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トリトン・アーツ・ネットワーク

第一生命ホールを拠点として、音楽活動を通じて地域社会に貢献するNPO法人です。
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レポート

基本情報

日時 2023年9月19日(火)13:15~14:00
出演 出演者 とことんトン!(打楽器アンサンブル)[齋藤綾乃/篠崎陽子/新野将之]
概要 実施会場:中央区特別養護老人ホーム マイホーム新川 食堂
対象者・人数:通所者30名程度

助成:文化庁文化芸術振興費補助金 劇場・音楽堂等活性化・ネットワーク強化事業(地域の中核劇場・音楽堂等活性化)独立行政法人日本芸術文化振興会

レポート

【プログラム】

♪モーツァルト(ファジル・サイ編):トルコ行進曲ジャズ
♪リムスキー=コルサコフ:熊蜂の飛行
♪ドヴォルザーク:交響曲第9番 「新世界」より 第2楽章「家路」
♪新野将之:MERRY BUNCH(ゆかいな3人組)より第3楽章 Rumba & Samba
♪ネッケ:クシコス・ポスト
♪H.C.ワーク(新野将之編):大きな古時計の主題による変奏曲
♪服部良一:東京ブギウギ
♪作曲者不詳:アメイジング・グレイス
♪M.シュミット:ガーナイア
アンコール/♪オッフェンバック:天国と地獄)


【レポート】

今年は、デイサービス利用者の方々を対象に、約45分間のコンサートを開きました。
大きな窓の外に隅田川を臨む素敵な食堂が、今日の会場。テーブルと椅子を動かして、レースのカーテンを引いたら、ほのかに太陽の光が差し込む、おしゃれなステージに早変わりです。
皆さんは、楽しみなようなどこか実感がわかないような…という様子。おひとりずつ、プログラムをお渡ししていて、そのように感じました。>

最初の曲は《トルコ行進曲ジャズ》。マリンバ1台を2人で演奏しました。
今日の出演者「とことんトン」メンバーの自己紹介をはさんで、今日の演奏会の主役・マリンバの紹介。マリンバは「マ(たくさんの)」「リンバ(木)」が語源だそうです。「自宅から持ってきました」の言葉に、「へえ~」と驚きの声と拍手が起こりました。
こんな大きなのを自宅から持って来たの? と皆さん驚かれたようです(マリンバは、音板(鍵盤)や共鳴管などを外していくつかに分解し、丸めたり折りたたんだりして運ぶことができます)。★IMG_5784小.JPG

続く《熊蜂の飛行》では、低音の位置にいた新野さんが、途中で「くるっ」と身をひるがえして高音へ、そしてまた低音へ…と移動するパフォーマンスもあり、拍手する方もいらっしゃいました。
素早いマレットさばきと楽しい演出に、皆さんは興味を引かれているようでした。

ところで、マリンバの演奏に使う「マレット」の硬さによって、音色はどのように変わるのでしょうか。今回は《きょうの料理のテーマ》冒頭部分を、硬いマレットと柔らかいマレットとを使ってそれぞれ演奏しました。
客席からは笑い声も上がりました。おそらく初めは緊張があったと思いますが、目の前の楽器の音色とよく知っている曲とが結びついて、気持ちがほぐれ始めたのだと思います。
篠崎さんいわく、さまざまなマレットを合わせて約300本お持ちとのこと。ものすごい数ですね。会場からも「おお~」と驚きの声があがりました。

ここから他の楽器が次々と、入れ替わり立ち代わり登場します。最初は、トライアングル、カスタネット、タンバリンの紹介。学校などにある楽器とは、見た目も音色も違います。
たたいて…ふって…こすって…音が鳴るたびに「じょうずだね~」「すごいね~」「へえ~」などの声が、あちこちから聴こえてきました。お子さんやお孫さんがいらっしゃったり、またはご自身が一度は学校などで触れていて、懐かしさも感じられていたのではないかと思います。
そして、小太鼓(スネア)が紹介されたのに続いて、新野さんによる新作《Merry Bunch(ゆかいな3人組)》。1台のスネアを3人で囲み、代わる代わるいくつものスティック、ブラシを使って演奏。たった1台の楽器から、多彩な音色が紡ぎ出されました。

★IMG_5758小.JPG

その次は「ムチ」の登場です。「大きな音がするので、心して聴いてください」の言葉に続き、まずは手拍子ほどの加減で一発鳴らします。ここまでは、どなたも驚きませんが…もう一度、今度は強めに二発目を鳴らしてみると、まるで風船が破裂したような大きな音!これには、皆さんとてもビックリしていました。
続いて、運動会などでお馴染みの《クシコス・ポスト》。先ほど登場した「ムチ」を叩く動きに合わせて、客席からも手拍子で参加していただきました。
ムチは動きがよく見えるので、タイミングがとても分かりやすかったと思います。皆さんゲームのような感覚で、手をたたくタイミングを注視しながら楽しく参加してくださっていたようです。

ここで世界のリズムの紹介。「カホン」という箱のような形の楽器で、ロック(アメリカ)とサンバ(南米ブラジル)のリズムを演奏した後、マリンバも加わって《大きな古時計の主題による変奏曲》へ。この変奏曲は、サンバ→盆踊り(日本)→ロック→トルコ民族音楽→タンゴ(アルゼンチン)と、リズムが変わっていきます。盆踊りの時は、本物の和太鼓も登場しました。
懐かしさを感じたのか、曲に合わせて歌う方もいらっしゃいました。

またマリンバに戻って《東京ブギウギ》。1台のマリンバを3人で演奏しました。この秋に始まる朝ドラ『ブギウギ』主人公のモデル、笠置シヅ子さんの曲。「ブギウギ」は、アメリカのジャズのリズムのひとつだそうです。

次はまた、雰囲気がガラリと変わります。マリンバのトレモロに乗せて、齋藤さんが手にした「鍵盤ハーモニカ」から、《アメイジング・グレイス》の旋律が、静かに会場に響きました。「孫が(鍵盤ハーモニカを)やっているんだよ」と、嬉しそうに話してくださる方もいらっしゃいました。

しっとりしたところで、アフリカの太鼓「ジャンベ」の紹介。まず「ドーーーン!」と一発鳴らすと、その音の大きさと重厚さに、客席からは「おぉ~!」とどよめきが起こりました。
ジャンベの音は、身体にとても響いてくるので、それを感じて驚かれたのだと思います。
ここでクイズ。ジャンベには、とある動物の「皮」がはられています。それは何の皮? ー ①牛 ②山羊 ③兎
皆さんに、手を挙げて答えていただきました。クイズの答えは②の「山羊」でした。
硬くて頑丈な牛の皮は、和太鼓に使われています。和太鼓はバチで叩くので良いのですが、ジャンベは手で直接叩くので、硬い皮では手が痛くなってしまいます。そのため牛の皮よりも薄い、山羊の皮を使うそうです。
(会場の皆さんの答えは、①数人、②15人ほど、③ゼロ でした)

そして最後の曲《ガーナイア》。ジャンベで奏でられるアフリカ・ガーナのリズムと、マリンバのメロディーが重なって、情熱的かつ幻想的な音楽に包まれました。

コンサートが終了すると、すぐさま「アンコール!」の声と手拍子が起こり、もう1曲マリンバで《天国と地獄》を演奏。ここで再び「ムチ」が登場し、皆さんに手拍子していただきました。最後は、盛大な拍手に包まれて終わりました。 もうすっかり皆さんの緊張はほぐれ、めいっぱい演奏会を楽しんでくださっていたようでした。

★IMG_5789小.JPG

プログラムの「緩」と「急」のバランスが絶妙で、45分間座っていても飽きないような構成だったと思います。時間をかけてゆっくりと、お客様の心をつかんだ演奏会でした。
客席からの反応は、手拍子をしたり、一緒に歌ったり、じっと静かに聴いていたりとさまざま。思い思いにコンサートを楽しんでいる様子が伺えました。
2020年以降、感染症対策のため福祉施設へのアウトリーチはなかなか叶わず、およそ3年ぶりの開催でした。 終演後の皆さんは、マスクをしていてもわかる、とびきりの笑顔でした。再び開催できて本当によかった!と思いました。

(トリトンアーツサポーター 南 理絵 観察レポートより)

プロフィール

とことんトン!(打楽器アンサンブル)  
齋藤綾乃(打楽器・パーカッション) Saito Ayano
篠崎陽子(打楽器・パーカッション) Shinozaki Yoko
新野将之(打楽器・パーカッション) Nino Masayuki

2015 年、桐朋学園大学出身の齋藤綾乃と篠崎陽子、国立音楽大学出身の新野将之により結成。「打楽器を通して人々の心を豊かに育む」をモットーに、これまで関東圏のホールや学校、公民館にて数多くの子供向け、ファミリーコンサートを企画・出演。グループ名には、打楽器と「とことん」向き合い「とことん」叩き続けるトリオでありたい、という意味が込められている。2020年、公益財団法人川越市施設管理公社主催「川越市人材発掘公開オーディション」合格。登録アーティストとして川越市と連携を図り、小学校のアウトリーチコンサートに取り組むなど、音楽を通した地域活性化に力を入れている。
左より篠崎陽子、齋藤綾乃、新野将之