毎年3月に行っている「育児支援コンサート」の第2部「音楽と絵本」では、舞台上のスクリーンに映した絵本とともに音楽を楽しんでいただいています。毎年新しい絵本を選んで上演していますが、一度限りの上演ではもったいない!ということで、10周年にあたる昨年から、1作ずつ過去の作品を再演することにしました。それが「音楽と絵本」 アンコール!です。
今年再演するのは、『ヘチとかいぶつ』。音楽は、日本音楽集団による日本の伝統的な楽器のアンサンブルです。
韓国の物語『ヘチとかいぶつ』
物語の主人公は、昔から韓国に伝わる想像上の動物ヘチ。天に住み、正義を守る太陽の神です。ある時、暗い地の底に住むおそろしい怪物4兄弟ムンチギ大王、プンギ大王、トンチギ大王、パクチギ大王が、ヘチの寝ている間に太陽をぬすみだしてしまいます。さあ世界はどうなってしまうのでしょう...?
日本の伝統楽器の響きとともに
まずは今回の聴きどころを、尺八奏者の元永拓さんから。
「今回演奏される日本の楽器は、笛、尺八、三味線、琵琶、琴、打楽器。最近では小学校や中学校でも日本古来の伝統楽器に触れる機会が増えています。ただこれらの楽器は、いっしょに演奏することは歴史上なかったため、一度にまとめて聴いたり見たりできるのは、実はめずらしいこと。日本音楽集団は、ジャンルや流派を超えて各楽器の一流の奏者が集まり、現代に生まれる新たな音楽を創造している、いわば日本の楽器のオーケストラです。
第1部では、そんな日本の伝統楽器による音楽を、それぞれの楽器や古典の名曲の紹介も交えながら楽しんでいただきます。ぜひこうした日本の伝統音楽に、感受性豊かな幼いころから親しめたらいいですね。他にも民謡から、すべての楽器による迫力の合奏まで、たっぷりとおおくりします」
音楽が「絵」と「物語」を盛り上げる
さて、第2部の『ヘチとかいぶつ』で演奏される音楽は、物語の舞台と同じく韓国の朴範薫が作曲した「日本楽器によるシナウイ」からの抜粋です。
「韓国の楽器も日本の楽器とルーツが同じで似ているところがあり、音楽もなじみやすいです。絵本を映しながらの演奏では、奏でる音楽が『言葉』になったり『絵』になったり、時には『背景』になったりして『絵』と『物語』を盛り上げます。ぜひご期待ください」(元永)
また語りは、初演でもすばらしい迫力で子供たちを物語に引き込んだ佐々木梅治さん。「チャングムの誓い」や「イ・サン」などの韓国ドラマの他「パイレーツ・オブ・カリビアン」でも吹き替えで活躍している多彩な声でお届けします。
『ヘチとかいぶつ』は、実は日本音楽集団の定期演奏会でも再演されており、今回が3回目の上演となります。再演を重ねてパワーアップした『ヘチとかいぶつ』、日本の伝統楽器の響きとともに、どうぞお楽しみください。
[聞き手/文 田中玲子]