975年に書かれた第3番は、非常にプライベートな音楽で、最終的にブリテンが行き着いたところが見られる傑作です。ただ、晩年にアマデウス弦楽四重奏団はじめ色々な人から作曲に対しての強力なプッシュがあって実現したもので、それがなければ生まれていなかったかもしれません。ブリテンが、若いころからあれだけ弦楽四重奏を書いていたのに、第2番の後はまったく書いていないところを見ると、彼としては、弦楽四重奏は第2番で完成の域を見ていたのではないでしょうか。第2番は、構成もしっかりしていて、聴き応えがあり、弦楽四重奏曲として充実した作品です。今回はこれをメインに聴いていただこうと思います。

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ブリテンの番号のついた弦楽四重奏曲3曲を、生で一度に楽しんでいただける貴重な機会です。どうぞお聴き逃しなく。

[聞き手/文 田中玲子]