トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
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アーティスト・インタビュー

ジャック・ズーン

音楽のある週末 第9回
ジャック・ズーン&今井信子&吉野直子
フルート&ヴィオラ&ハープ・トリオ

「音楽のある週末 第9回 ジャック・ズーン&今井信子&吉野直子 フルート&ヴィオラ&ハープ・トリオ」に出演するジャック・ズーン。その人柄と魅力を山野楽器本店管楽器フロア・細村俊夫氏にご紹介いただきました。

とにかくジャックは型にはまらない。その音楽の楽しさも計り知れない。

90年代後半、ベルリンフィルで活躍するエマニュエル・パユの人気が急上昇。なにしろすごい腕前の持ち主でなおかつ超美男子!「新しいフルート界のカリスマ」に皆が大騒ぎとなったのだ。

実は同じ頃、その実力でフルーティストやクラシック愛好家をうならせていたフルート吹きがもう一人いたのである。しかしその笛吹きはなにやらものすごい変わり者だという噂で(あくまで噂である)最新の金属のフルートは吹かず、わざわざ100年近くも前に作られた木のフルートを吹くとのこと。しかも写真を見るとターバンのような帽子に、派手なベスト。失礼な話だがその姿は「ヒッピー」のようにも見えると言われても仕方がないだろう。でもどうか誤解しないでほしい。金のフルートが似合う二枚目のパユとはあまりにも対照的なのだが、このフルーティストがめちゃくちゃ格好良かったのだ。その男こそジャック・ゾーン(ズーン)である。

それ以前、コンセルトヘボウ管弦楽団に在籍していたジャックは名手として知る人ぞ知る存在であった。木管フルートを吹くフルーティストというだけでも珍しかったあの頃だがそれだけでは終わらない。ジャックは「自分のフルートの吹き込む部分を自分で削る」という特異なフルーティストとしても知られていたのだ。わかりにくいかも知れないが、この行為は一歩間違えるとフルートが使い物にならなくなるほど恐ろしいことで、フルートを吹く人間から見たら間違いなく「奇行」なのだ。もうわかっていただけただろうか?何故彼が変わり者だと噂されたかが(あくまで噂である!)。

人は見かけによるのであろうか。とにかくジャックは型にはまらない。その音楽の楽しさも計り知れない。来日時にあるパーティに参加した彼は、「俺に吹かせろ!」とばかりに出演者を押しのけステージを占拠。即興でノリノリのジャズをこれでもかとばかりに披露し、パーティ会場を喝采の渦に巻き込んだと記憶している。

小澤征爾氏もジャックをとても気にいっていたらしく、猛烈なオファーでゾーンをボストン交響楽団に招き、ジャックは長らく空席だったボストン交響楽団の首席奏者を務めた。日本でもCD数枚が発売されるフィーバーとなり、パユに勝るとも劣らぬ注目を浴びたのだ。

現在、ジュネーブ音楽院で教鞭をとる正統派フルーティストとしての側面もジャックの素顔である。どんなレッスンをしているのか興味深い。いまや世界中のフルーティストが彼の弟子になりたがっているのだ。

ジャックを見たいなら、12月11日に第一生命ホールで行われる「ジャック・ズーン&今井信子&吉野直子」によるトリオは外せない。木のフルートを吹く、めちゃくちゃ格好いい男と美女たちによる室内楽が堪能できるはずだ。

[文 山野楽器本店管楽器フロア・細村俊夫]

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2000年ごろ、ジャック・ズーン氏がヘインズ社に設計上の助言をして制作された現代の木管フルート。
氏はヘインズを使って録音したこともありますが、通常使用している木管はもっと古いものです。