今回の日本橋幼稚園でのアウトリーチは、「弦楽四重奏のコンサート」というプログラムで開催されました。年少さん、次に年中・年長さんの順番で、保護者の方も見守りながら、それぞれ20分、30分の演奏会でした。
年少さんの公演では、まず、演奏家の方が入場されておひとりずつ挨拶すると、子どもたちは元気よく「よろしくお願いします」とお返事していました。最初の曲であるグラズノフの弦楽四重奏曲第3番「スラヴ」よりが演奏され、カルテットがどのようなものであるかを一度聴いてみた後は、本日登場している楽器を紹介するコーナーです。弦楽器の形や音、それぞれの違いを近くで見た子どもたちは「かっこいい」や、チェロに対しては「大きくて恐竜みたい」と思わず口に出していました。
4つの楽器が一緒になるとどのような音楽になるか、改めて聴くために、グリーグの弦楽四重奏曲第1番よりを聴きます。悲しい曲ですが、全員でフォルテの和音を弾くところでは大きな笑いが起きました。また、モーツァルトの弦楽四重奏曲K387よりでも、動きの速いパッセージに対して、同じように「おもしろい」と皆で話していました。
最後に、「聴くだけでなく一緒に音楽しよう」ということで、園歌を弦楽伴奏に合わせて歌いました。体で一生懸命リズムを取って歌っている姿が、音楽の流れに乗っているようで印象的でした。アンコールには皆がよく知っている曲を演奏しましたが、自分たちから一緒になって歌っていました。
年中・年長さん公演も、プログラムは同じでしたが、反応はやはり違うものでした。ヴァイオリンが木でできていると説明されると、「太鼓にもできそう」と考えたり、チェロについては「こんなに大きいから音も大きそう」と予想したりと、感じたことを積極的に発言してくれました。
グリーグの曲に対しては、休符の部分で音楽が止まると、曲が終わったと思って拍手をし、しかし実はまだ曲が続いているということに笑っていました。おそらく、誰も弾いていないから終わったと判断したのだと感じましたが、年少さんとは違う捉え方で興味深かったです。さらに驚いたのは、モーツァルトを聴いているときに、「(楽器を弾きはじめる)順番が違う」という鋭い発見をしていたことです。それまでの曲できちんと観察していたからわかったのだと思いますが、目の前という位置で聴くことによって、子どもたちは目でも音楽を楽しんでいたようです。
こちらの組では、一緒に歌うコーナーで、園歌の前に「ゆき」を合唱しました。ピアノ伴奏と比べて複雑な、演奏者のひとりが編曲した弦楽伴奏ですが、皆元気に歌っていました。また、アンコールが終わった後も、興奮が冷めやらないようで再びアンコールを求めるなど、カルテットの美しさや楽しさをすっかり覚えたようすでした。
今回のアウトリーチでは、必ずしも耳馴染みのある曲が演奏されたわけではありませんが、そのなかでも年少さんが音そのものに対して関心を示していた一方で、年中・年長さんは、楽器の弾き方など形式的なものに対しても興味を持っていたことが印象に残りました。また、演奏家の方たちが「子どもたちが聴きながらリアルタイムで自由な反応を見せてくれるので、自分たちを客観視できて勉強になる」とおっしゃっていたように、アウトリーチが弾く側にとっても貴重な機会だということが改めてわかるコンサートでした。(インターン 笠間)